F.D.Q.の信念、クラシックからロック 4つの美声でどう届けたか
INTERVIEW

F.D.Q.の信念、クラシックからロック 4つの美声でどう届けたか


記者:長澤智典

撮影:

掲載:18年04月03日

読了時間:約8分

 韓国の実力派4人組ヴォーカル・ユニットのフォルテ・ディ・クアトロ(F.D.Q.)が4月4日に、2ndアルバム『アヴェ・マリア〜CLASSICA』を発売する。韓国・JTBCのオーディション番組『ファントム・シンガー』シーズン1で勝ち残ったコ・フンジョン(テノール)、キム・ヒョンス(テノール)、イ・ビョリ(テノール)、TJソン(バス)の4人が、韓国初のクロスオーバー・シンガー・グループを結成するために集まり誕生。昨年11月に日本でも発売されたデビューアルバム『フォルテ・ディ・クアトロ』は、韓国インターパーク「2017年 最高のCD」ランキング総合において、EXOやBTSらに続いて4位、クラシック部門では1位を獲得。クラシック/声楽という枠を超越し、美しいハーモニーワークやソロヴォイスが巧みに絡み合う4人の歌声は、聴く者の琴線に触れる。

 今作では、クラシックの名曲からクイーンやマイケル・ジャクソンの曲まで、幅広いジャンルをカバー。メンバーが今作について「音楽的に挑戦したい想いや姿勢を、より具体的な形へ落とし込んだ」と語るように、「良き日(ラフマニノフ:交響曲 第2番〜第3楽章)」に歌詞をつけるなど、カバーアルバムながらも彼らの独自性を強く打ち出した作品となっている。今作の制作の意図や、レコーディング時の様子、彼らにとっての音楽へのこだわりなどを聞いた。【取材=長澤智典/撮影=片山 拓】

歌詞のない楽曲に歌詞をつける

――アルバム『アヴェ・マリア〜CLASSICA』に収録したどの楽曲も、4人の歌声に心抱かれてるような暖かい気持ちにさせてくれます。驚きなのが、元曲をF.D.Q.のオリジナル曲と思わせるほど独創的なアレンジで仕上げていることです。その秘訣や選曲の基準から、まずは教えてください。

インタビューに応じるフォルテ・ディ・クアトロ

コ・フンジョン アルバムの音楽プロデュースを担当したのが、作曲家のイ・ジスさんです。みなさんもご存じでしょうか、映画『オールド・ボーイ』や『シルミド』などの楽曲も担当した方なんですけど。このアルバムは、イ・ジスさんと一緒に制作を始めました。

 収録する楽曲を選ぶ際にも、イ・ジスさんが「こういう楽曲はどうだろうか」といろいろ提案してくださいましたし、実際に収録した楽曲のアレンジ面においても、僕たち4人の歌声の個性に合わせパート分けやハーモニーも考えた上で手がけてくださいました。

 ちなみに、このアルバムは韓国国内のほか、チェコのプラハにも赴きオーケストラと一緒にレコーディングをおこなったんです。

コ・フンジョン 具体的な制作に関しては、最初にイ・ジスさんに「有名な交響曲をF.D.Q.流のスタイルにカバーしたい」と提案をしました。イ・ジスさんは僕ら4人の歌声の個性もわかっていますから、僕らの歌声が似合う交響曲はどれだろうと考えてくれて、お互いにアルバムに収録したい楽曲を提案しました。

 互いに提出した楽曲たちの中から、「この曲なら僕たちの味に変えられる」「この曲は、僕たちの色に染めるにはちょっと難しい」などの話し合いを繰り返して、今回の収録曲を決めました。

TJソン 僕らが『ファントム・シンガー』のコンテスト中に課題曲として歌った「アヴェ・マリア(カッチーニ)」や「蜃気楼(マーラー:交響曲 第5番〜第4楽章〈アダージェット〉)」、「ノッテ・ステラータ(星降る夜)」は、今回のアルバムに収録したいと思っていました。

 当初、それらの楽曲は1stアルバム『フォルテ・ディ・クアトロ』の収録曲候補としても上がっていたのですが、1stアルバム全体の色を考えたときに、クラシック色が色濃く出ていたことから、今回へまわした経緯もありました。

コ・フンジョン 今回のアルバムは、僕たちにとっての「試み」をおこなった作品です。それこそ「良き日(ラフマニノフ:交響曲 第2番〜第3楽章)」に歌詞をつけたりなど、本来、歌のなかった楽曲に自分たちでオリジナルの歌詞を乗せる試みもおこなっています。そうしたのも、僕たちならその手法を取っても、原曲の良さを活かした上で独創的な色に染めていけると判断して、その自信もあったからでした。

――「良き日」は特にそうですね。言われたように歌声を入れたことでオリジナリティが出て、アレンジの奥行も深みが増し、より心に寄り添う楽曲に昇華したなと感じました。

コ・フンジョン オリジナリティを感じたという言葉はとても嬉しいことであり、そこがとても重要なことですからね。というのも、僕らが出演してきたオーディション番組では、既存曲のままを歌うことが前提でした。

 裏話をするなら、今回の制作期間の中、大きく時間の余裕を持つことが難しいと判断し、1stアルバムでおこなったような独創的なオリジナル曲を作ることは次回へまわすことにしました。既存の楽曲たちをいかに“F.D.Q.の色”に染め上げていくかということに心血を注ぐことに決めました。

 だからこそ、その狙いを極力まで極めようというスタイルのもと、どの楽曲の歌声や演奏もアレンジしていきました。その手法の一つが、歌詞のない楽曲に歌詞をつけるという、自分たちらしいオリジナリティを作り上げる形にも繋がったことなんです。

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