4人組ロックバンドのLAMP IN TERRENが2月26日に、東京・渋谷Star loungeで定期公演ワンマン『SEARCH #002』をおこなった。今年に入り、毎月ワンマンライブをおこなっていくというもので、先月26日の公演に続いて2回目の開催。この日は前回が“表”というテーマで歴史を辿るような代表曲中心のセットリストでおこなったこともあり、対照的な“裏”という普段ライブでは滅多に披露されないレア曲中心のセットリストで展開。アンコールでは松本大(Vo、Gt)が声帯ポリープの切除手術のため4月21日のツアーファイナルで活動を一時休止することを発表。「この先も歌い続けたい...」という松本に涙するファンの姿も見られるなか、全身全霊のパフォーマンスで魅了した。【取材=村上順一】

やりたいことがあると生きていける

LAMP IN TERREN(撮影=浜野カズシ)

 会場は多くの人たちで賑わっていた。開演時刻になりステージに登場した4人。定位置に着くと川口大喜(Dr)の方へ3人は向き轟音を放つ。『SEARCH #002』は「クライベイベ」で幕はを開けた。静寂を感じさせた松本による歌い出しはゾクっとする感覚。静と動のコントラストが鮮やかに表現された演奏は、その場にいるものを引き摺り込んでいく。そして、松本の乾いたアルペジオから「into the dark」へ。闇に引きずり込まれるような迫真の歌とサウンドに会場も、固唾を飲む瞬間。闇から光へ向かうようなサビでの爆発力に合わせ拳を上げるオーディエンス。

 中原健仁(Ba)のベースでの和音に大屋真太郎(Gt)のブラッシングが絡み合う「Sleep Heroism」。ラストサビに行く直前にいきなりのブレイク。ライブのタイトル「SEARCH」の意味について話し出す松本。「なぜここで?」という疑問に応えるかのように、素直に歌詞を忘れたからだと明かす。忘れた時は「みんなで歌おう」というオーディエンスからの提案に賛成し再び楽曲へ。提案どおりオーディエンスのシンガロングが響き渡る。これがライブの醍醐味とも言える瞬間だった。

 MCでは「前回は“表”で今回は裏ということで、ライブで歌われない曲で構成したレアなセットリストでマニアックです」と話し届けられたのは「reverie」。蜃気楼のようにゆらゆらと揺れるような世界観。まさに夢想を感じさせてくれた。「イツカの日記」はイントロでの松本の叙情的なアルペジオに大屋のギターが絡み合うスローナンバー。優しく歌い上げる松本の歌を中原のベースの低音が包み込む。1月に配信リリースされた「花と詩人」。ギターを置き、ハンドマイクで自身に問いかけるように優しく、時に熱く歌い上げていく松本。日常を切り取ったかのような自然な時間だった。

 「into the dark」を宇都宮で披露した時のエピソード。今回この曲がセットリストに入ったことにメンバーは不安を感じたと話す。その理由は宇都宮でメンバーの演奏がズレたまま途中まで進行したという“トラウマ”があったという。そんな普段ではなかなか聞けない“レア”な話から「とある木洩れ陽より」へと紡がれた。穏やかな日差しによる温もりを感じさせた楽曲に、オーディエンスも体を揺らしバンドの出す心地よいグルーヴに身を委ねていた。続いて「リメンバー」、「オフコース」と情景を色濃く映し出すナンバーを披露。手拍子を誘発させる跳ねたビートは、ほっこりとした安息の時間を会場にもたらした。

 「何度へこんでも自分がやりたいことがあると生きていけると思いました。僕らは不死身です」と歓声が上がるなか「不死身と七不思議」に突入。「みんな飛び跳ねてみませんか?」と自由にステージを舞うようにパフォーマンスする松本。サビではオーディエンスも手を掲げ、体を弾ませる光景が広がった。メンバーも楽しそうにを音を奏でている姿が印象的だった。

 スリリングさを醸し出したジャジーなセクションを挟み、「ゴールド・ルーズ」を披露。場面を一転し疾走感溢れるナンバーでオーディエンスを扇情させる。「様々な選択肢を選んで、ここまで辿り着いた皆さんが正しいんだ!」と、楽曲に込められた意図を投げかけ「multiverse」へ。「でっかい声を聞かせてほしい」とコーラスをレクチャー。一緒に歌う、人間という究極のアナログがもたらすライブならではのエナジーに「めっちゃ最高じゃん!」と笑顔を見せる松本。

 ステージとフロアが一つになった瞬間から「まだまだいけるかな? みんなで扉を開きたい。未来へ共に進んでいこうぜ!」とオーディエンスによる1、2、3、4のカウントから「ワンダーランド」を披露。バンドが放つエネルギーをオーディエンスが弾き返すようなライブハウスならではの熱量で展開。

 ギターを弾きながら松本は話す、「もっと大きな光を放つように、僕らは音楽を届けたい、ライブをしたいと思いました。やりたいようにやった上で皆さんに歌い続けます」と、届けられたのは「L-R」。張り裂けそうな歌声に呼応し自身の矜持を示すかのように、手を高く掲げ続けるオーディエンス、そして、鬼気迫る松本の叫びから「かかってこい渋谷!」と怒涛のバンドサウンドを叩きつける。バンドの本質をさらけ出した演奏は至高の空間を作り出し、本編を終了した。

活動休止を発表

(撮影=浜野カズシ)

 アンコールに応え、歓声に迎えられ再びステージにメンバーが登場。ここで、松本は良くない知らせがあると話し始めた。

 「4月21日のライブをもって活動を休止することになりました。理由は声帯ポリープが出来ていたからです...。昨年から感じていた歪み。今年の1月にようやくその歪みの正体を知りました。本当はこのまま歪みを歪みとして切り離すのではなく、自分の一部としてうまく付き合っていきたくてその方法を探したのですが...。それがうまく出来なくて、手術を受けることを決めました」と吐露。

 さらに「やりたいようにやることと、歌い続ける、今の自分のまま居続けることはどこか違うんだなと思って...。バンドが進化しているのに今離れるのは怖いです。この変わっていくことすら共有していこうと思っていたんですけど、でもそれは誰も望んでいないだろうなと思って...。切除することによってもし今までの声と変わってしまっても、その時に思うことはあるかもしれない。この先も歌い続けたいと思ったから手術を決めました。怖いことだらけだけど、今の自分で残せるものはありったけ残していきたい。出来るだけ多く、今の僕の声や想いを聴きに来てください。自分の思いを余すことなく伝えることと、歌い続けること両方とります」と話し「緑閃光」を届ける。

 そのまさかの告白に涙するオーディエンスの姿も確認できるなか、情感を込めた歌がライブハウスに響き渡る。その振り絞るように発せられる声は、どこか不安や悲しみを感じさせた。「次の曲は自分のために歌います」と未発表曲の「New Clothes」へ。バンドが一丸となり未来への咆哮とも言えるサウンドを放ち、憂いを帯びたバンドの感情が行き場をなくして彷徨っているかのよう。そこにはそのサウンドを目の当たりにし、立ちすくむオーディエンスの姿。

 「俺がこういう状況になっても物語は続いていきます。皆さんの勇気になるくらい俺は歌います!」と力強く宣言し、ライブでの定番ナンバーである「地球儀」をラストに披露。ワンコーラスが終わると今まで堪えていたものが弾けたかのように涙する松本。「皆さんがいないと何も出来ません」と投げかけ、全身全霊の歌と演奏を響かせる4人の姿。魂の叫びにも似た松本の声はオーディエンスの感情を揺さぶり続けながら、ライブの幕は閉じた。

 もしかしたら声が変わってしまう...。不安を受け入れながらも邁進しようと突き進む姿がそこにはあった。未来は誰にもわからない...。我々は松本大という男を信じ、待ち続けることが私たちの最良の選択なのではないだろうか。4月21日まで今のLAMP IN TERRENをこの目と耳に焼き付けたいと思ったステージだった。

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)