めざましクラシックス20周年を記念し、4日間5公演を東京藝術劇場でおこなった

 ヴァイオリニストの高嶋ちさ子と軽部真一アナが去る7月30日に、東京藝術劇場コンサートホールで『めざましクラシックス サマーフェスティバル 2017』の最終公演をおこなった。「めざましクラシックス」20周年を記念し、27日から4日間、全5公演をおこなうというもの。小田和正やスキマスイッチ、沖仁、鈴木雅之、岸谷香らなど豪華ゲストを各日に招き開催。この日はゲストに藤井フミヤ、押尾コータロー、伊東えり、12人のヴァイオリニストを招き、「Another Orion」や「TRUE LOVE」など代表曲を演奏。高嶋と軽部アナによる軽妙なトークも相まって、通常のクラシック公演とは趣を違うスタイルで観客を魅了した。

第1部は押尾コータローが登場

高嶋ちさ子と軽部真一アナ

 東京芸術劇場には多くの観客が続々と入場してくる。ステージにはパイプオルガンが存在感を放ち、壮観さを醸し出していた。開演時刻を少々回ったところでゆっくりと照明が落とされると、高嶋ちさ子と軽部真一アナがめざクラアンサンブルのメンバーらとともにステージに登場。軽部アナが前説をおこないながら「めざましクラシックス・テーマ曲2017」でコンサートはスタート。主旨を説明しながら様々な楽曲をアレンジを変化させ演奏。音楽の楽しさを序盤から伝えていく。

 ここでMCを挟み、客を弄りながら展開。高嶋は過去に5日間連続で演奏して、脊髄を損傷したことがあると明かし、今回の連続5公演での不安もあったが、すでに今回のコンサートの一週間前に原因不明による左足の親指を2カ所骨折していることを明かし、それでもヒールで演奏するという高嶋。「この素敵な衣装にはこの靴じゃないと似合わないので、痛いけど頑張ります」と意気込みを話すと会場からは大きな拍手。軽部アナが「昨日はビーチサンダルでした」と明かすと観客は爆笑。高嶋も「後半はそうなっちゃうかもしれないけど、お気になさらず」と、ケガも一つの笑いに変え会場を和ませた。

 軽部アナとの絶妙なトークに続いてファリャの「歌劇『はかなき人生』より“スペイン舞曲”第1番」を披露。ヴァイオリンがオケの上を駆け抜けるように弾き抜いてく楽曲に高揚感を覚え、ドヴォルザーク・メドレーへ。ドヴォルザークの列車好きがイントロに反映されているのではないかという高嶋の説明もあり、名曲「ユーモレスク」の印象が変わる。このような話題が飛び出るのも、めざましクラシックスならでは。優雅な情景を映し出していた。

 ここで7月10日にデビュー15周年を迎えた、ギタリストの押尾コータローをステージに招き、自身の曲である「Together!!!」を披露。1人でベースやドラムのパートをギターでこなすという、アコースティックギターの無限の可能性を感じさせる演奏で、観客の耳と視線を釘付けにした。MCでは、軽部アナのリクエストで「スーパーマリオブラザーズ」のBGMや「ウルトラQ」、さらに「サザエさん」など、多彩な楽曲をデモンストレーションし、会場を沸かせた。それを見た高嶋は「1人で色々出来るから、友達いなくてもいいよね」との発言に押尾が笑い流す場面も。続いて、「蜃気楼」をめざクラアンサンブルと共に演奏。オーケストレーションにより、スケール感をアップし包み込むようなサウンドで魅了した。

第2部は藤井フミヤ

藤井フミヤと押尾コータロー

 第2部では高嶋がプロデュースしている、“観ても、聴いても、美しく、楽しい”ヴァイオリン・アンサンブルをテーマにした「12人のヴァイオリニスト」が客席後方からオッフェンバックの「天国と地獄」を演奏しながら登場。パステルカラーのドレスを各々身にまとい、軽快なパフォーマンスで楽しませる。メインステージに集結し、高嶋とともにフォーメンションを変えながら、EXILEの「Choo Choo TRAIN」で見せるような縦一列に並んでのローリングで、聴覚と視覚の両方で楽しませる躍動感あふれるパフォーマンス。高嶋が「私が海賊みたいなものだから」と自虐ネタを挟み、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』のテーマソング「彼こそが海賊」を披露。弦楽器による力強い演奏が、大海原を進んでいく船の情景を鮮やかに映し出す。演奏を終了し12人が弓を高く掲げる姿は勇敢な剣士のよう。

 続いて、伊東えりをゲストに招き、ディズニー・デュエットメドレーへ。「美女と野獣」の主人公ベルの衣装で、クリスタルのような美声を響かせる。「朝の風景」の中盤、ステージ右手から軽部アナがアダムのコスプレで登場すると会場が笑いに包まれた。男性らしい低音の効いた歌声を聴かせてくれた軽部アナ。『アラジン』の「ホール・ニュー・ワールド」に突入する前には、伊東と軽部アナがステージ上の端でまさかの早着替えを実施。

 デュエットのラストは『アナと雪の女王』の「扉あけて」を、2人はアナとハンス王子に衣装をチェンジし小芝居を挟みながら歌唱。また趣の違うコーナーで楽しませてくれた。MCではベルの声を担当する伊東に対抗し、映画『塔の上のラプンツェル』のラプンツェルの育ての親、ゴーテルのモノマネを高嶋が披露する場面も。

 そして、『めざましクラシックス』14回目の出演となる藤井フミヤがステージに登場。大きな拍手が巻き起こった。5月24日にリリースされたアルバム『めざましクラシックスwithフレンズ 〜ベスト・ヴォーカリスト〜』の1曲目を飾る楽曲「Another Orion」をしっとりと情感を込め歌い上げる藤井。歌唱が終了するとまさかのハプニングが。なんと高嶋が藤井の歌に聞き惚れてしまい、自身のソロパートを弾き忘れるという出来事に、高嶋が「もう一度やらせてください」と頼み込み、再度「Another Orion」を演奏。憂いを帯びたヴァイオリンの音色が心地よく響き渡った。

 続いては、藤井とは10年振りの共演となる押尾をゲストに招き「TRUE LOVE」を、オーケストラと押尾のギターというレアな編成で披露。ラストは15枚目のアルバム『WITH THE RAWGUNS』に収録の「大切な人へ」。これもまさかの出来事が。ピアニスト・伊賀拓郎の譜面が1枚抜け落ちるというハプニング。藤井自ら「もう一回」と申し立て、再度「大切な人へ」を観客の感情を揺さぶるような歌声で歌い上げた。結果、3曲を披露するはずだったところ、5曲聴けるという観客には嬉しいハプニングとなった。

 本編のラストはヴァイオリニストの松本蘭を呼び込み、クールで情熱的なナンバー、ピアソラの「リベルタンゴ」を届けた。イントロでのチェロのボディをパーカッションのように叩き、リズミカルに始まり、スリリングな高嶋と松本による旋律がホールを駆け巡る。時にヴァイオリンで対話をするかのように、時にお互いを掻き立てるような演奏。そして、チェロの江口一心と西方正輝による、チェロならではの豊な低音を含んだソロがスパイスとなって、聴くものを扇情させながら本編を終了した。

 演者がステージを後にしても鳴り止まない拍手。再びステージにヒールからビーチサンダルにチェンジした高嶋、めざクラアンサンブル、12人のヴァイオリニストがステージに登場。心弾むような軽快な楽曲に、盛大な観客の手拍子が華を添え一体感が高まるなか、20周年の記念コンサートを締め括った。最後、観客に挨拶をおこなう高嶋と軽部アナに、藤井と押尾が花束を贈呈。笑顔あふれるなか、『めざましクラシックス サマーフェスティバル 2017』の幕は閉じた。

(取材=村上順一)

演目

第1部

・めざましクラシックス・テーマ曲2017
・歌劇「はかなき人生」より“スペイン舞曲”第1番(ファリャ)

ドヴォルザーク・メドレー
・ユーモレスク〜我が母の教えたまいし歌

・Together!!!(押尾コータロー)
・蜃気楼(押尾コータロー)

第2部

12人のヴァイオリニスト
・天国と地獄(オッフェンバック)
・「パイレーツ・オブ・カリビアン」より“彼こそが海賊”(ハンス・ジマー)

ディズニー・デュエットメドレー
・「美女と野獣」より“朝の風景”
・「アラジン」より“ホール・ニュー・ワールド”
・「アナと雪の女王」より“扉あけて”

・Another Orion(藤井フミヤ)
・TRUE LOVE(藤井フミヤ)
・大切な人へ(藤井フミヤ)

・リベルタンゴ(ピアソラ)

作品情報

めざましクラシックスwith フレンズ~ベスト・ヴォーカリスト

発売中

価格:3000円(税抜)品番BVCL-30033

【収録曲】

1. Another Orion / 藤井フミヤ
2. My Revolution / 渡辺美里
3. かもめが翔んだ日/ 渡辺真知子
4 .M / 岸谷香
5. You Raise Me Up / 平原綾香
6. 神田川/ 南こうせつ
7. I’m proud / 華原朋美
8. ボクノート/ スキマスイッチ
9. 夢で逢えたら/ 鈴木雅之
10. 涙そうそう/ 森山良子

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