イトヲカシ「全部がひとつながり」全公演が特別だったツアーに幕
全国ワンマンツアー『イトヲカシ second one-man tour2017』のもよう(撮影=田中聖太郎)
2人組音楽ユニットのイトヲカシが16日に、東京・Zepp Tokyoで全国ワンマンツアー『イトヲカシ second one-man tour2017』のファイナル公演をおこなった。4月29日の函館クラブココアを皮切りに全16公演をおこなうというもの。6月21日にリリースされた1stフルアルバム『中央突破』の楽曲もツアー前半から披露し、“伝える”をテーマに展開。「全公演が特別で思い出に溢れたツアーになりました。全部がひとつながりだと思います」とツアーを振り返り、アルバム曲を中心に新曲「アイスクリーム」や「アイオライト」も初披露。アンコール含め全16曲を熱演し、ツアーを有終の美で締めた。
やっぱり東京は故郷
BGMにTHE YELLOW MONKEYの楽曲が流れるなか、フロアには水色のタオルを肩にかけ開演を待ちわびるオーディエンスの姿。定刻を少々過ぎたところで、BGMの音量が上がり暗転すると、SEをバックにバンドメンバー、そのあとにゆっくりと伊東歌詞太郎(Vo)と宮田“レフティ”リョウ(Ba、Gt、Key)がステージに登場した。
アルバム『中央突破』でオープニングを飾る「スタートライン」で、ツアーファイナルの幕は開けた。ここから何かが始まる予感を感じさせるような、大地を踏みしめる力強さのミディアムナンバーで席巻。徐々にギアを上げていくかのように「東方見聞ROCK」、準備運動は終わりとも言わんばかりに、アップチューンの「カナデアイ」でギアをトップに入れ、宮田の躍動感のあるベースフレーズとパフォーマンス、伊東もハンドマイクで熱量を直接注ぎ込んでいく。それに呼応するかのようにオーディエンスもクラップで一体感を作り出す。
ここで1回目のMC。「やっぱり東京は故郷なんですよ。各地で大好きなものを見つけてきたのですが、故郷ということで大切な場所だと思っています。今日皆さんにも東京を好きになってもらえるようなライブをしていきたい」と本日のライブの意気込みを述べた。
MCに続いて8月9日に配信が決定しているテレビ東京 木ドラ25『さぼリーマン甘太朗』エンディングテーマの「アイスクリーム」をライブ初披露。どこか切なさを感じさせるメロディに、伊東の清涼感のある歌で魅了していく。新曲でも過去曲でも同じ熱量で伝えたいというスタンスを強く感じさせるパフォーマンス。
さらにメッセージを届けるべくミディアムバラードナンバーの「あなたが好き」へ。前半はピアノと歌のみで言葉をより鮮明に聴かせ、徐々にバンドサウンドで広がりを与えながら、感情を解放していくかのような圧巻の歌声が、聴くものの感情を揺さぶっていく。そして、伊東が大きく呼吸をし「ヒトリノセカイ」へ。無数のライトが伊東を照らす。歌とサウンドの絶妙なバランス感覚で、オーディエンスに感情というシャワーを浴びせていく。
MCではこのツアーの思い出を語った。伊東は初日の函館で桜を見にいったが、まだ一分咲きだった話や、宮田は伊東とサポートメンバーたちが丈が胸ぐらいまでしかないMA-1(ジャンパー)を現地で購入し、着用していたことなどを明かした。函館編で盛り上がってしまい他の公演での話ができなくなってしまうほど、1公演ごとに充実していたことが伝わってきたMCだった。
「みんなに対する応援歌です」と投げかけ、“キットカット“受験生応援キャンペーンと河合塾2017年CMタイアップソングに選ばれた「さいごまで」。どこまでもポジティブにさせてくれる、背中を押してくれるような感覚が会場全体を包み込み、オーディエンスとのシンガロングが盛大に響き渡った「トワイライト」へと続く。頭上で輝くミラーボールは、楽曲の世界観をさらに際立たせ、音と光のシナジーで魅了していく。
「みんなで拳をあげようぜ!」とMUSIC B.Bオープニングテーマ「ドンマイ!!」に突入。どこまでもポジティブでエネルギッシュなサウンドで会場を旋風していく。途中、ツアーで毎回おこなっていたという「毎日ドンマイ」と名付けられたコーナーへ。今まではサポートメンバーによる“ドンマイトーク”を展開していたが、今回はファイナルということで伊東と宮田の二人のトーク。
宮田は右耳が聞こえなくなったことを話し、不安になり耳鼻科に訪れたところ、大きな“何か”が耳から出てきたと報告。それが取れたことにより無事に耳は聞こえるようになったという“ドンマイトーク“で驚かせ、伊東は高校時代にドイツに留学してしまう友人に1万円を貸したが、なかなか返って来ず、何とかドイツに行く前に返してもらうことに成功。封筒を開けるとなぜかユーロ貨幣。しょうがなく銀行で換金したところ、レートの関係で6000円だったという”ドンマイトーク”で音以外でも楽しませてくれた。
全部がひとつながり
ライブは後半戦に突入。この時期にぴったりで既に定番化しているナンバー「SUMMER LOVER」では、日本のライブの風物詩といっても過言ではない、タオル回しでフロアは埋め尽くされた。このよくある光景でもイトヲカシの優しさが滲み出る。グッズのタオルを持っていない人のことも考慮して、サポートメンバー含め、ステージ上は黒の無地タオルを回すという配慮。伊東も「拳でもいいよ! 自由に楽しんで」と投げかけた。
メジャーデビュー曲の「スターダスト」では、伊東は昂ぶった感情を吐き出すように、荒々しいロックな一面を垣間見せた。本編ラストは「Thank you so much!!」に突入。躍動感あふれるビートに合わせ、フロアは掲げた腕を振り子のように左右に振り、美しさを感じさせる一体感のある光景を観せ、感謝の念が会場を包み込むなか、2人はステージを後にした。
アンコールを求める声に再びステージに登場したイトヲカシとサポートメンバー。「僕らはチャレンジすることが好き」と告げ、大歓声が巻き起こるなか、映画『氷菓』の主題歌に決定している新曲「アイオライト」を初披露。今までのサウンドとは一味違うアップチューンで、オーディエンスもじっくりとサウンドを聴きながらも体を揺らす。
伊東は「ファイナルだけど今日が特別というわけではなく、全公演が特別で思い出に溢れたツアーになりました。全部がひとつながりだと思います。いつも会いたいです。目の前に幕がある日もない日もあるけど、前を向いた時にあなたがいてくれるからライブが出来ると思います。今があるのは昔があるから...絶対に忘れない。繋がっているパズルのピースのようにいつだって会いたい」と想いを伝え、ラストは宮田によるピアノ伴奏で、バラードナンバー「パズル」を届けた。
優しく語りかけるような伊東の歌と、その歌に寄り添うような宮田のピアノ。時が止まったかのような静寂の空間に、2人の想いが降り注そいだ。このツアーのエピローグとなるような演奏で、『イトヲカシ second one-man tour2017』は大団円を迎えた。
(取材=村上順一)
セットリスト
イトヲカシ second one-man tour2017
7月16日 東京・Zepp Tokyo 01.スタートライン ENCORE EN1.アイオライト |