女性ラッパーのちゃんみな(19)が15日に、ニューアルバム『CHOCOLATE』をリリース。ちゃんみなは、2016年にBSスカパー!で放送されているバラエティー番組『BAZOOKA!!!』内の現役高校生によるフリースタイルラップ選手権『第9回 BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』に出場して注目を集め、今年2月にDigital Single「FXXKER」でメジャーデビュー。1stアルバム『未成年』は、iTunes総合チャートで1位を獲得した他、この夏は『ULTRA JAPAN 2017』や『SUMMER SONIC 2017』など大型フェスにも出演した。今作は米・ロサンゼルスで制作された。まるで本場のヒップホップを聴くような、この作品のクオリティの高さから彼女の本気度が見えた。「練馬のビヨンセ」と呼ばれる彼女に、海外でのエピソードやヒップホップへの想いを聞いた。【取材・撮影=榑林史章】
ちゃんみなとはどういうものかを示すことが出来た
――今作は、米・ロサンゼルスで制作されたそうですね。本場での制作はいかがでしたか。
L.A.に行ってすごく良かったです。空気感も違うし、向こうの人の実力、レベルが全く違うなと思ったし。向こうはアマチュアミュージシャンでも普通に上手くて、路上で歌っている人もびっくりするくらい上手くて「日本に来てやりなよ!」って言いたくなるくらいでした。
一緒に曲制作をやってくれたソングライターの方たちも、アイデアが抱負だし。自分のレベルを思い知りましたね。日本でもまだまだ、ちっぽけだと思っていたから、L.A.に行ったら本場のすごさに余計に圧倒されました。それで悔しくなって、もっとやってやろう! と思って。
――どういうアルバムにしたいか、何かコンセプトはあった?
自分の中で、次のアルバムのテーマカラーは「モノクロだ」と決めていて。シングル曲「CHOCOLATE」が出来たときに、パッと閃いて、アルバムタイトルもこれだなと。
――「モノクロ」だと思っていたのは、どういう理由から?
私の中でサイクルがあって。明るいものが好きな時期、ダークなものが好きな時期と。前回のアルバム『未成年』は、ジャケットもピンクだったし、全体に明るかったので、次はモノクロでダークめが良いなと。アートワークがモノクロになると、曲も必然的にそういう感じになるじゃないですか。それと、海外のお土産といったらチョコレートだし(笑)。
――海外のお土産でチョコレートはハワイでは?
L.A.に行った人から、チョコレートをいただくことも多いですよ。それに、この曲はビターチョコレートで、この曲はウィスキーボンボンだよねって、曲をチョコレートの種類に見立てることも出来ると思って。
――全体に、ラップよりも歌がすごく入って来た印象でした。
最初は、ラップをたくさん入れようと思っていたんですけど、気づいたら歌が多くなってしまって。でも私のなかでは、ラップだけがヒップホップだとは思っていないですし。私は自分のことをヒップホップアーティストだと思っているので、そういう感覚で作ったら、こういう作品になりました。そういう意味では「ちゃんみなとはどういうものか」を示すことが出来た、大満足のアルバムです。
Fワードが出て来ないと私らしくない
――曲は、どんな風にして作っていったのですか?
向こうのクリエーターの方と、その場のフィーリングでトラックを作っていきました。たとえば、ギターを弾きながら「こういうコード進行はどう?」って言われて、それに私が合わせて歌って、それをトラックを作る人が打ち込んで…という感じで。セッションするみたいな感じでしたね。
――L.A.で最初に出来た曲は?
「FRIEND ZONE」です。L.A.に行った嬉しさから、浮かれた感じが出ていますね(笑)。着いて一発目の制作だったので、みんなテンションが高くて。向こうの制作陣と、うちのスタッフは飲み始めちゃって(笑)。
「LIGHT IT UP」も、浮かれながら作ったやつですね。どういう曲をやりたいか相談した時に、セレーナ・ゴメス(米歌手・女優)やチャーリー・プースなど、最近音数の少ない曲がアメリカでは人気なので、そんな曲をやりたいねって話しをして。
――この曲もそうですが、今回は男女の関係性や、ラブソングを歌ったものが多いですね。その時の自分のモードがそんな感じだった?
そうなんだと思います。すごく多感な時期って言うか。恋愛とか男女間の歌が多くなったのは、友だちとか周りのこともそうで、単純に世代的にこういう話題がリアルだっていう。
――「TO HATERS」なんかは、とても怒っていますよね。でも、こういうのを聴くと、ちゃんみなだなあ、と(笑)。
やっぱり“Fワード”が出て来ないと、私らしくないので(笑)。この曲は終盤に出来たんですけど、「今回全然Fワード言ってなくない? ヤバイじゃん!」って話しになって、最後の最後に出来たっていう。デビューシングルのタイトルが「FXXKER」だったのに、1年も経たないうちに言わなくなるのは、背伸びしすぎじゃないかと思ったし。
私に対して賛否両論あるのは分かっているけど、陰で言わずに、わざわざ私が見るところで言って、向こうは姿を現さない。そういうズルさって言うか、一部の人のブラックマインドが嫌だな〜って思って。SNSなどで嫌な気持ちになった人も、これを聴いて一緒にスッキリしてくれたら嬉しいです。
ちゃんとNOも言えるのがプロだと思う
――「WHO ARE YOU」は結構シリアスな感じですが、どういうテーマで?
私と“ちゃんみな”が、別の存在に感じる時があって。「MY NAME」は、ちゃんみなが私自身に向けて歌っている曲。「WHO ARE YOU」は、本当の私が歌っているイメージですね。「私は誰だっけ? 私はちゃんみなでしょ!」みたいな。1バース目は自分のことを歌っていて、2バース目は聴いてくれる人に向けて歌っています。私と同じように、自分は誰だろう? みたいな悩みを抱えている人に聴いて欲しいです。あと、私の哲学を聴いて欲しいし、私が自分自身に言い聞かせている曲でもあります。
――<勘違いしてるやつが多い>と歌っていますけど。
そうなんですよね。生きるのって、そんなに楽なことじゃないですよ。簡単に生きているやつが多い。何でそのやり方で成功出来ると思えるんだろう? って不思議です。さぼっちゃうって言うか。
――でも、たまにはさぼりたくなるじゃないですか。
そう思うのは、本当に好きなことじゃないんだと思う。音楽制作やライブ、自分が本当に好きでやりたいことは、さぼりたいって思うわけがないですよね。むしろもっとやりたいって、思うはずなので。
そういう、自分が大事にしているところで怠けてしまう人がいる。自分が出来そうとか、自分にメリットがあると確実に分かることだけやって、自分にリターンがあるかどうか不確かなことには手を付けない。そういう人は、多いかもしれない。すぐに結果が出ないから辞めちゃうとか。
――ちゃんみなと同世代のティーンエージャーは、みんなどんな考え方ですか?
やらない理由を探す人が多いって言うか。これは、あるプロデューサーさんから聞いた話ですけど…歌手になりたいっていう子がいて、「じゃあ今歌ってみて」って言ったら「今はちょっと声の調子が」。「歌手になるために何をやってるの?」って聞いたら、「今は時間がなくて出来てなくて」と答えたそうです。自分の夢のために時間が作れないわけがないじゃないですか。本気じゃない子が多い気がします。
――その点で、ちゃんみなは常に本気ですが、今回の制作でこだわったところや譲らなかったところは?
気に入らないものは気に入らないで、自分勝手を貫きました(笑)。私が好きな曲なのか嫌なのか、私の作品なんだから、私の価値観を大事にしました。もちろん気を使うところは使うし、尊重するところは尊重するけど、ちゃんとNOも言えるのがプロだと思うので。
――とは言え、まだ新人は新人じゃないですか。そういうところで、ちゃんと言えて、それを認めてくれる環境というのはなかなかないですよ。
そうですね。そこは恵まれていると思います。だからこそ、変に気を使って妥協するようなことはしたくないと思いました。
それに今回は、ネイティブでなければ気づかないような、英語の発音やニュアンスの違いを指摘してもらえて勉強になりましたね。そういう細かいところも気を抜かず徹底的にやりたいと思ったし、いずれ海外でもライブをしたいと思っているので、今回のL.A.行きはすごく良い経験になりました。
作品情報ちゃんみな 【初回限定盤】(CD+DVD)2700円(税抜)VIZL-1254 ▽CD収録内容 ▽初回限定盤DVD収録内容 |