強い意志込めた曲を歌っていきたい、ASCA ソロプロジェクト始動
INTERVIEW

強い意志込めた曲を歌っていきたい、ASCA ソロプロジェクト始動


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年11月25日

読了時間:約8分

 女性ボーカリストのASCAが11月22日に、1stシングル「KOE」でデビュー。2011年に開催された「第5回全日本アニソングランプリ」に出場してファイナリストに上り詰め、本名の大倉明日香として2013年にアニメ『さくら荘のペットな彼女』後期エンディングテーマ 「Prime number~君と出会える日~」を発表。このたび大倉明日香のソロプロジェクト=ASCAとして、アニメ『Fate/Apocrypha』2ndクール エンディングテーマ「KOE」でデビューを果たした。「高音から低音までカバーする音域の広さとハスキーボイスを武器に、強い意志を込めた楽曲を歌っていきたい」と話す彼女。1stシングル「KOE」に込めた気持ちについて聞いた。【取材=榑林史章】

三姉妹の真ん中で、歌を褒められたことがきっかけ

「KOE」初回限定盤

――これまでも様々な音楽活動を行ってきて、今回ASCAとしてデビュー。以前との違いや、ASCAとしてのテーマみたいなものはありますか?

 CDのリリース自体は4〜5年空いたのですが、その間にも楽曲制作やレコーディングは続けていました。なので、やっとという気持ちです。今回のシングル「KOE」の収録曲を筆頭に、“強い意志”が込められた曲をやっていきたいと思っています。

 今までたくさんの音楽に救われてきて。音楽の持つ力に励まされたり、自分に寄り添う曲であったりとか。以前の私がそうだったように、今後は私の音楽や世界観で、聴いてくれる人の背中を押してあげたり、寄り添ってあげたいです。

――たとえば、どんな音楽に救われたのですか?

 小学3年生の時に聴いて好きになったのが、絢香さんの「I believe」でした。絢香さんの作るメッセージ性の強さに、小3ながら惹かれるものがあって。それ以降、ソロの女性シンガーの方に憧れを抱きながら、曲を聴くようになっていきました。

 高校卒業後の2年間は、なかなか音楽の仕事には結びつかなくて、どうしようかといつも葛藤していて。そんな時に、前向きな気持ちにさせてくれたのが音楽です。地元の愛知で路上ライブをやっていたときも、背中を押してくれたのは音楽だったし、東京で頑張ろうと思わせてくれたのも音楽でした。

――中学時代には、バンドでボーカルをやっていたこともあったそうですね。

 中学2年生のころから地元の音楽教室に通うようになって、そこで先輩に誘っていただきました。最初はいろいろなカバーをやっていましたが、途中からオリジナルを作り始めて、私は歌詞を担当して。デビューに向けて頑張っていたんですけど、よくある方向性の違いで解散してしまって。

――それでもソロで音楽活動を続けたのは、何が後押ししたのでしょうか?

 もともと歌手を目指すきっかけになったのは、小3のあるときに親から「上手いね」と歌を褒められたことです。私は三姉妹の真ん中で、あまり手を掛けてもらえないことが多かったんですけど、歌は褒めてもらえるし私を見てもらえるし。
 それで将来のことを考えるようになったときに、自分が人のために出来ることって何だろう? と考えたら、やはり歌うことしかないと行き着きました。学校の進路相談でも、歌をやりたいと宣言していて。先生も応援してくれたし、両親も理解してくれたのは、きっと環境に恵まれていたと思います。

過去の自分を壊して生まれ変わる

「KOE」アニメ版

――そんなASCAさんのデビュー曲「KOE」は、ストリングスが印象的に使われていて、少しダークさがありながらサビでは爽快さを感じさせる。独特な曲ですね。

 最初に聴いたときは、「すごい曲が来た!」と思いましたが、同時に絶対にこれを歌いたいと思いました。別れの歌なのですが、その別れを悲観的に捉えるのではなく、その経験や記憶があるから進んで行けると歌っています。全体を包み込む切なさとは裏腹の前向きさを、どうやったらより伝わるか考えて、AメロやBメロでは辛い別れを表現して、サビではその辛い経験や痛みを振り切るようにして歌いました。

――歌うときは、歌詞の情景を自分自身の経験に重ねたりしながらでしたか?

 はい。自分の経験に当てはめました。私自身、大切な人を亡くしたり地元を離れて家族とは別々に暮らしているなど、たくさんの別れを経験して。でも今は、まっすぐ歌と向き合って前向きに活動している。レコーディングで別れの気持ち思い出すことは辛かったですけど、そのぶん前向きに生きたいという気持ちを込めさせていただきました。

――タイトルの「KOE」は、「声」ですよね。

 はい。曲の中で、昔の経験を思い出すきっかけになるのが声です。懐かしい曲を聴いて、当時の思い出がフラッシュバックするみたいなイメージですね。

――実際に、曲と思い出がセットになって残っているものは、ASCAさんの中にもありますか?

 アンジェラ・アキさんの「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」を聴くと、中学の卒業式で歌ったことを思い出します。中学時代は友だち関係のこととか、良いことばかりではなく、辛い想いもたくさん経験して。思春期まっただなかでもあったので、先生方にもだいぶ手を掛けていただきました。それだけに卒業式では、3年間ありがとうという気持ちが溢れて号泣してしまって。当時の友だちとは今も仲が良くて、秋田へ旅行に行ったんです。やはり昔の友だちと会うと、15歳のときに戻ってしまいますね。沈む夕陽を見ながら、大声で一緒に歌って青春しました(笑)。

――「リインカネーション」は、とてもスケールが大きくてドラマチックなナンバー。タイトルの「リインカネーション」は「輪廻転生」という意味ですよね。

 はい。過去の自分を壊して生まれ変わり、新しい自分になることを意味しています。歌詞は上京したばかりのころの気持ちと重なり、レコーディングでは自然と気持ちを込めることが出来ました。

 冒頭の<悲観的になる夜を越えられない>は、すごく悩んでいたときのこと。私が東京を拠点に活動をすることは、すごく勇気がいることだったんです。それでサビの<飛び出して>や<壊して>といった歌詞からは、地元を飛び出して東京でやっていることと重なります。

――実際にASCAとして、新しい自分になっていっている実感はありますか?

 なっていっていると言うか、なりたいという願望ですね。今までの自分の殻を壊して、新しいことにチャレンジしていくのは、もっとこれからのことだと思います。そういう意味では、今後はどんな自分に生まれ変わって行けるか、自分自身でも楽しみにしています。

小3で風邪をひいてハスキーな声に

ASCA

――「最低な朝と名付けたのは」はアッパーなロックサウンドで、他の2曲とは少し違ってて、爽快さがありますね。

 この曲も「リインカネーション」同様に、自分自身とすごく重なるところがありました。歌詞に出てきますけど、学生の頃ってみんなと同じ笑顔が作れなかったり、誰でも孤独な気持ちになったり、劣等感を感じたりすることがあると思います。そんなときは、自分には夢とかやりたいことがあっても、それに気づかないふりをして気持ちに蓋をしてしまう。そういう一歩を踏み出せない状況に陥っている人に向けて、思い切って一歩を踏み出して欲しいという気持ちを込めて、<本気で泣いた 今日こそが始まり>というフレーズを歌っています。

――ASCAさんの声と歌い方は、低音から高音まで音域が広くて、表現力が豊かだという印象です。ご自身では自分の声をどう思っていますか?

 高音の強さみたいなものは、私の武器としてずっと持っていたいです。あと、しゃべり声も低いので、低音がよく出るんですね。言葉を伝えたいときには、低音もしっかり出ていると、より歌詞が浮き彫りになる感じがあります。高音も低音も出せて、少しハスキーな声質というのは、私の声の特徴かなと思いますね。

――子どものころからハスキー?

 気づいたらこういう声だったんですけど、親が言うには、小学3年生のときに風邪をひいて、そこからハスキーになったらしいです(笑)。

――女性のハスキーな低音って、セクシーさもありますよね。

 ありがとうございます。「KOE」を作詞作曲編曲してくださったSakuさんにも、それはよく言っていただきます。そこを良いと言ってくださる方がいるなら、どんどん出して行こうと思います。Sakuさんからは他にも、「サビで張るときの、エモーショナルな感じが良いね」とか、「低音のかすれた感じが良い」など、ほめてくださって。楽曲を作ってくださるみなさんは、そうした私の良いところを最大限に引き出せる曲を作ってくださって。とても光栄だと思っています。

――今後ライブ活動もやって行くのですか?

 具体的に決まったものはまだありませんが、生のストリングスや映像をふんだんに使って、私の世界観を多面的に表現出来たら良いなと思っています。欲を言えば日本武道館、フェスなら『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』や『Animelo Summer Live』などに出てみたいですね。

「KOE」 MV

作品情報

ASCA
1st Single「KOE」
11月22日発売

■初回生産限定盤(CD+DVD)1600円(税抜)VVCL-1123 ~ VVCL-1124
■通常盤(CD)1200円(税抜)VVCL-1125
■期間生産通常盤[アニメ盤](CD+DVD)1500円(税抜)VVCL-1126 ~ VVCL-1127

▽CD収録内容
M1. KOE
M2. リインカネーション
M3. 最低な朝と名付けたのは
M4. KOE -Instrumental-
※アニメ盤M4.にはKOE –TV size mix-を収録

▽初回生産限定盤DVD収録内容
M1.「KOE」 Music Video
M2.「リインカネーション」 Music Video
M3.「最低な朝と名付けたのは」 Music Video

▽期間生産限定盤(アニメ盤DVD収録内容
M1.TVアニメ『Fate/Apocrypha』2ndクール ノンクレジットエンディング

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