受け取った人たちの中で生き続けていく曲
——さて、6曲目は「You and I」ですが、なぜこの楽曲を最後に持ってこようと思ったのでしょうか。
締めの曲はけっこう悩みました。バンドでもやってましたけど、基本ひとりで歌ってきたということもあり、サウンド的にもバンドサウンドではなく最後はひとりで歌ったもので締めた方が良いんじゃないかなと思いました。
今までは書いている途中で「何か嘘っぽいな」と思ってしまうことがあって、あまりラブソングは書いてこなかったのですが、この曲に関しては、素直に「そうだな」と思えたので、本当に聴いてほしい曲が出来ました。
自分がシャイということもあるのか、サウンド的にも色々入れたいと思っていたのですが、深沼さんが「この曲はギター1本で行ったほうが良い」と言って下さって。それを聞いてさらけ出した方がより伝わるなと僕も思えて。
——タイトルの“You”は誰か特定の人に向けて?
そうですね。誰かは言えませんけど、そういう人がいました。
——色々想像が膨らみますが、ライブでは他にも新曲を演奏されている中で、今回この6曲にした意図はあったのでしょうか。
5曲か6曲かで迷いましたけど、僕の中で飽きずに何回も聴きたくなる曲数ってこのくらいなんです。今作からまたスタートさせて行きたいという思いもあって、それに見合うような候補曲を絞っていったらこの6曲になりました。
——第2章の幕開けを感じさせる曲達が揃ったわけですね。さて、今年は『戸渡陽太10番勝負』の10番目もおこなう予定はあるのでしょうか。
今年か、もしくは来年になるかはまだ決まってないんですけど、今面白いことを考えている最中です。ずっと一緒にやりたかった人がいるので、その人と一緒に出来たら良いなと練っている段階です。まだどうなるかはわからないんですけど。
——どんなライブになるのか楽しみですね。現在9番目まできたわけですが、ここまでで得たものは?
名立たる人たちと共演させていただいて、勝負と名が付いているだけあって負けまくって(笑)。でも、この経験が血肉になっています。僕がそういう人たちをも引っ張って行かなければならないと思うけど、実際は引っ張れなくて最終的には背中を押されていたり…。それも悔しかったりしました。
でも、この音を出したいと思ったら出せてしまうような方たちと、一緒に出来たというのは本当に良かったです。「だから気持ちが良い」というのも感覚でわかるようになってきました。『戸渡陽太10番勝負』には深沼さんにも出演していただいて、それが今作のレコーディングにもタイム感などシビアなところで活きていますから。
——最後に、現在の目指すところはどこでしょうか。
肉体はいずれ朽ち果てていきますが、音は目に見えないし、体が滅びても生き続けていく、ザ・ビートルズや僕の好きなジェフ・バックリィ(米シンガーソングライター)のように時代が変わっても、受け取った人たちのなかで生き続けていく曲を作り続けて行きたいです。自分自身が時代に求められたいとも思うし、時代に求められる音も作って行きたい。その結果として、例えば日本武道館がついてくるのでは、と今は思っています。
(おわり)