自由さのなかで深化させたストリングス、THE ALFEEの今の象徴
INTERVIEW

自由さのなかで深化させたストリングス、THE ALFEEの今の象徴


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年05月24日

読了時間:約21分

 来年結成45年を迎えるTHE ALFEEが5月24日に、通算66枚目となるシングル「あなたに贈る愛の歌」をリリースする。今作は「THE ALFEE meets The KanLeKeeZ」と銘を打ち、カップリングに昨年ミニアルバムをリリースしたThe KanLeKeeZの新曲「エレキな恋人」も収録。「あなたに贈る愛の歌」は高見沢俊彦が、指揮者の西本智実氏とおこなった『INNOVATION CLASSICS』からインスパイアを受けて制作。壮大なストリングスのもと“愛”を綴った。今回は高見沢、坂崎幸之助、桜井 賢の3氏にインタビュー。レコーディング秘話からグループサウンズの魅力、ムッシュかまやつさんへの想い、そして、現在も数多くのライブをおこなうバイタリティの秘密などを聞いた。

ムッシュの意思は継ぐ

――前作「今日のつづきが未来になる」で50作品連続オリコンチャートトップ10入りという記録を果しました。もちろん今作も確実ですね。

高見沢俊彦 いやいや、楽観はしていません(笑)。

――50作品連続を達成して、今作「あなたに贈る愛の歌」では新たな気持ちで臨まれたという想いも?

高見沢俊彦 それはあります。シングルでは毎回そういう気持ちです。去年出した「今日のつづきが未来になる」が今のALFEEを象徴する曲だったので、それに続くシングルというのは意識しました。今回はいい意味で“タイアップに縛られない”という自由さが良かったかも知れませんね。今、自分達が歌いたい曲というものを素直に出せましたからね。今回は久々のバラードで、しかも愛の歌です。

――制作の流れは、高見沢さんが一度全部を作って、桜井さんと坂崎さんに聴かせるというスタイルでしょうか?

高見沢俊彦 そういう場合もありますけど、今回は時間が無かったので突然でした(笑)。僕は指揮者の西本智実さんと『INNOVATION CLASSICS』2年ぐらいやってきて、あらためてクラシックの良さを再認識したんですよ。その時に、弦のイメージやストリングスのイメージはTHE ALFEEに凄く合うなと思って・・・今回はそういう部分をTHE ALFEEに活かしたいという願望から生まれた楽曲なんです。

――願望だったのですね。

高見沢俊彦 そうです。願望を実現させるのは大変だけど、やりがいはありますからね。

あなたに贈る愛の歌(初回限定盤A)

――制作前に3人で打合せはするのでしょうか?

高見沢俊彦 それは殆どないですね。このシステムでずっと一緒にやって来たという信頼のもと、そこは“制作部”に一任されていますから、間違いのないものをお出しするようにと、常日頃心がけております(笑)。

坂崎幸之助 とんでもない曲が出てこない限りThe Alfeeは大丈夫です(笑)。

――今まででとんでもない曲はありました?

坂崎幸之助 ないですね。とんでもなくても“面白いとんでもなさ”とかそういう感じです。1983年にアコースティックっぽいAlfeeからハードロックなALFEEになった時もとんでもなく面白い事になったと思いましたからね(笑)。

――イメージをガラッと変えてきたという印象がありました。

坂崎幸之助 一般的にはそうだと思うんですけど、僕らの中では流れがあったんです。ライブハウス時代はけっこうハードロックっぽい事もやっていたので「今回はそういう感じ行こう」みたいな感じでした。

高見沢俊彦 イメージ的に色んな音楽をやるという事は、この間お別れ会をやった、かまやつひろし(ムッシュかまやつ)さんの影響だと思います。ムッシュもGS(グループサウンズ)から始まってロックをやって、フォークやジャズや、音楽的に幅広い方でしたからね。僕らも若い頃にムッシュのバックでやって色々学びました。これからも、音楽の幅広さという点では、ムッシュのDNAを引き継いで行こうと思っています。

――かまやつさんくらいの方になると、ツアーではリハも途中からやらなくなってくるみたいですね。

高見沢俊彦 毎回ではないですが、やらない時もありました。一緒に遊園地に行ったり熊本城へ行ったりと観光していました(笑)。

坂崎幸之助 その時々で曲順が変わっちゃう時もありましたね。

――それはけっこう怖いですよね?

坂崎幸之助 それに対応していくのに、それなりの心構えが必要ですからね。最初は戸惑いましたけど、でもそれって、その時のお客さんの反応とか感じて、曲を入れ替えるんですよね。実際に後ろで演奏をして色んな事が学べました。

高見沢俊彦 だから僕らはライブツアーをやめられないんですよ。反応を直に感じるのはライブ以外にないですからね。

3人で歌える部分が必ずあればそこがTHE ALFEE

――今回は最初からラブソングにしようと?

高見沢俊彦 ラブソングの王道を目指しました。さっきも言ったように『INNOVATION CLASSICS』の影響で、かなりクラシック要素を取り入れましたから。これほどストリングスを全面に出したシングルは初めてですね。

――皆さんのキャリアの中からしたら普通なのかもしれませんが、ロックをやったり、クラシックの要素が入ったアレンジというのは、弾くにあたって全然違いますか?

高見沢俊彦 僕らはそれぞれ、長いキャリアの中で経験だけは。誰にも負けないぐらいやってきましたら、ある意味どんな音楽でも大丈夫なんです。だから、そんなに違和感はありませんでした。個人的には『INNOVATION CLASSICS』の影響は大きいですが、ALFEEとしても、以前『ALFEE Classics』というアルバムを作っていますからね

――今作での聴きどころは?

高見沢俊彦 僕の場合はシングルにしてはギターの歪みが少ないというか。ほぼない(笑)。

――とてもクリーンなサウンドですよね。セミアコースティックギターなどを使用したのでしょうか?

高見沢俊彦 あれはストラトかな? レスポールだったっけな。

桜井 賢 全然違うじゃん(笑)。

高見沢俊彦 多分、イントロ部分はフロントピックアップのクリーントーンですね(笑)。

「あなたに贈る愛の歌」プロモーション映像

――ロングトーンのギターソロはストリングスとのユニゾンでしたね。

高見沢俊彦 ストリングスと同じラインを弾くというのも気持ちのいいものですよ。

――ごまかしがきかないですよね。高見沢さんのギターソロといったら、たたみかける様なアプローチというイメージがあります。

高見沢俊彦 それを自分の中で封印して、アドリブはなしで全部決めたフレーズを弾いているんです。

――坂崎さんのプレイも今回はそうですか?

坂崎幸之助 アコギもそうですね。決めた事を弾いています。

高見沢俊彦 しかもガットギターだからね。

坂崎幸之助 60万円で買ったガットギターなんです。200円のカスタネットを買いに行った時に衝動買いしちゃって。クロサワ楽器に行った時に「そういえばレコーディングで使えるガットギター持ってないな」と思って。もともとクロサワ楽器ってクラシックギターが専門で。

高見沢俊彦 そうなの?

坂崎幸之助 今はMartinの代理店をやっているんだけどね。もともとはガットギターとかなんだよ。それでガットギターの良いのがあるなと思って店に入って弾いて「レコーディングでも使えるな」と気に入って買いました。

高見沢俊彦 それで今回やっと活かせたと。

――今まで出番が無かったんですね?

坂崎幸之助 そうそう。エレクトリックではなくて、生のクラシックギターはラインで音が出せないので、ライブで使えなくて。今回のレコーディングでようやく出番がきた(笑)。

――それでは今作の聴き所でもありますね。

坂崎幸之助 そうです。今回はほとんど単音で、アルペジオや普段の自分の手癖などは出さずにという感じでした。今までは「ギターサウンドのバックにストリングス」という感じでしたが、今回はそれが逆の「ストリングスの中のギター」という感じなので、控えめに、だけど譜面通りというように弾きました。

高見沢俊彦 僕らの場合はコーラスがメインなので、3人で歌える部分が必ずあればそこがTHE ALFEEですから、3声のコーラスを活かすという事がメインです。楽器を前に出すバンドではないですから、3人のボーカルが活きるものを目指したいですね。

――それはこれまでずっと変わらない事でしょうか?

高見沢俊彦 そうですね。サウンドはアコースティックなものからエレクトリックなものまでたくさんありますけど、歌を3人で歌うという事は絶対変わらないですからね。

――極端な話、アカペラでも?

高見沢俊彦 もちろん! アカペラでやった事もありますし。

坂崎幸之助 ハードな曲をアコギだけでやったりね。僕らがよく言っているのは「アレンジや楽器は洋服」という事なんです。いくらでも着替えられる。裸にした場合が3人のコーラスというわけです。

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