特別な意味をもったPERSONZ「HIT THE ROAD」最終公演(撮影・佐藤哲郎)

 ロックバンドのPERSONZが昨年12月29日・30日に、同年10月にスタートしたライブツアー『HIT THE ROAD』の最終公演を、東京・品川のステラボールでおこなった。2014年でデビュー30周年を迎え、現在もオリジナルメンバーのJILL(Vo)、渡邉貢(Ba)、藤田勉(Dr)、本田毅(Gu)の4人で活動する。1年越しの30周年記念ライブを2015年6月に東京・日本武道館で実施、続いた2016年はツアーをおこなうなど、今でも精力的な活動を続け、デビュー当時から放ち続けていたその変わらぬ魅力を発信し続けている。この日のステージでは、1993年にリリースしたアルバム『The Show Must Go On』のリロードをおこなうという趣旨で開かれた。当時は、バンドからギターの本田が一時脱退していた時期でもあり、このアルバムはJILL、渡邉、藤田の3人によって作られている。その意味でも、再度バンドに戻った本田とともにおこなわれたこのライブが、特別な意味を持つものであることは言うまでもない。今回はそのライブの模様を、最終日のステージからレポートする。

「Wake Up!」JILLの言葉で、止まっていた時が再び動き始める

撮影・佐藤哲郎

 エアロスミス、シンディ・ローパー、リビング・カラー、ホイットニー・ヒューストン…ステージのスタート前には、PERSONZが一躍スターダムに躍り出た1980年代に、世界を魅了したロック、ポップナンバーがBGMとして会場に流れ、当時さながらの輝きで彩っていた。会場にはその当時にリアルタイムでPERSONZのサウンドを楽しんだと思われる、若干年齢層の高い客層が多くを占めており、「まだまだ彼らのサウンドを胸いっぱいで楽しみたい」。そんな気持ちに満ち溢れた表情で、期待に胸を膨らませている様子がうかがえた。また一方で、そんなファンが自身の子供を連れて会場に訪れているのも目立った。親子でライブを楽しむという構図もほほえましくあるが、アーティストのTシャツとタオルという本格的な「ライブ仕様」のドレスアップをした親の姿からは、PERSONZのライブは心から子供に見せたいと思うもので、いつまでも引き継いでいきたいと思うもの、そのものなのだろう。

 開演の時間を少し過ぎたころ、いよいよ会場は暗転した。ステージはスモークが焚かれ、その霞を緑や青のカラフルな光で彩っていた。会場にはオーケストラによるオーバーチュアが流れ、童話に描かれた世界のような場所へ皆を誘う。やがてステージに現れた藤田、渡邉、本田。歓声と拍手に迎えられた彼らがステージでセットを終えると、そのBGMも終わりを迎える。そして1曲目の第一音が発せられると共に、いよいよフロントマンのJILLがステージに現れた。

 最初にプレーしたのは「SLEEPING BEAUTY」。聴くものの気持ちをどんどん鼓舞させてくる、渡邉と藤田の生み出すビート。そして果てしない地平線の先までも描いていくような本田のギター。耳にするだけでもワクワクしてくるその舞台に描かれたのは「SLEEPING BEAUTY」=「眠れる森の美女」のイメージをモチーフとした物語。この楽曲になぞらえた「SLEEPING BEAUTY」とは? まるでその曲を聴く人々の中に「SLEEPING BEAUTY」が存在するかのよう。そして、その心の中の人物に向かって呼びかけるように、JILLは叫び続けた「Wake Up(目を覚まして)!」それは人々の中で止まっていた時を、再び動かす呪文にも聞こえた。

深みを増した、輝きを放つ音。さらなる躍進を誓う「まだまだ走るよ!」

撮影・佐藤哲郎

 1曲目からフロアは総立ち、観衆は彼らのサウンドに心から酔いしれていた。子供たちは、少し戸惑いながらも親にフォローしてもらい、右手を掲げそのリズムに身を浸し、PERSONZのサウンドを心から感じる術(すべ)を教わっていたようだ。「Hi! ようこそ1993年のステージへ」。そんな観衆に向けて、JILLが語り掛けた。

 「深い欲望の歌」と語る「My Desire」、「1993年、はち切れそうな思いで歌った『あの日の向こう側』。そして今日があの日の向こう側だ」と当時の思いを振り返った「いつの日かきっと」と、彼らがアルバムを作った際に感じた様々な思いが交錯するようなこの日のセット。当時、世間では大きな動きがいくつも見られ、時代が変わっていくことを感じていた彼ら。そんな時の中で生まれ、歌い続けてきた彼らの数々の歌が、JILLの艶やかかつどこまでも響くような力強い歌声で、当時そのままのキラキラした輝きを放ち、今もなお見るものを深く魅了する。

 途中、彼らの代表曲の一つでもある「Fallin' Angel ~嘆きの天使~」や「Magic Moments」など『The Show Must Go On』収録以外の楽曲も交えながら、様々な色彩感を披露する。そのギターから飛び出す音は、まさに“7色の音”ともいえる多彩なサウンドを放つ本田もさることながら、様々なテクニックやグルーブを駆使し、リズムの源を作り上げる渡邉、さらに聴き続ければ続けるほどに気持ちがアクティブになる藤田のドラムと、単に音のイメージだけで推し量れるものではない、歳月を超えたからこそ深みを増した味わいが、彼らのサウンドにはにじみ出ていた。

 そして、そのサウンドを手掛かりに、物語を紡ぐJILLのボーカル。まさに“奇跡”を表現した「Miracle」から「New Sensation」、そしてラストナンバーの「Future Star」へ、一気に駆け抜ける。ステージというキャンバスに描かれた彼らの絵は、パステルで描かれるようにとてもポップなイメージで、未来がとても楽しみになるようなワクワク感をあおった。そしてエンディングとともにJILLは「諦めないでよかった! まだまだ走るよ!」その歌で提起された問いに、応えるように叫ぶ。こうして彼らは、ステージを降りた。

なおも輝きと深みを増していく世界観

撮影・佐藤哲郎

 なおも続くアンコールに応え、三度ステージに再登場したPERSONZの面々。『The Show Must Go On』の楽曲でまだプレーされていなかった曲「恋せよ乙女」「The Show Must Go On」や、PERSONZのステージでは頻繁にプレーされる「TOKIO'S GLORIOUS」「MAYBE CRAZEE」、そして大ヒットしたPERSONZの代表的なナンバー「7 COLORS」「DEAR FRIENDS」などを織り交ぜ、最後はパンキッシュな「Modern Boogie」で、年末のステージを盛大に締めた。

 折しも12月31日に誕生日を迎える本田に、サプライズのお祝いが贈られるなど、楽しさ溢れるステージに観衆は興奮、大人も子供も入り混じり最後まで腕を振り上げ、サビを熱唱していた。またこの日は、2017年6月4日に東京・中野サンプラザでアルバム『NO MORE TEARS』のリロード・ライブをおこなうことも発表、新たな年を迎えるにあたり、さらなるチャレンジの姿勢を見せている。

 1993年に着用した衣装を要所で披露していたJILLは、1993年のレコーディングで、トラックダウンのためにロンドンに訪れた際には、ロックバンド・クィーンのボーカリスト、フレディー・マーキュリーはすでに亡くなっていたことを振り返りながら、彼へのリスペクトを込め「私もあんなボーカリストになりたい」と一言つぶやいていた。しかし、この日変わらぬ輝きを見せるPERSONZのサウンドの、その一番の源となったのは、艶やかな光を見せていた彼女の声に他ならない。”歌姫”という言葉は、彼女のためにあるのではないか、そう思わせるほどのインパクトを示したステージだった。そしてそんな彼らの魅力は、これからもさらに輝きを増していくことだろう。(取材・桂 伸也)

セットリスト

『PERSONZ HIT THE ROAD! 2016』
2016年12月30日 @東京・ステラボール

01. SLEEPING BEAUTY
02. My Desire03. いつの日かきっと
04. Lost In Sunset
05. TWO HEARTS
06. What Is Love
07.Fallin' Angel ~嘆きの天使~
08. Magic Moments
09. Miracle
10. New Sensation
11. Future Star
1st encore
EN01. 7 COLORS
EN02. TOKIO'S GLORIOUS
EN03. MAYBE CRAZEE

2nd encore
EN04. 恋せよ乙女
EN05. The Show Must Go On
EN06. DEAR FRIENDS

3rd encore

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