indigo la End、くるりとのラブストーリーを熱量高い演奏で彩る

(撮影=石ヶ森三英)
indigo la Endが12月8日、東京・恵比寿ガーデンホールで『インディゴラブストーリー vol.2』の初日公演をおこなった。この企画は彼らが影響を受けたアーティストを招いた対バンツアー。初日の共演相手はくるり、それ以降も安藤裕子、ふくろうず、ストレイテナーと豪華な顔ぶれで話題となっていた。くるりについては「毎回新作が出る度に聴いていて、尊敬している」と川谷絵音(Vo、Gt)が語るほどの憧れのバンドだ。そのくるりとの共演という夢舞台でindigo la Endは熱量の高い演奏を展開し、キャッチーな言葉とメロディを武器に観客を魅了した。バンドの夢がひとつ叶ったこのツアー初日の模様を、対バン・くるりのステージと併せてレポートする。【取材=小池直也】
くるり
暗転後、岸田繁(Vo、Gt)が「くるりと申します。宜しく御願いします」と呟いてブルージーなギターを弾くと、始まったのは「鹿児島おはら節」。音と音のスペースでうねる佐藤征史(Ba、Cho)ベースラインと、間奏で浮遊するファンファン(Tp、Key、Cho)のトランペットの音が心地良い。
続いて3拍子系のビートにのせて「虹」へ。サビの脱臼感のあるメロディに、岸田と佐藤の声のハーモニーが気持ちよく混ざって飛ぶ。また、岸田はアウトロでギターを弾きまくって、オーディエンスを釘付けにした。
「Morning Paper」は曲調が変形しながら進む。サポートドラマーのクリフ・アーモンドがビートの中でリズムをかき回し、緊張を生む。そこから全員が合流して高揚感が生まれると、会場の空気も引き上がり、オーディエンスも体を揺らす。残響が消えるエンディングで楽曲が終わった。
ここでMC。岸田が「そもそも何で企画に呼んでくれたんですかね?」と疑問を呈すると、佐藤は「(企画名とかけて)ラブを感じてくれたんじゃないですか」などと漫才コンビの様な掛け合いで、観客を楽しませる。シリアスな演奏中とのギャップを感じさせた。
4曲目は新曲を演奏。続いて、岸田がギターを置き「琥珀色の街、上海蟹の朝」を繋ぐ。それまでのロックミュージックを下敷きとしたサウンドから、いきなりブラックミュージックのグルーヴに世界が一変。演奏者全員の演奏も質感がスイッチした様だった。フロアの揺れ方も変わった。
その後も「ふたつの世界」で軽快なリズムでホップで明るい雰囲気を作り、「Liberty & Gravity」は緩い4つ打ちのリズムや、いなたい雰囲気などが交差する不思議な曲展開を紫の照明が際立てた。
岸田は「えのぴょん(川谷絵音)、何歳かな? 29か。狭間の年齢やな。また、どこかで会えるのを楽しみにしています」と語り掛け、この日最後の「ロックンロール」を披露。タンバリンを鳴らすファンファンがキュートだった。セットリスト中で1番の爽やかな風を吹き込んでステージを後にした。
indigo la End
両バンドの機材が多いため、少々大がかりな転換がおこなわれた。ミステリアスなSEが流れてindigo la Endがステージイン。憧れのくるりの後で彼らはどの様なステージを見せるのか、観客の期待が高まる。
セットリストは「心ふたつ」で切なく始まった。川谷絵音の声とコーラスによって綺麗なメロディが彩度を増す。エンディングで「ありがとう」と呟くと、続いて鍵盤のけだるいイントロが鳴った。演奏者それぞれがその雰囲気に寄り添ってから、佐藤栄太郎(Dr)のドラムが入ってくる。2曲目は「見せかけのラブソング」。川谷の切ないファルセットが全編で響く。曲間のブレイク部分ではオーディエンスから手拍子が。
続いて、佐藤が先手を打ってから「想いきり」へ。疾走感がありながらも演奏の質感はソフト。盛り上がりすぎない粋な演奏を展開した。「ココロネ」はバスドラムと美しいキーボードの音が重なる。ファンキーなリズムパターンが繰り出されるが、ここでもテンションは抑えて、クールに聴かせる。照明も幻想的に変化。
続いて華やかなイントロから「愛の逆流」。サビの「傷つけないで、傷つけないでって」がパンチラインだ。ここから冷静だった演奏も熱を帯びていく。さらに「知らない血」は、長田カーティス(Gt)が奏でるユニークな音色がスパイスとなり、サビではマイナーなメロディラインが紡がれた。演出も展開に同期して、視覚でも訴えかけてくる。
「実験前」も引き続きアッパーに演奏された。演奏者間のコンビネーションが際立つアレンジで、各々がピックアップされるソロリレーも聞きどころだった。ギターを振り回す様な長田、それを受けて盛り上がる川谷、ここぞとばかりに高音域で指を踊らせる後鳥亮介(Ba)、三者三様。
MCは川谷。対バンのくるりについては「毎回新作が出る度に聴いていて、尊敬しています。今日のライブを観て、僕らも長く続けたいなと思いました」しみじみ。さらに「絶対出てくれないと思っていました。出てくれなかったらワンマンにしようと思っていた」とも明かす。2020年のバンド結成10周年については「5周年に何もやらなかったから、10周年はちゃんと何かをやりたい」と予告した。
その後メンバー紹介。正規メンバー4名に加え、サポートはコーラス&キーボード・えつこ、同じくコーラス・ささみお。
演奏再開は「鐘泣く命」から。ラテン風なリズムでグルーヴしていく。間奏はバンドの演奏の上で、先ほどのコーラス2人によって新たな展開が作り出される。現行のアレンジでは彼女たちの存在が大きな役割を果たしていると言えるだろう。
言いたいことを集約した曲
ステージは終盤戦へ。「夜明けの街でサヨナラを」では川谷、後長、長田がステージ前方に飛び出しファンにアピール。ギアを上げて快走。爆発力のあるサビに思わずフロアからは手が伸びる。そして、彼らの初期を代表する楽曲「緑の少女」も披露された。ドラムの4つ打ちのリズムと、照明、ファンの手拍子が一つに。発表当時と同じアレンジながら、メンバーの入れ替わりや各々の成長によるサウンドの深化が確認できた。
「次の曲に僕の言いたい事が集約されている」とMCして、セットリスト最後は「Play Back End Roll」。サビに向かって、演奏の熱量を上げていくメンバーたち。川谷はギターをかき鳴らしながら、マイクに「言いたい事」を吹き込んでいく。アウトロはメンバーそれぞれが体を揺らしている様から、感情のままに演奏している様子が伝わってきた。最終的に佐藤が演奏を引っ張っていきエンディングへ。その後、メンバーが退場。
アンコールが起こり、ほどなくしてメンバーがステージに帰還した。「ライブばっかしてたな」と今年を振り返る川谷。さらに「2016年に比べると凄く楽しかったです。今年を振り替えると『楽しかった』しかない」と意味深なコメントで会場に笑いを起こした。そして「2018年は曲を作りたいなと思います」と最後に話してアンコールをスタート。
まずは「冬夜のマジック」。何度も繰り返される<もうすぐ>や<時間と時間が口説き合ってゼロになるところを恋と呼んだ>などのキャッチーな言葉がメロディと一緒になって聴き手に刺さる。季節外れの「夏夜のマジック」は緩いビートとコーラスが鳴る中を、ハンドマイクで歌う川谷の声がすり抜けていく。サビで自然と手が上がる。佐藤は遅いリズムをかいくぐる様な倍速のフレーズで演奏を煽っていた。
楽しい時間はあっという間に終わる。ぼうっと照らされた光の下、川谷が弾き語る。最後の曲は「幸せが溢れたら」だった。Aメロとサビの音のコントラストが鮮やか。川谷の声。長田の迫る様なギター。言葉の一つひとつを噛み締める様に頷きながら、体を揺らす観客の姿もあった。演奏は川谷と長田のギターによるアンサンブルで幕を閉じた。
- (撮影=石ヶ森三英)
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セットリスト▽くるり 1.鹿児島おはら節 ▽indigo la End 1.心ふたつ Encore 12.冬夜のマジック |
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