愛はそこに満たされてる、ACIDMAN 主催フェスを通し見えた真理
INTERVIEW

愛はそこに満たされてる、ACIDMAN 主催フェスを通し見えた真理


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年03月30日

読了時間:約15分

 結成21年目に突入したACIDMANが3月28日に、LIVE Blu-ray&DVD『ACIDMAN 20th ANNIVERSARY FILM “SAI”』をリリース。今作は、昨年11月23日に開催された結成20周年イヤーの集大成で、彼らの故郷でもある埼玉・さいたまスーパーアリーナに2万人を超える観客を収容し、長い間対バンなどで刺激し合ってきた盟友のストレイテナーなど、彼らの20周年を祝う9バンドがパフォーマンスした主催フェスの模様をドキュメンタリーで追ったもの。ゲスト出演したバンド達の熱いMCも収録し、ACIDMANへの“愛”を感じられる作品となった。インタビューではフェスを振り返ってもらうとともに、出演バンドへの印象や21年目に突入したACIDMANの未来について、大木伸夫(Vo&Gt)に話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

シーンにいたんだと気付くことができた

――去年のライブのもようを収録したBlu-ray& DVD『ACIDMAN 20th ANNIVERSARY FILM “SAI』がリリースされますが、今改めてこのときのことを振り返ってどうですか?

インタビューに応じる大木伸夫

 余韻がずっと残っているというか、本当に貴重な一日だったし、愛に溢れた一日で。まわりの人も言ってくれたんですけど、奇跡のような一日だったなと思っています。ああいう体験を味あわせてもらえるということは、今後あるのかなというくらい。それくらい感動してしまって。一日の始まりから終わりまでずっと美しい時間が流れていたなという日でした。

――構想3年というのは基本的には長いですよね。

 「いつかやりたいな」くらいから始まって、日々色々ライブをしているとあっという間に3年は経っちゃったので、そんなに長く考えたという気は自分ではあまりないです。具体的に動き出したのは2年くらい前なんですけど、気付けば半年、1カ月後か、という感じでやることが山積みで…。

――本当に楽しそうなお祭り、という感じでしたね。

 正にフェスティバルなので、20周年を祝ってくれたのもほとんど身内のバンド、同世代のバンドで、みんなにとってもこのフェスは特別だと思ってくれていたみたいで。僕達にとっても、もちろんそうだし。僕達の世代のためのフェスティバルになったなと思います。「ACIDMANしかこういうフェスはできないよ」と色んなバンドが言ってくれました。

――この顔ぶれを揃えるとなると、普通のイベンターでは難しいと思います。

 全てのバンドが2つ返事でOKしてくれたというのも嬉しかったし、この作品では楽曲を使うことは権利関係でできないけど、MCを使わせてくれて。それも全バンドがOKを出してくれたので、それもまた嬉しかったですね。

――今作で最も印象に残っていることは?

 全部ですけど、最初の10-FEETが僕達のコスプレをして歌ってくれたところは、このフェスの成功が約束された瞬間だったと思います。あの瞬間は感謝してもしきれないですね。

――出演順を決めるのも難しいですよね?

 難しいですね。すごく悩んで結果的にこれ以上ないという順番が出てきたなというのがありました。でも、ストレイテナーが自分達の直前というのは決めていて。一番長く一緒にやってきたバンドなので、一番近くにいて欲しいというのは決めていたんです。それ以外は本当に悩んで…。でもギリギリまで悩んだというか、朧げなものは最初から見えていて、それを決め込むのに悩んだという感じですね。

――この機会でしかなかなか聞けないので、各々のバンドの印象や魅力などをお聞きしたいなと。まず10-FEETはどのように大木さんには見えているのでしょうか。

 10-FEETをトップバッターにしたのは、あの花火のような華々しさ、明るいとはまた違うんですけど、快活でエネルギッシュなバンドだからです。メンバーは全員最高の人格者なので、その彼らに頭を飾ってもらいたいと思っていました。ストレイテナーの後に10-FEETの出順が決まりました。

――10-FEETも早い段階で順番が決まっていたわけですね。

 あと、京都から前乗りしてもらったら、朝そんなにしんどくないかなと思ったりして。東京のバンドを頭にしてしまうと、自宅から来るには埼玉は遠いけど前乗りするほどではないし…とか細かいことも考えて(笑)。10-FEETは本当に大好きなバンドです。仲間であるし、貴重な時代を一緒に歩んで来たので。

 続いてのMAN WITH A MISSIONは、ああいう見た目なので色モノに見られがちなんですけど、メチャクチャ音楽のバックボーンが強くて太いし、深いんです。それでACIDMANのことをずっと尊敬してくれていて、世界レベルの音楽のクオリティを持っているバンドだなと思うので、絶対出てもらいたいと思っていました。

――初めてMAN WITH A MISSIONを見たとき、どう思いましたか?

 楽曲を聴いてぶっ飛びましたね。デビュー前から知っていて、知識はあったけど曲は知らなかったんです。どこかの有名なミュージシャンが集まってやっていると思っていて、だから顔を出せないのかなと思っていましたから(笑)。

――私もそれは思いました(笑)。ではTHE BACK HORNは?

 ほぼ同期で、ストレイテナーと同じくずっと仲良く一緒にいるバンドですね。ACIDMANと扱っているテーマは一緒なんだけど、表現方法が全然違うと思います。THE BACK HORNは死のグロテスクな世界観をあえてちゃんと表現して、僕らは死の美しさを表現する方だと思っているので。表現の仕方を逆にして出しているというか。リンクをするところはあるけれど、また全然違う生き様をしているバンドだと思います。同じテーマだったとしても違う側面を表現していて。

――死と一口で言ってもいろいろありますから、同じテーマでも対照的なバンドですよね。続いてはASIAN KUNG-FU GENERATIONです。

 僕達に初めて日本武道館の景色を味あわせてくれたバンドです。彼らが主催する『NANO-MUGEN FES.』というフェスを武道館でやったときに僕らが出させてもらって。僕らのちょっと後にデビューした中では、ギター、ロックバンドの可能性を広げたバンドだと思っています。ゴッチ(後藤正文)のただのミュージシャンとしてだけではない活動の仕方を凄く尊敬しています。僕には全く真似できないやり方をやって、ジャーナリストのような行動もしているし、ご意見番みたいにもなってるし。音楽のシーンのことをちゃんと背負っている人だと思います。

――シーンのことについては、考えている人とあまり考えない人がいますよね。

 そうですね。僕はあまり考えていないし、シーンをつくるというのも、あまり好きじゃない感じです。憧れはあるんですけど、シーンに括られてしまうとそれが流行になってしまう。「流行った」ということは「廃れる」ということだと思っていて、なるべくシーンというものに属したくないと思っていたんです。

 でも今回のフェスに出てくれたバンドは、そういうシーンにいたんだなと気付くことができました。誰もがシーンをつくろうと思っていなかったバンドが、俯瞰だと、そういうシーンで2000年代はずっと音楽が盛り上がっていたということを知ることができて、自分達もその一つの場所を担えていたんだなと思います。それが結果的にシーンになっているのはとても美しい“カタチ”だと思います。

――自然体ですよね。

 狙ってないなと。狙っていると稚拙でチープになっちゃうんですよね。シーンというものがあったんだなということが今回のフェスで証明されましたね。

――the HIATUSについてはいかがでしょう?

 細美(武士)君との関係はインディーズの頃、ELLEGARDEN時代からずっと続いています。僕が一番憧れているボーカリストです。「世界で一番、細美君の歌が好きって」ずっと言っているんですけど(笑)。細美君の歌を聴くと何とも言えない気持ちになるというか…。

――前世で何かあったんでしょうかね(笑)。

 そうなんですかね(笑)。確かに何かあるのかな…。僕にとっては非常に魅力的で芸術的な声をしていて。形を変えてthe HIATUSになってもMONOEYESになっても、僕はあの人の声がある限りファンであり続けるというか。だから絶対呼びたいと思っていました。

――細美さんはライブのMCで凄いことを言いますよね。

 そう。毎回悪態をついているので(笑)。裏でもああいう感じで、誰かに必ずケンカを売っているという人なので(笑)。

――ロックですね! では、続いてのBRAHMANは唯一の先輩からの出演で。

 この世代で固めたかったんだけど、BRAHMANというバンド、TOSHI-LOWという人間にかなり影響を受けています。音楽性ではなく、生き様というか。上の世代で強い憧れがあるので、先輩枠としてひとつ設けさせて頂きました。

――サッカーでいうオーバーエイジ枠ですね。

 そうそう。彼の懐の広さのおかげで、今は友達として付き合わせてもらっているので、敬語を使ったりという仲ではないんだけど、“締まる感じ”がしますね。BRAHMANという強面がいるだけで、ひとつのフェスにただ者ではない感が出たので。素晴らしい空気を作ってくれたと思います。

――最初に出会ったときのことは覚えていますか。

 覚えています。性格とか何も知らない頃だったので「殴られるのかな」とか色々思ったりしましたけど、「話したい、会いたい」という気持ちが強かったので声を掛けさせてもらって。ずっと気さくに接してもらっています。世間からは“鬼”って言われていて、実際に鬼な部分もしょっちゅう見ていますけど(笑)。基本的には“愛の人”なので、鬼ではないですね。僕らやTHE BACK HORNと一緒で、扱っているテーマが「死」で、そこの部分でリンクすると思います。

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