HOTSQUALL

 昨年はHi-STANDARDの“ゲリラリリース”もあり、改めて多くの視線が注がれているのがインディーズ・シーン。近年という括りで考えても、WANIMAや04 Limited Sazabysのようにそこから飛び出してきたバンドは枚挙にいとまがないが、とりわけメロディックパンクと言われるシーンで着実に光を放ち続けているHOTSQUALL(ホットスコール)にも注目したい。

 まずは簡単にプロフィールを紹介しよう。1998年に千葉で結成し、2005年に1stフルアルバム『YURIAH』をリリース、1万枚という新人としては驚異的なセールスを記録。その後もマキシマム ザ ホルモンやKen Yokoyamaといった一筋縄ではいかないバンドのツアーサポートや、『京都大作戦』や『百万石音楽祭』といったフェスにも出演する等、順調にキャリアを重ね、これまでに4枚のフルアルバム、4枚のミニアルバムを発表。インディーズ・シーンでは欠かせない重要バンドになっている。

 彼らが支持を集める要素には、メンバー全員が敬愛していると公言して止まない、The Beatlesをはじめとするオールディーズに根ざしたグッドメロディ、「LIKE THE STAR」や「ALL」といった曲のように英語詞を中心にしながらもクライマックスと言える大サビで大胆に日本語詞を取り入れるリリック、どの現場でも完全燃焼を目指すライブパフォーマンスなどが挙げられる。

 ただ、それだけでは説明できない空気が彼らの“現場”にはある。彼らのライブでは、興奮が最高潮に高まるとダイブやモッシュが当然のことながら巻き起こるが、それと同時に満面の笑みを浮かべながらタオルで涙を拭うファンの姿も多くみかける。

 なぜ涙が流れるのか。その深意にあるモノとは何か。それは、決して平坦ではない道を進みながらも強烈にポジティブなメッセージを放ち続けていることにあるのではないか。長年の活動の中でメンバー同士がぶつかることもあれば、歯車が噛み合わず、納得できないライブをすることもある。

 長年所属していたレーベルを離れ、自主レーベルを設立し、不慣れで戸惑うことも多かった。メンバーに話を聞けば、バンドの歩みを止めようと考えたことは一度や二度ではないという。だが、折れかけた心を修復しながらより強固なモノとし、不動のオリジナルメンバーで突き進んできた彼らだからこそ生み出せる想いがある。

 そんな彼らのスタンスを象徴する曲がある。彼らの代表曲でもあり、ベストアルバムのタイトルにもなった「Laugh at life」。MVでは、10-FEETをはじめとして、ロットングラフティー、HEY-SMITH、TOTALFATといったシーンのど真ん中を射抜く盟友たちが顔を揃えて出演していることでも話題になった。ファンの間では“人生”という愛称で親しまれているこの曲をプレイする前に、フロントマンであるアカマトシノリ(Vo.Ba.)が必ず口にする言葉がある。

 「笑うということは逃げることじゃない。笑うということは乗り越えることだ!」

ライブのもよう

 小さなつまずきにうなだれることなかれ。そんな時こそ笑い、まだ見ぬ高みへ手を伸ばす。これは曲を司るメッセージでありながら、HOTSQUALLというバンドのまさしく根幹を表した言葉だ。現実を受け止めながら、時にスタイリッシュに、時にロマンティックに描く肯定的な世界観がどこまでも胸を打つ。そのまっすぐに突き進む彼らの姿が多くのファンを魅了し、しのぎを削り合うバンドマンからも愛され続けているのだ。そして、その“笑い”というメッセージは、“現場”では時としてファンの涙腺を刺激する。

 そして、彼らの地域に根差した活動にも触れておきたい。

 受け取った愛は誰かに返さなければと邁進し続ける彼らは、生まれ育った土地へ目を向けている。ライブハウスでおこなってきた自主企画を野外イベントへと発展させ、『ONION ROCK FESTIVAL -CHIBA DE CARNIVAL-』と銘打ち、地元・千葉にある稲毛海浜公園野外ステージを会場として一昨年にスタート。できるだけ大きな輪にしようと、自治体とも連携しながら収益の一部を「車イスや子供たちの本を購入する資金」として役立ててもらうよう寄付もおこなっている。

 今年は5月20日・21日に同じく稲毛海浜公園野外ステージでアルカラ、OVER ARM THROW、四星球、BUZZ THE BEARSといった多彩な顔ぶれで開催。全国各地で熱演を繰り広げている彼らではあるが、いつも以上に愛に満ちたライブを披露してくれるだろう。

(文=ヤコウリュウジ)

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