寄り添えるアーティストに、コレサワ メジャーへの決意
INTERVIEW

寄り添えるアーティストに、コレサワ メジャーへの決意


記者:桂泉晴名

撮影:

掲載:17年08月09日

読了時間:約14分

「自分はちゃんと曲と歌詞で勝負して、寄り添えるアーティストになりたい」と話すコレサワの想いとは

 シンガーソングライターのコレサワが8月9日に、メジャーデビューアルバム『コレカラー』をリリース。女子の飾らない素直な気持ちを、ポップなサウンドにのせて歌う彼女はメディアでは顔だしをせず、「れ子」ちゃんという愛らしいクマのキャラクターがビジュアルを担当する。2015年4月29日には初の全国流通盤、1st EP「君のバンド」をリリース。インディーズで経験を積み、今やライブは7、8割を10代女子が占め、少女たちから圧倒的な支持を受けている。「自分はちゃんと曲と歌詞で勝負して、寄り添えるアーティストになりたい」と話すコレサワ。これまでの歩みや楽曲の制作背景、地元愛、家族愛、女子への応援歌についてなど多岐にわたり話を聞いた。

大人と一緒にやることの大事さがわかった

通常盤

――いよいよメジャーデビューですね。

 今のスタッフに出会うまで、4年くらいずっと1人で地下のライブハウスでやっていたんですけれど。体感としては長いという感じではなくて、こんなものかな、と。私のチームは「すぐメジャーに行くより、ちゃんと力をつけてからやらせたい」と考える人たちだったので、いいタイミングだと思いました。

――コレサワさんは高校生の時にオリジナル曲を作り、それでオーディションに受かったのがきっかけだったとか。

 高校3年の夏です。それで上京して2年間、専門学校で学びました。私はYUIさんが好きで。うちらが中学生くらいのときはYUIさんや絢香さんとか、10代のデビューが当たり前で、だから「女の子は10代でデビューできないといけない」と思っていたんですけれど、最近はガラッと変わってきていますよね。20代でデビューしているSSWを見て、「女の子でも、20代後半でデビューできるんだ」とわかって。逆に最近は若いからとフィーチャーされている子はあまりいない。それで年齢は気にしなくなりました。

――今のスタッフに会われたのが大きいそうですが。

 「私の音楽を一緒に広めようとしてくれている人に会いたい」とはずっと思っていました。それで今のマネージャーがライブハウスの人に「最近、いい子いない?」と尋ねて、私のCDをたまたま聴いてくれて、ライブに来てくれることになったんです。でも今まで何も声をかけずに帰ってしまう人が多かったので、またそんな感じかなと思っていたら、ちゃんと「一緒にやろう」みたいな感じで来てくれて。

――それはいつごろのことですか?

 2014年です。「君のバンド」という曲があったから、出会ってすぐに「これ出そうよ」と。それでインディーズで出させてもらいました。やっぱり1人でやっていても、小娘の力だけじゃどうにもならない。大人がちゃんと一緒にやって広めてくれることの大事さも、すごくわかったから。今、もし大人を信じられなくて「1人でやる」と言っている女の子がいたら「でも、いい大人はいるから」と伝えたいです。

 絶対に知恵を出し合って動いた方が、いろいろなことができるし。たとえばマネージャーは私のキャラクターである「れ子ちゃん」の着ぐるみを「作りたい」と言ったら「いいじゃん」と賛成してくれたり。作るには当然お金もかかるんですけれど、そういうことをちゃんと面白がってくれる感性を持った人が今のコレサワの周りにはいるから、うまいこと回っているんじゃないかなと思います。それを「お金がかかるからダメだよ」とかおもしろがってくれなかったらやっていけないな、と思います。

――曲についてはどんなことを言われましたか?

 今までは全員おじさんスタッフだけだったんですけれど、デモができて聴かせたときに、みんなあんまり「ぱっとしない」みたいな顔をされるときもあって。「おじさんだから、わからないんじゃないですか」と切れそうになったりしたときもあったんですけれど(笑)。

 でも逆に女の子の歌を歌って、それをおじさんスタッフが「いい」と言ってくれた曲は、世間に出したときに、女の子も男の子も「いい」って言ってくれるんですよ。アルバム10曲目の「女子諸君」は女の子だけに向けた曲だけれど、スタッフや観に来てくれた男の子とかおじさんも、みんな「良い」と言ってくれたので。それが異性に受けたときは、本当にいい曲なんだな、とは思ったりします。

――今回12曲収録されていますが、どういう基準で選曲しましたか?

 「君のバンド」と「あたしを彼女にしたいなら」はライブでいつもやる曲なので。このデビューアルバムで初めて知ってくれる人がたぶんいると思うから、その人たちにも聴いてほしい曲なので入れました。それ以外は自然と制作のときにできた曲を全部入れたという感じです。

無理を止めたら、女の子が増えていった

コレサワ

――それぞれの曲について伺います。1曲目の「SSW」ではいきなり元カレに対しての宣言が最初に入っています。

 ライブで言っていたんです。それをそのままレコーディングのときにも言ったら、「いいじゃん」みたいな感じで。なので、入れちゃいました。

――すべてのマイナスのことに対してもへこまない、コレサワさんのスピリットを感じます。

 ああ、ポジティブですね。自分は暗い歌や病んで終わる歌より、前向きな歌の方が聴きたいと思うので。そういう歌を歌っていたい、というのはあります。

――以前、本名で活動していたときはダークな歌を歌っていたそうで。

 10代とか、アーティスティックに憧れがちな時期があるじゃないですか。ちょっとよくわからないけれど、幻想的なことを歌っていたらかっこいいかな、的なことはありました。でもそういうときは、全然お客さんもつかなくて。だからカッコつけるのを止めて。自分のこの、わがままポジティブガールを全面的におしていった方が楽だし、作らなくていいし。

 私は好き勝手していいアーティストになりたかったので。清楚とか、じっとしているとかは無理だから、そういうのをやっても許されるアーティストになりたいので、そこは貫きたいんです。

――では、当時は外見も違っていたのでしょうか。

 ワンピースとかも違いましたね。もうちょっと森ガール的な感じ。顔もその時期は隠そうとは思っていなかったし。でも写真とか撮られるのが嫌いだったのに無理していたから、「写真を撮らないでください」みたいな感じで1回撮らせるのを止めたら、写真を撮りたかった人は自然にひいていって。

 そこから1回リセットされて、「君のバンド」が生まれたときくらいから、ステージでもいつもみたいな感じでワーワーしゃべるようになりました。そうしたら女の子が聴いてくれるようになっていったんです。MVを作ってもらったのが一番大きいと思うんですけれど、女の子のお客さんがちょっとずつ増えてきたのが、たぶんそのときだと思います。

――正直、女性アーティストはまず男性ファンがついて、その後どうやって女の子のファンを増やしていくか、というのが課題だと思うんですけれど。コレサワさんの場合、何が要因で女性のお客さんが増えていったと思いますか?

 「あたしを彼女にしたいなら」のあたりで女の子が増えてきたのもあるんですけれど。女の子も待っているだけじゃダメだし、私は肉食系女子だと思うんですけれど。それを素直に歌ったら共感してくれる人がいっぱいいて。「男がすべてじゃない」と思っている感じです。でも男の子に好かれたいし、本当は嫌われたくない。だから嫌な自分を最初に見せておいた方が、付き合ったあととかも楽かな、と。

 そうやって傷つきたくないから伏線をはる、というところに気づいてほしくて歌っていたら、男の子が「キュンキュンした」とか言ってくれたり、女の子が共感してくれたり。それで「ただ女の子が歌っているのが好き」という人たちが離れていって、本当に音楽が好きな人が来てくれたのかなというのは、すごくありました。

――今回のアルバムには、コレサワさんの地元愛、家族愛、女子への応援歌といったいろいろな切り口の曲があって。その中でもコレサワさんの地元に対する愛は、2曲目の「死ぬこと以外かすり傷」にも込められています。

 これは本当に大阪の、今でも唯一ずっと連絡を取り合っているグループがあって。軽音部で一緒だったメンバーなんですけれど。そのメンバーと学生のころはバンドを組んでいて、今でも仲がいいから、その子たちが喜んでくれる1曲になればいいなと思って作りました。

――軽音のメンバーは何人くらいだったんですか?

 同期は20人。他の学校に比べたら少なかったです。そんなに人数がいないから、みんな顔見知りで。ギターボーカルのバンドと、ドラムのバンドがあって。その2つのメンバーとは今も仲いいです。

――ドラムもやっていたんですか?

 中学校のときは吹奏楽部でパーカッションだったので、「叩けるよね?」みたいな感じで入れられてサポートをやっていました。コーラスするのが好きだから、コーラスができる喜びをかみしめて(笑)。メインだとコーラスができないので。

実はコーラスのレコーディングが1番楽しい

コレサワ

――もう1つの地元愛は9曲目の「阪急電車と2DK」。これはかわいい曲です。

 かわいいですよね。阪急電車はずっと使っていたし、一番好きな電車だから、阪急電車の曲は作りたいと思っていて。あと、私はずっと2DKの狭い家で弟とお母さんと3人で住んでいたので、2DKという歌も作りたいな、と思って。タイトルだけ最初に決まって、あとサビは決まっていたんですけれど。女の子が好きな人に地元を見せたいな、というストーリーになりました。

――阪急電車はどんなところがかわいいんですか。

 まず電車の外見があずき色一色なんですよ。アルバムジャケットに載っている電車もこの色になっています。それで中のシートが苔の色。

――苔!?

 本当に苔が生えている、みたいな。中も木目の壁紙です。東京の電車ってきれいすぎるし、やけに明るいな、と思って。阪急電車はやっぱり壁が木の色だから、落ち着くんですよ。苔も落ち着くし、赤とか緑とか青じゃなくて、あずき色1色ってすごいなと思います。

――この曲を聴いたら絶対、阪急電車に乗りたくなります。

 これでぜひみんな阪急電車に乗りに行ってほしいです(笑)、大阪の人が聴かないと、わからないこともあるので。まだライブでも東京で歌ったことはないです。たぶんこれの良さは東京の人が聴いてもわからないのかなと、ちょっと怖くてライブでは大阪でしかまだ歌っていなくて。

――編曲はGOOD BYE APRILが担当したそうですね。

 ベースのえんちゃん(延本文音)が唯一女の子なんですけれど、えんちゃんとヒグチアイちゃんと、私と、あともう1人女の子がいまして、その4人で古着屋さんをよく探索しています。定期的に報告会みたいな感じで集まったりとかしている仲で、この曲ができたときに、もうGOOD BYE APRILの演奏で頭の中に流れてきたから、これは一緒にやりたいと思って頼んだら、快く引き受けてくれました。

――どんなリクエストをしました?

 いつものGOOD BYE APRILでやってくださいと。倉品(翔)くん(Vo、Gt、Key)にお願いして。コードも倉品くんが、いろいろ好きに変えてくれたんです。コーラスも絶対GOOD BYE APRILに入れてほしいと思っていたので。

――コーラスが印象に残る曲です。

 GOOD BYE APRILは楽曲にコーラスがいつもすごく入っているんです。それにあこがれていて。うちは1人やから、サポートメンバーにお願いする曲もあるんですけれど、毎回していたら大変やから、できなくて。だからこれはすごく好きです。

――コーラスが好きな原点には、何かあるのでしょうか。

 ハモるのが好きで、小学校くらいからずっとコマーシャルとかテレビで流れた音楽とかに、つねにハモっていました。それが1つの遊びみたいな。気持ちいいじゃないですか。音がぴったり合って。だからハモりたいんです。レコーディングでも、コーラスのレコーディングが1番楽しくて。

――先ほどご家族のお話が出ましたけれど、ご家族がテーマの曲もありますね。7曲目の「お姉ちゃんにだけ部屋があったことまだ恨んでるのかな」とか。

 これはすぐ書けました。実家に帰ったときに、弟の部屋が隣なんです。私はお母さんの部屋にいて。「俺の友だちが来るから、お前は出てこないでくれ。しゃべらないでくれ。俺には、お姉ちゃんおらんことになっている。1人っ子ってことになっているから」と言われて。

 悲しいんですけれど、やっぱりそういう扱いなんだと。まあ働いてもないし、就職してないし。そう言われてから部屋に行ったときに、もうこのサビが頭に流れて。

――弟って結構キツイこと言いますよね。

 私が働いていないから。「売れていないのは働いていないのと一緒だ」という弟の考えがあるので。その審査にはまだ通らないんです。

――メジャーデビューしてもダメ?

 売れてないとダメです。弟はSEKAI NO OWARIさんが好きだから、日産スタジアムができるくらいにならないと、認めてくれないかな。

――厳しい(苦笑)。どのくらい歳は離れていますか。

 2つ下です。だから喧嘩します。殴り合いもしたし、おもちゃも捨てちゃったし。だからそりゃ私のこと嫌いだよな、みたいな。でもそういう距離感は私的には楽だし、ちゃんと弟が就職してくれたので「あ、もう安心」と。こんなお姉ちゃんを見て、ちゃんとしたんだと思います。

――でも弟さんのこと好きなんですね。

 大好きなんですよ。かわいいところもあるから、受験のときにお守りを買ってあげたんですけれど、「いらない」みたに言いながら、受験の日にちゃんとカバンに入れていたとお母さんに聴いて、うれしかったですね。いいやつなんですよ。だから歌にできますけれど。本当に嫌いだったら、歌にしないです。

――いい話ですね。そして弟さんとの間に入ってくれるのはお母さんなんですか。

 お母さんと弟は仲良しだし、よくプロレスを観に東京に来ています。お母さんと弟がプロレス好きで。私は、格闘技は無理ですけれど。ずっと家でもプロレス中継観て盛り上がっていました。

――そんなお母さんに向けて<心配なんかしなくていいのさ>と歌った曲が11曲目の「24歳」。

 24歳のときには、お母さんが私を産んだので、その年に自分がなったときに、今は子ども産めないな、と思ったし、好きなことが全然できないじゃないですか。両立はちょっと難しいな、みたいな。それでお母さんに対して手紙書くみたいに歌っていったら、出来ました。

曲と歌詞で勝負するアーティストに

コレサワ

――最後がしっとり始まりながら、次第にエモーショナルになる曲「これから」です。

 「これから」という曲があっての、『コレカラー』というタイトルです。いろいろ歌っているけれど、私のメジャーに向けての決意というか。いろいろなアーティストが今、いるじゃないですか。盛り上がる音楽をやっている人もいるし、ダンスがカッコいい音楽をやっている人もいるし、歌がすごくうまい人もいる。

 その中で自分はちゃんと曲と歌詞で勝負して、寄り添えるアーティストになりたい、という決意の歌です。だからこれは1番大事というか。この曲までしっかり聴いてほしいなと。

――ライブは写真を撮るところじゃなくて、歌でしょう?というコレサワさんの姿勢が、まさに出ていますよね。

 見た目とかで来てくれるよりは、音楽の中身を知ってもらって、ライブに来てほしいので、顔もビジュアルでは勝負してない。まあ、れ子ちゃんでは勝負していますけれど(笑)。自分自身の人間のビジュアルはもうどうでもよくて。

――感情を揺さぶるようなアレンジもすばらしい。

 ずっとフジファブリックは聴いていて。「なんで金澤(ダイスケ)さんのピアノは、こんなにワクワクするんだろう」と思っていました。いつかは絶対一緒にやってほしいな、と思っていたんですけれど、バンドの方ってなかなかプロデュースとかされないかな、と。でも今回メジャーデビューですし、思い切ってお願いしたらすぐ引き受けてくれて。「ミュージシャンも最高のメンバーを集めたから」と言ってくれて、本当に楽しかったし、また違ったレコーディングができました。

――すごいバンドメンバー(Drums:あらきゆうこ、Bass:佐藤征史、Electric Guitar:名越由貴夫、Keyboard:金澤ダイスケ)ですよね。

 そうなんですよ。みんなすごいって言っていて、うちのディレクターもテンションが上がっていて。でもみんなが言うすごいと、うちが思うすごいは違う。どういう人たちかは、見てからじゃないとわからない、と思っていたら、あ、もうすごいなって。レコーディングですぐわかりました。

――コレサワさんは他の人の意見に左右されるのではなく、自分がどう思うかをとても大事にしています。

 芸術をやるなら自分に従うのが1番なので。それができなくて悩む人も多いと思うんですけれど。誰かに何かを言われたり嫌われようが、自分でいいか悪いかを判断できる、強い女の子になりたいという願いもあるし。そういうのができない女の子たちがうちの音楽を聴いて、決断できるようになってほしい、というのもあります。それまで結構ふざけた曲もあるけれど、最後の「これから」を聴いて私が伝えたいことをわかってくれたらうれしいです。

――これからの目標は?

 「ライブで空を飛びたいから、大きいところでやりたい」といつも言うんですけれど(笑)。やっぱりメジャーに行くからには、うちのことを嫌いと思う人や興味のない人にも、自然に耳に届いちゃう、覚えちゃうくらいのところには行きたいです。強がりというか、挑発的な歌も多いんですけれど。逆にアンチが増えるくらいがちょうどいいかな、みたいな。ライブにいっぱい皆が来てくれて、空を飛ぶ演出ができるくらいになるのが目標ですね。

(取材=桂泉晴名)

作品情報

コレサワ
1st Album「コレカラー」
2017年8月9日発売

■初回限定盤:CD+DVD(コレカラーキラキラケース仕様) 3333円+税 CRCP-40521

■通常盤:CD 2778円+税 CRCP-40522


<CD収録内容>
1.SSW
2.死ぬこと以外かすり傷
3.君のバンド
4.あたしを彼女にしたいなら
5.たばこ
6.失恋ソングを歌ったあとに
7.お姉ちゃんにだけ部屋があったことまだ恨んでるのかな
8.君とインドカレー
9.阪急電車と2DK
10.女子諸君
11.24歳
12.これから



<初回限定盤DVD収録内容>
●「SSW」MUSIC VIDEO
●「たばこ」MUSIC VIDEO
●「あたしを彼女にしたいなら」MUSIC VIDEO
●「君のバンド」MUSIC VIDEO
●「J-POP」(LIVE)(2017年2月5日 コレサワ ワンマンショー「コレシアター03」にて収録)
●「最終電車」(LIVE)(2017年2月5日 コレサワ ワンマンショー「コレシアター03」にて収録)
●「コレサワの超難関ジェスチャークイズ」

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