結成42年PERSONZ、初の47都道府県ツアー始動 初日横浜で証明した鉄壁サウンド
PERSONZ RELOAD TOUR “DISCOVER JAPAN 47”
PERSONZ(写真・齋藤竜太郎)
今年の6月に結成42周年を迎えるPERSONZが、初の試みとなる47都道府県探訪ツアー『PERSONZ RELOAD TOUR “DISCOVER JAPAN 47”』を半年にわたり敢行する。現時点のPERSONZサウンドを表現すべく全曲再レコーディングしたセルフカバー・ベストアルバム『RELOAD BEST』を携えての全国行脚、その初日にあたる神奈川公演がさる4月17日に横浜の関内ホール大ホールで行なわれた。ツアーはまだ始まったばかりであり、これから各会場へ足を運ぶ方々に配慮して具体的な楽曲名はなるべく明かさずに当日の模様をお伝えしたい。
【写真】PERSONZ、47都道府県ツアー初日 関内ホールでのパフォーマンスの模様
光背の如き七色に輝くライティングと雄大かつ幽玄に響きわたる管弦楽の調べに導かれ、42年に及ぶバンドの軌跡を凝縮した楽曲メドレーがSEとして場内にこだまする。総立ちの観客による割れんばかりの拍手喝采に迎えられるなかメンバーがおもむろに現れ、SEの終盤に織り込まれたあの高揚感溢れる手拍子を観客が合わせる。そのままバンドのコロナ禍時代を象徴する代表曲を披露することで、いつ何時でも“自己ベスト”を更新し続ける意思を高らかに告げる演出が実に見事。そのまま間髪入れず、バンドの知名度を一気に全国区へと広げた出世作収録の名曲、さらに時代は遡って記念すべきメジャーデビュー作の主要曲を一気に畳み掛ける。
続いて、物質的な豊かさを重視する社会をバブル景気に沸いた時代の渦中で揶揄した楽曲(JILLが模造紙幣を客席へ向けて撒き散らすパフォーマンスが秀逸)、本田毅がバンドを離れていた時期の逸曲をPERSONZの最新形として巧みに“RELOAD”=“再起動”する。伝家の宝刀という言葉があるが、PERSONZに至っては代々受け継がれてきた名刀(名曲)がどれだけあるのだと驚くばかりで、それもとっておきの切り札として使うのではなく、ライブの序盤で惜しげもなく矢継ぎ早に披露するのだから恐ろしい。
一体感のあるアンサンブルもすこぶる安定している。バンドサウンドの輪郭を際立たせる本田毅はエフェクターの魔術師という異名の通り、クリーンから精巧なディレイまで多彩な音色を奏でて存在感を発揮する。的確なリズムとビートをキープし、抜けの良い音を安定して繰り出す藤田勉はスティックを高く掲げるのを合図に観客とのコミュニケーションを忘れない。バンドの屋台骨を支える渡邉貢は粒立ちがはっきりした低音を流麗に聴かせつつ、ステージとフロアを冷徹に注視する。そうした一滴の水さえ漏らさぬ鉄壁の布陣、おそらく現存する日本のロックバンドの中で屈指の演奏技術を誇るメンバーに全幅の信頼を寄せるJILLは、艶やかで張りのある美声をフロア最後列まで轟かせ、ボーカリストとしてのピークが常に今この瞬間であることを雄弁に歌声で伝える。
前身バンドから数えれば43年、本田不在の10年を差し引いても30年以上苦楽を共にしたメンバーの結束力、4人が揃ったときの底知れぬ活力はやはり伊達じゃない。
疾風怒濤の4曲を唄い終えたJILLは一息つき、「今回はきっと山あり谷ありのツアーになるんだと思います」と語る。この『DISCOVER JAPAN 47』では、これまで訪れたことのない島根や鳥取でも公演を行なう。数十年ぶりに訪れる場所、諸事情によりなかなか訪れることのできない場所にも今回は足を伸ばすため、メディアの露出も精力的に行なっている。どの会場も満杯にするべくまだまだアピールしていきたいというJILLは、「ライブへ来てくれた人が必ずまた見たくなるようなステージにしたい。バンドがピークのときに全国50カ所を回ったツアーでも満杯にならない会場がありました。だから人数よりもみなさんの熱気を求めて全国を駆け巡りたいです」と生粋のライブバンドの顔役として矜持を交えながら言明した。
平均年齢64歳のメンバーと同じ世代が多い観客を気遣い、「ここから2曲、じっくり聴いてほしい曲が続くのでどうぞお座りください」とJILLが着席を促す。そして『PRECIOUS?』発表時のツアー(1990年12月〜1991年5月)で東京ベイNKホールから日本武道館まで大規模な会場でのライブを50本行なったことを振り返り、当時はライブハウスを出自としたバンドの主戦場がホールになったことの戸惑いや葛藤も入り混じっていたと話した。今回のツアーはその『PRECIOUS?』ツアーを超える52公演が控えているが、若い頃には満喫する余裕がなかった各地の風光明媚を味わいたいという。
そんなMCの後、「長いツアーで街から街へと旅をする中で生まれた曲」だという『PRECIOUS?』の収録曲を滋味深く聴かせ、渡邉の爪弾く荘厳かつ幻想的なベースソロに導かれ、JILLが三日月のオブジェを左手に掲げながら唄う定番のバラッドを情緒豊かに披露。漆黒の闇と溶け合うように煌々と輝く銀の月がただただ美しい。
「今日は47都道府県を巡るツアーの記念すべき一本目。『RELOAD BEST』も出たことだし、PERSONZの王道、ど真ん中を繰り広げていきます!」というJILLの宣言通り、本編後半はオーディエンスの求める定石と言うべきナンバーが連射される。『MODERN BOOGIE』からシングルカットされた人気曲に続き、昨年行なわれた『WHAT A WONDER WONDER LAND TOUR』のアンセムと言うべき楽曲では“HELLO HELLO HELLO HEAVEN”という歌詞を用いてその土地ならではのコール&レスポンスが繰り広げられる趣向。この日は神奈川の名所や名産品が盛り込まれ、こうしたやり取りが47都道府県で展開される光景を思い浮かべると楽しい。
その後、イントロが奏でられた途端に大きなどよめきが起こった『PRECIOUS?』屈指の名曲でフロアはさらに沸き、縦ノリの2ビートで踊らずにはいられない『MODERN BOOGIE』の収録曲では大きな地球儀バルーンが客席へ放たれ、至る所でバルーントスの応酬が続く(曲が終わるまでにしっかりとステージへ戻されるのが熟練の技)。ステージとの掛け合い然り、バルーントス然り、PERSONZのライブでは観客一人ひとりが欠かせない主役なのだ。
本編最後は、バンドが再び日本武道館でのライブ開催を目指して奔走した時代を象徴するエールソング。発表から10年以上が経過し、クラシカルな佇まいと風格を帯びた代表曲へと格段の成長を遂げたことが窺える。
アンコールに応え、メンバー各自が一人ずつ挨拶。藤田は「47都道府県完全制覇ツアーが始まりました。この歳になってこんなトライをするのは素晴らしくないですか?」とフロアへ問いかけ、万雷の拍手を浴びる。「こういう挑戦ができる機会を持てること自体が有難いと今ひしひしと感じています。こんなツアーをできるのはバンドを支え続けてくれるみなさんの存在があってこそ。今日お集まりくださったみなさんと同じく楽しそうな顔をしたファンの人たちにこれから会いに行きますので、ぜひ見守っていてください」と頭を下げ、今回のツアーの模様を公式ファンクラブ「PtoP」のサイトで随時更新していくと公表。
続く本田は、これまでSNSを一切やってこなかった藤田がツアー日誌みたいなものを投稿すること自体がとても貴重なので、ぜひ見届けてほしいと強調。また、ご当地にまつわるエピソードとして、1989年に『平成1年11月1日11,111人のDEAR FRIENDSへ』と題して横浜アリーナで行なった特別なライブも忘れられないと前置きした上で、バンドの結成翌年から出演していた藤沢BOWという楽器店兼ライブハウスのスタッフに自分のギターと渡邉のベースのオリジナルモデルをそれぞれ作ってもらったことを感慨深く話した。
渡邉もその話に触れ、今も使用するサドウスキーのベースは当時の藤沢BOWのスタッフが作ってくれたものだと言及。そこからどんな人と出会うかが人生のテーマであり、そうした出会いの意味とは何なのかの答えを47都道府県の旅を通じて見つけたいと冗談まじりに話した。今回は地域性を意識したツアーだけあり、メンバーがその土地に抱くイメージや忘れがたい思い出を語ることもライブのトピックとなりそうだ。
“DISCOVER JAPAN 47”のロゴが躍る真紅の旗を携えて現れたJILLは「47カ所、52本に及ぶツアーは私たちのチャレンジであり、みなさんとの気持ちが一つになれば完走できると思います。今までライブをしたことのない場所があるのなら、PERSONZのライブを見たい、もっと知りたいと思っている人たちがきっといるはず。それならその街へ行こう。メンバーの平均年齢が64歳だとしても(笑)」と話し、「ライブへ来てくれるみんなと『ただいま』『おかえりなさい』と言い合える関係になりたい」という思いで作り上げたという、『RELOAD BEST』に収録された唯一の新曲「DISCOVER JAPAN47」を披露。昨年末に大手町三井ホールで行なわれたライブ時にファンクラブ会員たちによって録音された「おかえりなさい」のコーラスパートを阿吽の呼吸で観客が唄う。その絶妙なレスポンスにJILLも「最高!」と呟く。バンドの最新曲でありながらもすでにライブ必須のレパートリーの宿命を背負った、メンバーと観客の絆を繋ぐ架け橋のような楽曲だ。
デヴィッド・ボウイの「HEROES」の一節が引用されたバンド屈指の代表曲では、JILLがステージを降りて客席を練り歩き、一周しながら唄うという離れ業を見せつける。「HEROES」を発表した当時のボウイは30歳、PERSONZがこの曲を発表した当時のJILLは29歳。異星からやってきたジギー・スターダストは10年前に黒い星となり宇宙の彼方へと帰還してしまったが、JILLは還暦を過ぎてもなお私たちの目の前で“WE CAN BE HEROES!”と変わらず叫び続ける。この決して当たり前ではない幸運を享受しないのは実にもったいない話だ。私たちは最長不倒のキャリアを誇る日本のロックバンドの最高峰がこの先どこまで進化し続けていけるのか、日本のロック史に刻まれる歴史的記録の更新を見届けられる立会人なのだから。
ダブルアンコールに応えて披露されたのは、渡邉いわく、予定されていた野音のライブが雨天順延となった日にとても狭い部屋の出窓の小さなスペースで書いたという至高の一曲。パンク/ニューウェイヴを出自としたバンドがこうしたライブのハイライトとなる情緒的かつ普遍的なバラッドを生み出したのは、日本のロックの一つの到達点と言える。
2時間に及ぶ至福の時間を締め括るのは、メンバー各自がこれまで何度も何度も助けられてきたというバンドの代名詞的楽曲。コアなファンほど「たまにはセットリストから外しても良いのでは?」と感じるのかもしれないが、まだ見ぬ“親愛なる友人たち”へ向けて唄い続ける必然性を感じているのは他ならぬバンド自身なのではないか。初めてPERSONZのライブを見に来た人たちに「あの曲をやってくれなかった」と失望させたくない配慮があるのだろうし、バンド屈指の代表曲を堪能するのはこれが最初で最後となる観客もいるかもしれない。何より、JILLが生死をさまよう体験を乗り越えた経験を元に紡がれた大切な歌であり、バンドにとっても運命的な楽曲を常に“RELOAD”し続けていきたい思いが絶えずあるのだろう。
「ツアーを重ねていくと曲順を入れ替えたり、曲自体を変えたりするので初日にしかやらなかったことが往々にしてある。今日は初日を見に来てくれた人たちだけにしか味わえない面白さがあります」と渡邉がMCで語っていたが、ライブとは常に一期一会であり、同じライブは二度とない。この先に続く『DISCOVER JAPAN 47』はどの場所でもそこでしか起こり得ない一夜限りの格別なショータイムとなるはずだ。
1984年の結成当時と同じオリジナル・メンバーで今日まで活動を続け、数十年前に録音された楽曲が今なお蘇生されるのはまさに奇跡に他ならない。バンドの「ただいま」に「おかえりなさい」と返せるのも当たり前のことではない。あなたがPERSONZに「おかえりなさい」と千切れるほど手を振りながら全力のエールを送る場所を一つでも多く増やすことが今ツアーの意義であり、現時点でのバンドの指標と言えるのかもしれない。
文・椎名宗之
写真・齋藤竜太郎
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