実はアイドル好き、目指した過去も、七瀬公 意外な素顔に迫る
INTERVIEW

実はアイドル好き、目指した過去も、七瀬公 意外な素顔に迫る


記者:桂 伸也

撮影:七瀬公

掲載:18年01月25日

読了時間:約14分

 芸能事務所・東宝芸能の創立50周年記念でおこなわれた、初の男性オーディションでデビューした俳優の七瀬公(23)が、1月20日新潟先行公開、1月27日より全国公開の映画『ミッドナイト・バス』に出演する。かつてはアイドルを目指していたこともあるという七瀬は大の音楽好きでダンス好きでもあるという。そんな彼に今回、映画出演の所感やチャレンジのポイントなどをたずねた。共演した原田泰造からは「真面目にやっている奴が最後まで生きるんだ」と芸能界で生き抜くための助言も得たという。共演者から得たものとは何か。【取材=桂 伸也/撮影=ヨコマ キミヨ】

 『ミッドナイト・バス』は、第27回山本周五郎賞と第151回直木賞の候補に選出された伊吹有喜さん原作小説を実写化したもの。東京から故郷の新潟に戻り深夜バスの運転手として働く男と、元妻の再会をきっかけに離れ離れとなっていた家族が、再び門出の時を迎える様を、彼らを取り巻く人たちとの人間模様を交えて描く。2017年におこなわれた『第30回東京国際映画祭』の招待作品にも選ばれている。

 主人公のバス運転手・高宮利一を、お笑い芸人・タレントとして活躍する一方で俳優としての活動も著しい原田泰造が演じる。メガホンをとったのは、原田の映画初主演作『ジャンプ』を手掛けた竹下昌男監督。音楽を、バイオリニストの川井郁子が担当する。また共演に利一と別れた妻・美雪を山本未來、利一が妻と別れた後に、思いを寄せる女性・志穂を小西真奈美、利一の娘・彩菜を葵わかなが担当、七瀬は利一の息子で、都会に就職しながらも諸事情で帰郷する息子・怜司役を演じる。

 普段の何気ない会話の中に表れる感情の動きなど、全編が繊細なタッチで描かれた本作は、公開前より高い評価を得ているが、七瀬にとって本作はデビューから出演してきたこれまでの作品とは全く異なる作風であり、出演には大きなチャレンジがあったのではないだろうか。今回は以下の要旨でその経緯をたずねてみた。

〇音楽は欠かせない!アイドルになりたかった過去
〇不安がありつつも、武器を持ってチャレンジしたワークショップ
〇印象深い共演者たちに支えられた撮影

 ◆七瀬公プロフィール 1994年生まれ、奈良県出身。東宝芸能が創立50周年を記念して開催した同事務所初の男性オーディションに合格し、15年にテレビドラマ『チア☆ドル』で俳優デビュー。以降、映画、TVドラマにて活躍。主な映画出演作は、『暗殺教室ー卒業編ー』(16)、『SCOOP!』(16)、『うさぎ追いし ? 山極勝三郎物語 ?』(16)など。また、17年5月、舞台「あさひなぐ」に出演。(映画『ミッドナイト・バス』公式サイトより)

音楽は欠かせない!アイドルになりたかった過去

――普段は音楽を聴かれていますか?

 聴いています。基本的には、気に入った音楽をよく聴いています。歌うのも好きで、カラオケにもよく行きますね。

――ご自分でもCDデビューしてみたいとか?

 したいです!(笑)。実はアイドルが好きで、小学校からジャニーズを見て育っているし、AKB48の公演にも通っていて。今はK-POPなどを聴いています。本当はアイドルになりたくて、歌うことも踊ることも大好き。習ったりしたことはないけど、見様見真似でPVの完コピなんかも結構昔からしていました。

――七瀬さんにとってアイドルとは、どんなものなのでしょうか?

 夢を与えるものだと思います。僕は夢を与えてもらっていました。だからずっとそっちの立場になりたいと思っていました。今でも、隙あらば歌手デビューしたいくらいです(笑)

七瀬

「ミッドナイト・バス」を振り返る七瀬公(撮影=ヨコマ キミヨ)

――俳優オーディションを経てデビューされたということで、本格的な俳優を志望された方と思っていました。そういう意味では意外な面というか…。

 アイドルになりたいと、中学の頃からオーディションを受け続けていたんです。それこそジャニーズ事務所にも。最終で落ちちゃいましたけど、実は一度、Sexy Zoneのライブでバックダンサーとして踊ったことがあるんです。だからプチアイドル体験みたいなこともしたことがあります。

――それは貴重な体験でしたね。

 はい。そんなこともありましたが、オーディションを受け続けていたら20歳の時に現在の事務所に拾っていただきました。ただ僕はその時もまだモデルとか、アイドルをやりたい気持ちも持っていたんです。予備知識がないまま事務所に入ったら、ガチガチの俳優事務所でして(笑)

――スゴイ経歴ですね(笑)

 最初はそれにビックリして、“ああ、ここじゃアイドルもモデルもできないかな…”って(笑)。ちょっと思っていたのと違うけど、そこから活動を1年、2年とやっていくうちに、俳優の面白さにはまっていった、という感じですね。今はもちろん、俳優として育てていただいていることを、すごくありがたく思っています。

――では今回のこの『ミッドナイト・バス』というと、かなり難しい方というか、例えばドラマのデビュー作『チア☆ドル』などのちょっとキャピッとした感じとは違う正反対な感じで、かなり難しかったのではないしょうか?

 もう真逆です。もちろんあの時は、本当に俳優を始めて数カ月しか経っていないので、演技自体が難しかったんですけど、今思えば、それと比べればもう…『チア☆ドル』には申し訳ないですけど、断然こちらの方が難しいというか。

――性格が違う演技、ということもあるかもしれませんけどね。

 そうですね。でも心情表現の難しさが違うこともありましたが、まだ演技を始めたばかりで、『チア☆ドル』は役柄から「ヤンキーになれればいい」くらいしか思っていなかったし(笑)。今回は繊細な心情を映像にどう映すかといったことや、会話のキャッチボールなんかが最初はできていなくて、ある程度できるようになってきたら、その一つ上の難しいことに挑まなければいけなくなってきたり。すごく難しい役どころで本当に大変でした。監督にも優しく…コテンパンにされて(笑)

――この映画の音楽は、バイオリニストの川井郁子さんが担当されていますが、オープニングの物悲しいバイオリンのインスト曲と、葵わかなさんが演じられたアイドルの女の子が歌う歌と、かなり振り幅が広い音楽がありますね…。

 すごいですよね、両方とも川井さんが作られた楽曲だと思えないくらいのギャップが(笑)

――ちなみに趣向としては、アイドル風の曲の方が?(笑)

 そうですね。撮影の時には、泰造さんと一緒に見ながら口ずさんでしました。上から見ていたんですけど、カメラが回っていないところで。すごく耳に残るから、個人的にはそっちの方というか、まずアイドルを見ているというのが楽しかったので(笑)

――それは楽しい時間でもありましたね。ちょっと難しい質問になりますが、七瀬さんにとって音楽とはどんなものでしょうか?

 そうですね…ベタな回答になりますけど、僕は気持ちの切り替えは音楽から、というところがあります。学生の頃には失恋した時に失恋ソングを聴いたり(笑)、気分を上げたい時にはアゲアゲのラップ曲を聴いたり、イライラした時にはカラオケに行ってロックバンドの歌を歌って、シャウトで全部吐き出す、美意識を上げたい時には、アイドルの歌を完コピしたり(笑)。本当に音楽が始点になっているというか。何かに集中する時も、絶対に音楽を聴いている。受験勉強の時も音楽を聴きながらとか、自分にとって欠かせないものなんです。

――役者の方には、同様のことを言われる方もよくいますね。台本を覚える際に音楽を流したりというお話はうかがったことがあります。今回の撮影の際にも、そういうものを活用されましたか?

 聴いていました。もうガンガン音楽を流しながら台詞を覚えて。その方が僕はすっと頭に入ってくるんです。逆に台詞を忘れたい時は、踊ったりするんです。踊ると覚えていられないので、それで一度リセットして覚え直したり。

――歯を磨いたり、ご飯を食べたりする感覚と近い感じですかね。

 本当に絶対に欠かせないです、それで聴いていると街中でも電車の中でも踊っちゃったりすることが(笑)。急に動き出したりするから、多分周りの人は怖いと思われてるんじゃないかと(笑)。それくらい本当に音楽が染みついているというか、大好きですね。

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