長澤まさみ「感情を伝えるのが恥ずかしい」現場で見せる2つの顔
女優の長澤まさみ(30)が15日、東京・新宿ピカデリーでおこなわれた、映画『散歩する侵略者』(公開中)の公開スペシャルトークイベントに登壇した。この日は同作の黒沢清監督も出席。監督から「とにかく芝居が上手い方なのに、打ち合わせとかになると煮え切らなくなる人」という印象を伝えられた長澤は「自分の感情を人に伝えるのが恥ずかしいタイプです」と自身の性格を明かした。
同作は、劇作家・前川知大さん率いる劇団イキウメの同名舞台を映画化したもので、数日間行方不明になっていた夫が侵略者にのっとられ、妻の元に戻ってくるという大胆なアイデアを元に、夫婦が住んでいる町に様々な事件が巻き起こるというSFサスペンスとラブストーリーを取り込んだ作品。
事態に巻き込まれる主人公・加瀬鳴海を長澤が演じ、侵略者に乗っとられる夫を俳優の松田龍平が演じる。
この日のスペシャルトークイベントには長澤の他に、同作の監督を務めた黒沢清氏(62)、映画監督・映画評論家の樋口尚文氏(55)が出席した。
黒沢監督の作品に初めて出演した長澤は「油断してると撮影がどんどん進んでいって終わっちゃうような現場でした。監督、早いんですよね。そのペースに負けないようにお芝居を準備していかないとっていうプレッシャーが、日々あったっていう感じでしたね」と撮影を振り返った。
同作の撮影前に、松田龍平から黒沢監督の撮影現場の流れを聞いていたようで「黒沢監督の現場は『一発本番らしいよ!』って言われて、それを聞いて良かったなって撮影始まった初日に思いましたね」と安堵したことを明かした。
それに対し黒沢監督は「一発本番って事はないんですけど…3回まわしてOKっていう感じです」と言葉を返した。
長澤の印象について黒沢監督は「とにかく芝居が上手い方でした。でも、その前の衣装合わせとか、打ち合わせとかだと嫌がってんのかなーって思いました(笑)煮え切らない感じがね。でもその煮え切らなさがこの方の独特な個性なんだなーって思いました」と話した。
続けて「芝居となると一気に自分がやるべき事、物語上、何を望まれているかを瞬時に理解して、あっという間に素晴らしいに到達出来るんです。でもそうなる前は、『は~い…』とか『出ま~す』とか(笑)。(監督からみて)不安な気分になる、びくびくする現場でした」と長澤に感じた二面性を明かした。
一方で長澤は「嫌がってないんですけど、昔っからよく言われるんですよね。やる気がなさそうとか、後『怒ってるの?』とか。あんまり自分のこうその時の感情を、人に伝えるのが恥ずかしいタイプですね」と自身のキャラクターについて語った。
女優としての長澤の魅力について、映画評論家の樋口氏は「今作は全部仏頂面なんだけど、地震計の針のような感情の起伏が描かれています。『キャバレー』(以前長澤が出演したミュージカル)の長澤さんと、仏頂面で地震計みたいな感情が出ている長澤さんは全然違くて。長澤さんの正体を考えたときに、今作の映画的にいうと概念がないんじゃないか?って思います」と述べた。
長澤が演じた加瀬鳴海という役は、常に怒っている人物。それに対し長澤は「加瀬鳴海は女性あるあるが詰まっているというか、理想の女性像っていう風に思います。怒ってたりしますけど、嫌々相手に尽くしている姿を見ると理想の女性像ってものなのかなって」と役の印象を述べた。
最後に長澤は「自分がこの作品に出れて良かったなって思うのと、今の自分の年齢で出会えたことに本当に幸運だったなと思っています。とっても良い映画なので沢山の方に見て頂きたいですし、長く愛される映画になったらなって思ってます」と作品への想いを語った。【取材・撮影=橋本美波】