黒人の歴史とともに現代のポピュラー音楽はある
――ガーナへは、ハイライフという現地音楽を目的に行かれたそうですね。シーンのなかでもイギリス軍隊のブラスバンドがミックスしたものと話されていました。そのガーナでは奴隷貿易に使われたケープ・コースト城も見学され、「ハイライフもジャズもR&Bも含めて音楽は黒人の悲しい歴史とともにある」と話されていました。現地で歴史に触れて感じたことは何でしょうか。
僕らが見ている世界地図は日本が中心にあって、学校では日本が中心の世界地図で習ってきました。だけど、僕が旅をしているなかで見てきたのは、ヨーロッパやアフリカが中心にある地図。僕らが見てきた世界地図は、南米は一番右でアフリカが一番左だからその大陸と大陸の間には距離があって、遠いものと思ってきたけど、ヨーロッパ中心の地図を見ると南米とアフリカが隣合わせだったことに気が付くんです。
コロンブスが1492年に新大陸、サン・サルバドル島を見つけて、労働力のためにそこからの350年、1200万人の奴隷の方がアフリカから南北アメリカ大陸に連れていかれたという奴隷の歴史も、僕らが見てきた地図の感覚だとよく分からない、端と端だから。でも地球儀やヨーロッパが中心の地図で見たときに、「こんなにも近くて、これだけの人が運ばれていった」ということが地理的な部分で実感に変わったんです。
1200万人以上という数もそうです。掘り下げて「当時の人口は今の74億人じゃないよな」と考えたときに、説にもよるけど当時は5億人と言われていて、5億人のうちの1200万人ってとんでもない数だと思うし。その方々が北米あるいは南米へと連れていかれて、人として扱われないなかで自分たちのアイディンティティを表現する、自分の心を開放する、隠れてやることもあったんだと思うけどそれが「音楽」と「踊り」だった。
それによってジャズが生まれ、ブルースが生まれ、R&Bが生まれ、そしてロックが生まれて、ヒップホップやファンク、ソウルやディスコなどがあって。これらはその歴史がなかったら生まれていない音楽ジャンルで。僕らがやっているポピュラーミュージックの故郷はアフリカにあって、アフリカのあの辛い歴史がなければきっと生まれていないだろうし、辛く悲しい歴史が背景にあって、そういう方たちの血と涙の上に今自分がやっているポピュラーミュージックがあるんだということが初めて繋がりました。
世界史の授業で教科書には奴隷船の絵が描いてあったそこで奴隷貿易を習ったけど、どこか他人事というか、日常生活のなかでは自分とは関係ない一つの歴史。当時はテストの点を採るために教わった感覚だったけど、実際に向こうに行ってみて肌で感じてみたり、いろいろ調べていくと、その歴史は今自分がやっている音楽とこんなにも関係しているんだ、と自分の音楽のルーツを再確認できた、本当に大きな旅でした。






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