不安がありつつも、武器を持ってチャレンジしたワークショップ
――映画を拝見し、出演者方の繊細な感情表現に感銘を受けました。一方で、先程も少しおうかがいしましたが、七瀬さんがこれまで出演された作品と比較すると、感情の起伏がかなり微妙で、出演としてもチャレンジだったのではないか、と思いました。
そうですね。今回は、ワークショップ兼オーディションという形式で、その時に原作を読んでオーディションに参加、と課題をいただきました。
原作通りを意識することももちろんですが、怜司という登場人物が、もともと感情を表に出すような青年ではない、でももちろん内面に喜怒哀楽はある人間だから、感情を出さずにどうそれを表現するとかいう部分ですね。ワークショップの時にも、監督が参加者に、何回もやらせて、僕も結構やらせていただき、怜司という人物をある程度出せたのではないかと思いました。
――原作自体の感想はいかがでしょうか? ストーリー自体には、例えば今はやりのアクション映画みたいなものとは全く正反対ですよね。原作だけだと、なかなかイメージしづらい部分もあったかと思いますが。
すごくうまく書かれているんだなと思いましたが、確かにこれを読んで“どう実写化するんだろう?”ということはすごく思いました。ワークショップでは、ワンシーンだけの演技なので、キャラの設定とそのシーンは理解できて、その場は演れていたのではと思います。
ただこれを一貫して映像化するとなった時には、“僕にできるのか?”という思いはありました。ましてこんな良い役をいただいたのも初めてでしたし、そこはすごく不安で。一方で、原作自体にはすごく共感しました。読んでいて泣いてしまったところもありましたし。
――泣いてしまうほど、共感する部分があったと?
そういうところもありました。僕も母子家庭だったので、怜司の境遇も同じだし。まあこのストーリーでは父子家庭でしたけど。僕は母親と仲良くしていることもあって、どんなことで苦労しているかも、今も苦労をさせていることもわかっているから、読んでいるとその親の気持ちなどが書かれている部分は、無意識から自分の生活と照らし合わせているところもありました。
――では不安もありつつも、その共感した部分から逆に“自分だからこそできる”という思いも、その中にはあったのかもしれないですね。
そうですね。境遇が似ているというのは、ワークショップの時にも自分の武器だなと思いましたし、怜司自身の性格も結構自分に似ているところもあると思いました。ただ、もちろん受かりたいと思ってオーディションを受けてはいたけど、まさか本当に自分になるとは思わなかったので、正直選ばれた時にはビックリしました。
――それが撮影の方に移ると、役柄を演じるにあたり、竹下監督たちとはどのようなコミュニケーションをとられてきたのでしょうか?
まず基本的には、コミュニケーションより自分で考えてきたものを、竹下監督に本番やテストで見せていました。その上で“違うな”“そうだ”ということに関して、話し合いの機会を設けていただいて。そして“ここをこうして”とか、ちょっと違う風にやってみてと言われた感じですね。
――まずは、自分のものを見せろ、と?
そうですね。と言いますか、それが俳優として当たり前だと思います。その上で、監督と自分の考えが一致していれば、そのまま撮影は進んで。だけどそれがベストになっていなかった時に、こちらにわかるように言ってもらえる時もあれば、自分でわかりそうなら、敢えて言わずに自分で答えを見つけさせる時もあるという感じです。
――では、正解という部分は、わりと監督さんが指示してくれたことを反映してほぼできたと…。
いや、やっぱりすごく難しかったですね。自分の技量というのもあるんですけど、できていないところも目立っちゃって。でもその時はちゃんと監督は“できていない”と言っていただけたし、その次の日は励ましていただいたりと、ケアしていただくこともあり、すごく良い関係で撮影が進められました。











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