公開初日舞台挨拶で母で歌手の矢野顕子を語る坂本美雨(撮影・小池直也)

公開初日舞台挨拶に出席した坂本美雨(撮影・小池直也)

 歌手の坂本美雨(36)が6日、都内でおこなわれた、母で歌手の矢野顕子(61)のドキュメンタリー映画『SUPER FORK SONG ~ピアノが愛した女。~』の公開初日舞台挨拶に出席した。同作は1992年に公開されているが、矢野の40周年アニバーサリーイヤーを記念して復活上映。当時の矢野と同じ年齢の坂本は「何かを作る人間として感動する一方で“いつもの母だな”という印象もありました」と作品の感想を述べた。

いつもの母だな

 映画は、坂本の母で歌手の矢野顕子のドキュメンタリー映画。映画のタイトルにもなっている、92年に発売されたアルバム『SUPER FOLK SONG』のレコーディングの模様を完全密着で記録したドキュメンタリー。

 レコーディングは編集なしの一発録りでおこなわれており、映像にはピアノとマイクに魂を吹き込む矢野のストイックな部分や愛らしい部分がありのままに映し出され、名盤が生まれるまでの試行錯誤を切り取った貴重な映像といえる。1992年に公開されたこの作品が、現代技術によりリマスター版として復活。6日に公開となっている。

 イベントに登場した坂本は「(矢野顕子の)娘です。沢山の方に平日からお越しいただいて、しかもお正月明けなのにありがとうございます」と挨拶してから、音楽ライターの大谷隆之氏とともにトークセッションを開始した。

 この映画のオリジナル版が公開された1992年当時、坂本は12歳。米ニューヨークに住んでいたという。坂本は上映当時、この作品は観なかったという。今回のリマスター版を観た感想については「何かを作る人間としては感動しましたし、“いつもの母だな”という感じもしましたし、両方ですね」と述べた。

理想とする音に辿り着きたい執念

公開初日舞台挨拶で母で歌手の矢野顕子を語る坂本美雨(撮影・小池直也)

 さらに矢野の人物像について「特に身内には厳しい人なので、皆さんが思っている程、ほわほわしていないですね。映画では、レコーディング中の自分にも、人にも厳しい様な姿勢が出てきますけど、1回、スタジオに入ったらああいう感じ。自分がもっとできる筈というよりかは、自分の理想とする音が鳴っていて、そこに自分がたどり着きたいという執念ですね」と重ねて説明した。

 矢野の初となる弾き語りアルバムのレコーディング模様を収めたのが今作。この点について意見を問われると「大変そうですね(笑)。私は、全部自分だけでやったことはないんですけど。アカペラみたいな、素に近いものだと、凄く悩むのでわかります。でも引き語りという形じゃなくても、スタジオに入ったときの厳しさは私が小さい頃からあんな感じでした。“今は話しちゃいけない時だ”とか子どもながらに感じました」とした。

 現在、作中の母と同じ年齢の坂本。「ひとりの女性として考えると、大人だなあと思います。当時私もいたし、兄も17歳。皆をつれてニューヨークに引っ越して、その数年後にこのアルバムを作っている。子育てしながらの仕事の大変さは自分も今感じます。人々の期待とか色々なものもあっただろうし、色々な物を背負っていて。今の私の目から観ると、このスクリーンの中の女性は、もっともっと年上のしっかりした方に見えますね」と語った。

 また、劇中に登場するスタッフの働きぶりにも注目してほしい、という話題になると、坂本は「やっぱり、矢野顕子の取り扱いですよね。取扱注意なところもたくさんあるわけですけども。当時のマネージャーの永田純さん(どんべえ)は私の育ての親みたいなもの。彼は矢野顕子がどんな人かよくわかっていて、ベストのタイミングで出前をとるんです(笑)。これがミュージシャンにとってはとても重要で。母はお腹がすくとイライラするところがあるんです。食のタイミングをばっちり気遣えるのは、その人の顔色をよく読んで、音楽の出来をうかがっているから。母は愛されているなあと思います」としみじみ話していた。

 イベントの最後に坂本は、母・矢野顕子の物真似をしながら「どうもありがとうー!」とおどけて挨拶。拍手の中、会場を後にした。(取材・小池直也)

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