ドラマ主題歌の常識を覆したい、夜の本気ダンス 有意義なコラボ
INTERVIEW

ドラマ主題歌の常識を覆したい、夜の本気ダンス 有意義なコラボ


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年08月09日

読了時間:約11分

「ドラマ主題歌の常識を覆したい」と語る夜の本気ダンス(撮影=榑林史章)

 4人組ロックバンドの夜の本気ダンスが8月9日に、メジャー3rdシングル「TAKE MY HAND」をリリース。2008年に京都で結成。現在は米田貴紀(Vo、Gt)、鈴鹿秋斗(Dr)、マイケル(Ba)、西田一紀(Gt)で活動している。“踊れるロック”を標榜して活動をおこない、昨年アルバム『DANCEABLE』でメジャーデビュー。今作の表題曲「TAKE MY HAND」は、女優の真木よう子が主演するフジテレビ系木曜劇場『セシルのもくろみ』の主題歌として話題にもなっている。ドラマプロデューサーのラブコールに応え「曲ができて“はい終わり”ではない、有意義なコラボができた」と話す。80年代の英国ロックに多大な影響を受けたという彼らが、そのオマージュとして制作に取り組んだという今作。今回の制作を経て彼らが得たものとは?

定番をハズして狙いに行く姿勢に共感

米田貴紀

―――『セシルのもくろみ』は、モデル業界を舞台にして、華やかさがありつつライバル同士のバチバチした感じや、スポ根のような熱さもあります。そこに夜ダンのエキセントリックな楽曲が、ぴったりだと思いました。

米田貴紀 『セシルのもくろみ』というドラマと僕ら、という組み合わせを考えたプロデューサーのセンスがすごいです。女性が主役のドラマなので、主題歌も女性シンガーを起用したほうが自然だと思いますが、それを敢えてハズして狙いに行くような。そういう攻める姿勢に共感して、僕らも期待にしっかり応えたいと思いました。

――ドラマのエンディングでは、みなさんの曲に合わせて、主演の真木よう子さんが踊るという場面も。

鈴鹿秋斗 ドラマ制作側の想いと僕らアーティスト側の想いという、お互いの想いが合致した1曲になりました。エンディングの映像を見ても、僕らの曲を大事に使ってくれていると感じました。ドラマも曲も良い作品になって、まさしく“ウィン・ウィン”という言葉がぴったりだと思います。

西田一紀 曲ができて「はい終わり!」ではなくて、エンディング映像は、真木さんの後ろで僕らが演奏しているバージョンもあって、ドラマを一緒に作らせてもらえた感覚がありました。ドラマ制作側の熱意も感じましたし、すごく有意義なコラボができたと思います。

――「TAKE MY HAND」は、ハイスピードでテンションの高い楽曲ですが、最初にどんなイメージで作っていったのですか?

米田貴紀 曲自体は、そもそも夏フェスに向けてライブで盛り上がる楽曲をと思って、作り始めていました。そこへドラマとのタイアップの話が来て。プロデューサーの「ドラマ主題歌の常識を覆したい」という想いや、昨年のメジャー1stシングル「Without You/LIBERTY」から僕らのファンであることなど話を聞いて、その上で楽曲をブラッシュアップさせていきました。

 ドラマ側からの要望は「普段の僕らがライブでやっているような曲を」というものだったので、変に頭でっかちになるよりは、ノリや勢いを大事にしようと思って。リハスタ(リハーサルスタジオ)でジャムっているうちに自然と生まれたアイデアを、みんなで形にした感じです。

マイケル みんな結構バラバラなことをやっているのですが、全員の理解として“気持ちの良いリズム”が一致していたので、よりリズムのかっこよさが際だった曲になったと思います。

――サウンドは、結構シンプルに感じました。

西田一紀 一つひとつのフレーズ自体は際立つものを出しているのですが、それが全体で折り重なった時に、良いアンサンブルを生んでいると思います。

米田貴紀 今回は、僕らがもともと持っている得意としたものを素直に出すことが大切だったので、思考する時間が少なくてもアイデアがポンポンと沸いて来て。シンプルに感じていただけたのは、変に悩まずテンポ良く作れた結果だと思います。

――全体を通したハイテンション感がキーとなる曲ですね。

米田貴紀 カウントから始まって最初のギターが鳴った瞬間から、曲のテンションがピークになり、最後までテンションをキープして終わるような感じです。段階を経て徐々に盛り上がるのではなくて、最初から最後まで気持ちがアガったままの曲です。

マイケル 僕らのライブ自体、最初からテンション高く、最後までそのテンションで突っ走るものなので、それを1曲に集約した感じだと思います。

――テンポがけっこう速くて、演奏は大変ではないですか?

マイケル テンポ(BPM)は、実は意外と遅くて(笑)。

鈴鹿秋斗

鈴鹿秋斗 ドラムとベースはけっこう細かくせわしない感じで演奏していますが、そこに乗って来るギターの効果で、BPMは遅いのですが、疾走感が出るようになっています。

米田貴紀 詳しく話すと、「TAKE MY HAND」はBPM150で、ビートを16分音符で打っています。逆に「WHERE?」という曲は、BPM180ですがビートは4分音符で打っていて。この2曲を比べると、BPMは「WHERE?」のほうが速いのに、体感的には16分音符で打っている「TAKE MY HAND」のほうが速く感じますよね。

――タイトルの「TAKE MY HAND」は、どこから?

米田貴紀 サビの最後で<take my hand(手を取って)>と歌っていて、ジャムっているときに、そこだけパッと浮かんで自然と歌っていました。それで、その歌詞から取って付けました。

 僕の中では、「TAKE MY HAND」という曲名自体、ニューウェーブ(1980年代に英国で流行したロックのジャンル)っぽいなと思っていて。そこに引っ張られるようにして、曲も歌詞も出来たところがあります。ドラマの熱い部分とも上手く合致したタイトルになったと思います。

――とてもおしゃれでかっこよくて、インパクトのある曲ですね。

米田貴紀 流行とはまた違った部分で、踊れるロックを今回聴かせることができたと思います。今これを聴いている高校生や学生が、この曲から影響を受けて、自分たちでもバンドを組んでチャレンジしてくれるようになったら嬉しいです。

ダンスフロアでピークを迎えた気持ち良さ

マイケル

――カップリング曲「This is pop (new mix) 」も、ニューウェーブのような独特なポップ感を持った曲ですね。

鈴鹿秋斗 6年くらい前からあって、2013年の1stミニアルバム『ヤングアダルト』に収録していた曲です。今のメンバーで、もう一度音源として残したいと思って収録しました。

マイケル ライブでやるごとに、どんどん音源とは変わったアレンジになっていて。ライブでやって来たことを反映させていますね。

米田貴紀 インディーズの時から来てくれているお客さんで、「この曲が好き」と言ってくれる方は多くて、「ライブでもっとやって欲しい」という声もたくさんあって。表題曲がドラマ主題歌で、僕らの勝負作だと思うので、このタイミングで初期の僕らのことも知ってほしいと思ったことも収録理由の一つです。

――西田さんは、新しくギターフレーズを考えたり?

西田一紀 この曲に関しては、ギターはもう完成されていると思ったので、基本的にはそのままです。でも多少ニュアンスが違うところがあるので、昔の音源を持っている方は、それと聴き比べてもらえたら面白いと思います。

――1980年代ロックへの熱い想いが現れていますね。

米田貴紀 曲名は、80年代を中心に活躍した英国のロックバンド=XTCの「This Is Pop」から取って付けています。僕自身が、80年代のポストパンクやニューウェーブから多大な影響を受けているので、それらに対するオマージュといった感じで作りました。80年代オマージュの精神は、「TAKE MY HAND」でも反映されているし、今作のジャケットデザインも当時のニューウェーブバンドっぽいものになっています。

――3曲目に収録の「HONKI DANCE TIME」は、ライブ音源を何曲もノンストップで繋いでいて、これだけで22分もありますね。

西田一紀

米田貴紀 尺で言ったら、このシングルだけでアルバムくらいのボリュームがありますね(笑)。前のシングルではライブDVDを付けたので、今回は音源で僕らのライブを体験してほしいと思いました。

――実際のライブもノンストップで?

米田貴紀 そうです。DJが曲をノンストップで繋いでいくような感覚で、ビートが途切れないようにバンドでも表現しています。元々そういうライブをやりたいと思ったきっかけが、2012年に解散したDOPING PANDAというバンドのライブを見たことです。

 「the mugendai dance time」という曲があって。ライブでは、ビートを止めることなく曲を演奏し続ける、まさしくノンストップのステージをやっていて。それを見て、かっこいいなと思って、自分たちでも採り入れるようになりました。

――メンバーもお客さんも、水を飲む暇もないですよね。

鈴鹿秋斗 ないです(笑)。

米田貴紀 やるほうもそうですが、見るほうがずっと踊っていて大変かもしれないです。たまに客席を見て、「ちょっとしんどそうだな〜」と感じるときもありますが、その苦しさを一緒に乗り越えた時の感覚は、ランナーズハイと言うか、クラブのダンスフロアでピークを迎えた時の気持ち良さと通じると思いますね。

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