Salyu(サリュ)とNakamuraEmiが10月3日、東京・渋谷CLUB QUATTROで2マンライブ『QUATTRO MIRAGE presents「TOUR MIRAGE 2017」』の初日公演をおこなった。東京を皮切りに、10日に名古屋、11日に大阪と東名阪を2人で回るというもの。東京公演ではオープニングアクトに桐嶋ノドカが出演。NakamuraEmiは未発表の新曲を披露し、Salyuは幻想的とも言える世界観で歌い上げた。アンコールでは3人でSalyuの楽曲「VALON」をスペシャルバージョンで披露し、オーディエンスを魅了した。メイン写真の撮影はYukari Morissie。【取材=村上順一】

桐嶋ノドカ

桐嶋ノドカ(撮影=Yukari Morissie)

 開演時刻になると、オープニングアクトの桐嶋ノドカがステージに登場。バックバンドにパーカッション、アコースティックギター、キーボードの編成。「Wahの歌」で幕は開けた。力強さの中に清涼感を感じさせる歌で、会場を包み込む。心地よいテンポ感と桐嶋の歌は癒しの風を会場に吹かせていく。時にはシリアスな歌声で緊張感を与え、時に昇り詰めるような開放感溢れる伸びやかな歌声。楽曲によって表情を変えながら、「夜を歩いて」でオープニングアクトとしての役目を十二分に果たした。

NakamuraEmi

NakamuraEmi(撮影=Yukari Morissie)

 続いてはシンガーソングライターのNakamuraEmi。“実るほど頭を垂れる稲穂かな”とも言える腰の低いスタイルでステージに登場。マイクを手に取ると、軽く自己紹介し「大人の言うことを聞け」でスタート。軽快なカワムラヒロシ(Gt)のアコースティックギターのリズムに乗って、体を揺らしながら、教訓とも言える歌詞を自分自身にも浴びせるように歌い紡ぐ。

 丁寧に楽曲を紹介しながら進むスタイルは健在で、より楽曲と密になれる瞬間でもある。5月24日にリリースされたTVアニメ『笑ゥせぇるすまんNEW』オープニングテーマの「Don’t」や、女性から見た男性像を描かいたスローナンバー「スケボーマン」など、幅広いスタイルでオーディエンスを引き寄せていく。

 この日は、まだタイトルは決まっていない新曲を初披露した。今では失われつつある人とのコミュニケーション、物に触れるという温もりが伝わってくるような楽曲。歌いながら、パソコンのキーボードを打つようなジェスチャーが印象的に視覚に飛び込んできた。ありふれた日常を進んでいくかのように、穏やかな曲調、そこに先述のテーマを抑揚をつけながら歌いあげていく。新曲ながらもスッと心に染み込んでいくような、普遍的な楽曲であった。

 ライブは後半戦へ。彼女の決意や不安など様々な事柄が封じ込められた「メジャーデビュー」を披露。<ぶれんじゃねーぞ>と“初心忘るべからず”といったメッセージと感謝を紡いでいく。どこまでもリアルな歌は偽りのない自分自身をさらけ出していく。

 MCも彼女の魅力のひとつだ。温かみのあるトークは、素の顔が見られる貴重な瞬間。ちょっとハラハラとさせながらも、次にどんな言葉が飛び出すのか期待してしまう。それに対し絶妙にツッコミを入れる、プロデューサーでもあるカワムラとのやり取りも和ませる。

 そして、代表曲「YAMABIKO」では力強いシンガロングでオーディエンスを扇情させた。ラストはNakamuraEmiの威勢の良いカウントから、「モチベーション」。サックスの辻本美博(カルメラ)とカワムラの白熱した音のクロストークを展開。それを、ステージの一歩下がったところでノリノリで、楽しむNakamuraEmiの姿。高まる心地よいテンション感のなか、Salyuに繋げた。

Salyu

Salyu(撮影=Yukari Morissie)

 トリはSalyu。オープニングSEからただならぬオーラを醸し出す。彼女の持つ世界観にゆっくりと足を踏み入れていくかのような導入。始まったのは「飽和」。サポートメンバーの名越由貴夫(Gt)がバイオリンの弓を使用しギターを奏でると、チェロのような美しい低音を弾き出す。エレクトリックなバックサウンド、そこにSalyuの歌声が一筋の光となり紡がれていくよう。

 「リスク」では椅子に腰をかけての歌唱。包み込むようなライティングは、幻想的な空間を作り出し、そこに乗るSalyuの透明感のある美しい声は神々しさすら感じさせた。続いてのスローナンバー「体温」では、体が浮遊していくかのような感覚を与えてくれる。それは、歌とサウンドが一体となった心地よさ。ライブならではの感覚。

 Salyuは羽織っていた上着を脱ぎ、ライブは後半戦に突入。先ほどの浮遊感は、「夜の海 遠い出会いに」でタイトルのごとく海に沈みゆくような感覚を与える。サイケデリックな混沌としたサウンドスケープは脳内をかき乱していくよう。Salyuの歌声はその海から、もがき這い上がってくるかのような力強さを感じさせた。

 印象的なシーケンスフレーズから始まる「My Memory」では、マイクスタンドに備え付けられたイクイップメントで、細かく声のエフェクトを調整するSalyuの姿も見られた。伸びやかなロングトーンは、オーディエンスの体に染み渡っていくよう。

 壮大な「THE RAIN」を歌い終え、MCへ。デビューして初めてワンマンライブをおこなったのが、この渋谷CLUB QUATTROだと話し、「ノドカやEmiちゃんのような、素晴らしい仲間にめぐり合いながら、またここから新しく歩み出せるというツアーになる」と東名阪ツアーへの意気込みを話し、「ここは自分にとって特別な場所」だと綴った。

 この夏に宮城県で開催された「Reborn-Art Festival 2017 〜51日間、毎日どこかで音楽が鳴っているプログラム〜」でよく歌っていたという楽曲「to U」を最後に届けた。ピアノとギターという編成でしっとりと丁寧に歌い上げる。<頑張らなくてもいいよ>や<あわてなくてもいいよ>という言葉が印象的に感情を揺さぶり、ステージを後にした。

「VALON」を3人で

 アンコールでは、再びSalyuがステージに登場。Salyuはこの対バンライブについて、「一緒にステージを作り上げていくというのは学べることが多かったり、楽しいことも多い、本当に感謝です」とこのイベントへの感謝を告げた。そして、Salyuがステージに2人を呼び込むと、Salyuの歌を聴いて感動したNakamuraEmiは、涙を拭いながらステージに登場。それを見たSalyuは「涙を流しながら歌うということも、ボーカリストの経験の中にあってもいいと思います」と優しく声をかけ、この3人で1曲披露することに。

 、SalyuとRIP SLYMEのMCであるIlmariとのコラボシングルで、2004年にリリースした「VALON」を3人で披露。この日のためにNakamuraEmiがラップパートの歌詞を作り上げたスペシャルバージョン。各々スタイルを持つ歌姫3人によって、大きなグルーヴの渦を作り出す。様々な情景を映し出すような、歌でオーディエンスを魅了し、東京公演の幕は閉じた。

 

セットリスト

▽桐嶋ノドカ

01.Wahの歌
02.言葉にしたくてできない言葉を
03.夜を歩いて

▽NakamuraEmi

01.大人の言うことを聞け
02.Don’t
03.I
04.スケボーマン
05.新曲
06.メジャーデビュー
07.YAMABIKO
08.モチベーション

▽Salyu

01.飽和
02.非常階段の下
03.リスク
04.体温
05.夜の海 遠い出会いに
06.My Memory
07.THE RAIN
08.to U

ENCORE

EN1.VALON

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