ボーカリストNANAのソロプロジェクトLily’s Blowが20日に、2ndシングル「花の影 / 泥沼 Break Down」をリリース。2016年に音楽事務所のビーイングが主催した『映画主題歌 女性シンガーオーディション 〜Future Girls Audition〜』でグランプリを受賞。今年2月、近藤ひさし氏のプロデュースで、映画『傷だらけの悪魔』主題歌&イメージソングを収録したシングル「NAI NAI NAI」でメジャーデビューした。「泣いても良いんだよと、寄り添って言ってあげられる歌を歌っていきたいです」と話すNANAの覚悟とは? 「歌で人の心を射貫きたい」と言う彼女の歌に対する想いを聞いた。
笑っていればいいさ、今に見てろよ
――2ndシングルの1曲「花の影」は、TVアニメ『信長の忍び〜伊勢・金ヶ崎篇〜』の主題歌ですね。
はい。もともと好きな作品だったので、タイアップが決まった時はめちゃめちゃ嬉しくて。自分の曲が主題歌として放送される最初の日は自宅で見ていて、ちょっと不思議な感覚もありました。
――アニメが戦国ものだけに、楽曲も和風のロックチューンになっていて。
主人公の千鳥ちゃんという忍びの女の子は、可愛らしさがあるけど信長のために戦っていて、死もいとわない覚悟を持っています。そんな千鳥ちゃんが、月夜を駆け回るようなイメージを持っていたので、そのイメージを元に制作しました。Lily’s Blowらしいロックの中でどれだけ和風テイストを織り込んでいくかさじ加減が難しくて、そこはプロデューサーと相談しながら作っていきました。
――歌詞にも和のテイストがあって、雅なロックという感じですね。キャッチーで耳に残るし。
本当にこのアニメが好きなので、愛がめちゃめちゃ入っているのもありますけど(笑)。Lily’s Blowにとっても、覚悟を持って歌っている部分があって。
――その覚悟と言うのは?
千鳥ちゃんは、すごく優しくて良い子なのですが、乱世を終わらせるためには人を殺める冷徹さや覚悟を持たなければいけなくて。自分の目標のために覚悟を持って突き進んでいくという点は、自分の状況と重なります。
私はメジャーデビュー前にバンドをやっていて、将来はバンドや歌でやっていくと周りに言っていたのですが、実際にそれで食べて行けるのはほんの一握りで。実際に「何を言ってんだ?」という目で見られたり、鼻で笑われるようなこともたくさんありました。でも「笑っていればいいさ、今に見てろよ」という気持ちでやって来て。千鳥ちゃんは見返すぞ!という感じではないのでそこはちょっと違うんですけど、一つのことに向かって邁進していくところは重なりますね。
――千鳥ちゃんは覚悟を持って敵をバッサバッサと。
そうですね。私はバッサバッサとはいかないですが(笑)、歌で人の心を射貫きたいと思っています。
――歌詞には<花の影>とか、少し切なさを感じさせる部分もあって。
花は信長を表していて、千鳥ちゃんはその忍びなので<花の影>と。信長に対する憧れの気持ちみたいなものも、ここには込められているかなと思います。それに続く<小さな風に揺れる夏>という歌詞は、千鳥ちゃんの姿や、何かに向かって突き進んでいる人の気持ちを重ねているので、みなさん自身のことと照らし合わせて、想像しながら聴いて欲しいです。
やめられないから離婚や不倫のニュースが絶えない
――もう1曲の「泥沼 Break Down」は、「花の影」とはまったく違ってパンチの効いた感じ。
これは、お昼の芸能ワイドショー番組を見ていた時にインスピレーションが沸いて。悪い男をガツンとこらしめるような曲を作りたいと、プロデューサーに提案させていただいて出来ました。
――「泥沼」という言葉は、インパクトがありますね。
芸能番組でよく“泥沼離婚”とか“泥沼不倫”とか出てくるじゃないですか。それで“泥沼”を使いたいと提案して。あと、悪い男に引っかかってしまっている感も出したいと思ったし。
――決して経験談ではないと。
経験談ではないです。一般論です。だって絶対に嫌ですよ、泥沼なんて。
――でも、歌の主人公も絶対に嫌だと思っているのに、そういう男に惹かれてしまうところがあって。
そこは、女心と言うか(笑)。ちょっと悪そうな男の人に魅力を感じる時期って、きっとどんな女の子でもあると思います。友だちでも、好きな人がいるけど相手には彼女がいるとか、そういう話をけっこう聞きますし。
――友だちからは、恋愛相談をされるタイプ?
わりと相談されます。でも、あくまでも自分でちゃんと考えたほうが良いよ! という前置きをして、自分だったらこうするかなって話したりします。やめたほうがいいと言っても、そこでやめられるわけがないので。きっと誰もやめられないから、こんなに離婚や不倫のニュースが絶えないのだと思うし。一度、身をもって懲りたほうが良いんじゃないかと(笑)。あまりにもひどい相手の時は、やめたほうがいいって言いますけど。
――ある種の女の子に向けた応援ソングですが、今後もこういう曲を歌っていきたいですか?
女の子限定ではないですけど、いろんな人に向けた応援歌は歌っていきたいです。応援歌に限らず、ゆくゆくはもっと人生的なメッセージを込めたものもどんどん歌いたいです。
海外ドラマ『glee/グリー』を見て励まされた
――今まで聴いて来た音楽で、応援されたり励まされたりした経験はありますか?
音楽ではないのですが、海外ドラマの『glee/グリー』を見て励まされました。舞台となるのは高校の合唱部で、車椅子の子や人種が違う子など、いろんな個性を持った子がいて、罵られたりバカにされたりしながら努力して全国制覇をするお話です。
心に響いたシーンはたくさんありますが、主人公が泣きながら歌うシーンがあって。役者さんが演技をしていると分かっていながら、でも泣きながら歌うのはすごいことだと思って。それだけ気持ちを入れて歌うことが出来るのはすごいなと。そのシーンに触発されて、私ももっと感情を込めて誰かに何かを伝えられる歌をやりたいと思いました。
――そういう歌を歌うためには、やはり歌詞の主人公の気持ちを深く理解するとか?
そうですね。実際に歌う時は、特に何も意識はしてなくて、歌い始めると自然とその気持ちになると言うか。ライブは特にそうで、感情がこもりすぎてしまって、歌いながら泣きそうになることもたくさんあります。
――そういう時は我慢しないで、実際に泣きながら歌っても良いのでは?
初ワンマンのアンコールは、ずっと泣いてましたけど(笑)。
――歌に感情がこもっていれば、聴く人の心を震わせることが出来ると信じていればこそで。
そうですね。どんな歌手の方でも、みんなそうだと思います。その中でも、より語りかけられるような歌を追求して行けたらと思います。男の人だって泣きたい時はあるだろうし、女の人でも泣けない状況の時があると思うし。同志じゃないけど、そういう時に泣いても良いんだよと、寄り添って言ってあげられる歌を歌っていきたいです。
――今後ライブではどんな気持ちで歌っていきたいですか?
私のすべての感情を見せ尽くす気持ちです。曲ごとにいろいろな感情があるので、それがすべて混じり合ったら、きっとドロドロになると思います。共感して一緒に泣いてもらってもいいし、溜まった感情を一緒に爆発させてもらっても良いし。アッパーチューンもあるしバラードもあるし。きっと楽しいライブになると思うので、ロック好きの方もロック未開拓の方も、ぜひたくさんの方に観てほしいです。
(取材・撮影=榑林史章)
作品情報「花の影 / 泥沼 Break Down」 TVアニメ『信長の忍び』盤(CD+DVD)1389円(税抜)JBCZ-6060 ▽CD収録内容 ライブ情報▽ワンマン ▽MITSUBACHI FES 2017 〜5th Anniversary〜 |