ブルーノ・マーズ、グラミー賞スピーチに思い起こされた音楽の力
ブルーノ・マーズ/グラミー賞(Getty Images)
『第60回グラミー賞』が先日米・ニューヨークで開催され、ブルーノ・マーズが「最優秀アルバム賞」など主要3部門を含む最多6部門を受賞した。この授賞式での彼のスピーチに音楽が色んな立場を越えて人々に届く魅力を改めて思い知らされた。(写真=Getty Images)
ブルーノ・マーズは、米・ハワイ出身のシンガーソングライター。R&Bを主体にヒップホップ、ロック、ソウル、ファンクなどを織り交ぜたポップソングを歌う。今回の受賞作となった『24K・マジック』は、昨年9月にリリースされた。全米チャートを含む世界10カ国でトップ10入りを果たし、表題曲「24K・マジック」は昨年、日本テレビ系『ザ!世界仰天ニュース』のED曲としても使用された。
最多8部門にノミネートしていたJAY-Zは受賞を逃した。また、7部門にノミネートしていたケンドリック・ラマーは主要部門は逃したものの、「最優秀ラップ・アルバム賞」など5部門で受賞した。
授賞式でブルーノ・マーズは、『24K・マジック』収録曲「Finesse」を、女性ヒップホップ・アーティストのカーディ・Bとともに披露。“ムーンウォーク”などのダンスパフォーマンスも見せて会場を盛り上げた。
この日の会場は、昨年の女性セクハラ問題を訴える「#MeToo」ムーヴメントに連動する新たな「(セクハラは)もう終わりにしよう」というムーヴメント「#TimesUp」に賛同する女性アーティストたちが白い衣装をまとい、一輪の白いバラを身に着けた。
ブルーノ・マーズは授賞式で、彼が地元の『マジック・オブ・ポリネシア』というショーで前座を務めていた自身の原点を話し、その中で「たくさんの人々が歌って、踊って、楽しんでいた光景を今でも覚えている。僕が当時歌っていた曲は、すべてベイビーフェイス、ジミー・ジャム、テリー・ルイス、テディ・ライリーが作曲した楽曲だった」と言う。そして「僕がこのアルバムでやりたかったことは、そういうことなんだ。みんなが歌って、踊ってくれたら嬉しい」とミュージシャンとしての願いを明かした。
『ゴールデングローブ賞』の授賞式では「#MeToo」の運動に賛同した女優が、黒い衣装を着て話題となった。しばしば、こうしたエンターテインメントの授賞式が社会的、政治的意思表示の場として活用されることはある。もちろん、セクハラは撲滅されるべきだ。
そんな中、授賞式で黒い衣装を着なかった女性モデルのバーバラ・メイアーは自身のインスタグラムで「私はカラフルなドレスを着ることに決めました。今夜の授賞式を自分たちの権利のために立ちあがる強い女性のためのものにしたいのなら、セクシーなドレスを着てはいけないとかファッションを通じて自分たちの個性を表現する楽しみを奪うようなことは間違っていると思う」とコメントしている。
世界的に大きな影響力のあるアーティストが、自身の政治的、社会的主張を発信していくことは大事なことだ。しかし、エンターテインメント自体がそういった主張に利用されるのはプロパガンダでしかない。
音楽にはそういった問題を意識させず、聴衆を分け隔てなく踊らせることができる魅力というものがあったのではないか。改めて、ブルーノ・マーズのスピーチにはそういったことを思い起こさせられた。
なお、授賞式の模様は、WOWOWプライムで2月18日午後4時からリピート放送される。【松尾模糊】
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