第67回NHK紅白歌合戦

 第67回NHK紅白歌合戦のリハーサルは28日に始まり、31日朝、本番に向けて最後のリハーサルがおこなわれようとしている。今年の紅白は、12月31日に解散するSMAPの出場が注目されていたが、辞退申し入れにより叶わなず。出場回数23回を誇るSMAPが不在のまま本番を迎える。リハーサルの合間におこなわれている囲み取材には、30日までにジャニーズ事務所所属の出場6グループが応じた。各々が口にしたのは偉大な先輩グループ、SMAPに向けたリスペクトの想いだった。

 リハーサル初日となった28日。最初に囲み取材に応じた、ジャニーズ事務所所属グループとは異なる出場者にSMAPの質問が飛んだ。しかし、すぐにNHK広報関係者に止められてしまう。紅白に出場しないアーティストに関する質問は番組の趣旨に沿うものではなく、NHKサイドも対応に苦慮している様子だった。同日には、関ジャニ∞とV6がステージで音合わせに臨んでいたが、囲み取材の会場に姿を現さず。今回はジャニーズ事務所所属グループの囲み取材はないのでは…といった空気が漂っていた。

 ところが翌29日午前にそのムードは氷解する。口火を切ったのはSexy Zoneだった。ジャニーズ事務所の所属グループで最初に囲み取材の現場に姿を現すと、記者陣が問いかけたSMAPに関する質問に対し、菊池風磨が口を開いた。

 菊池は「大好きな、尊敬していた先輩。僕らが生まれる前から活躍していた。この会社に入って後輩になり、色んなことを学ばせてもらった」と切り出し、後輩として影響を多く受けてきたことを率直に述べ、「僕らだけじゃなく、日本国民の皆さんにとっても永遠にSMAPはSMAP。追いつけ追い越せの精神で飛躍していきたい」とも言及した。

 更に、この日の囲み取材には関ジャニ∞が続いた。村上信五は、報道陣が問いかけるよりも早く自ら切り出し、「SMAP兄さんは偉大な歴史を作って下さった先輩。背中が大きすぎて。こういった形にはなりましたけど、少しでも近づけるように。メディアでのパフォーマンスやステージだったり、ジャニーズの良いところを僕らなりにできることをやりたい。勝手にバトンをもらったと思っています」と意気込みを語った。

 V6も囲み取材の中で、SMAPに関する質問を受け付けた。井ノ原快彦は「ありがとうの一言しかない」としみじみと語ると、「SMAPがいなかったら僕らはここまできていなかったかもしれない。道を作ってくれた」と感謝の言葉。さらに、東日本大震災や熊本地震の義援金募集の告知を最終回の放送まで続けたフジテレビ系『SMAP×SMAP』を取り上げ、「その精神は受け継いでいかないといけない」とリスペクトを込めて言葉を繋いだ。

 夕刻になるとKinKi Kidsが登場。彼らは初めての紅白出場となり、同日には堂本剛がTBS系ドラマ『若葉のころ』(1996年)で共演した根津甚八さんが逝去したという訃報も飛び込んできた。そうした中でも、堂本剛と堂本光一は毅然とした態度で、彼らのSMAPに対する気持ちを率直に語っていく。

 光一は「僕らの望みとしてはこうやって初めて紅白の舞台に立てるので、その場でご一緒できれば、とても素敵なことだったなと思います」と初出場の舞台でSMAPと共演することが叶わなかったことを残念そうに話し、「デビュー前からSMAPの皆さんのバックをずっとやらせて頂いていたので、解散という形になっても、僕らにとっては偉大な先輩であることは変わらない」と語った。

 剛もまた「先輩というよりも、お兄ちゃんのような存在」と打ち明けると、「僕らは弟ですが、これからは彼らの強さと優しさを持たないといけないと思いました。今年は彼らに教えて頂いた事を振り返ってステージに立っていました」と寄せ、SMAPという存在から多くのことを学んできたことを伝えた。

 この日の最後の囲み取材は、今年の紅白で“大トリ”の大役を担う嵐。白組司会を相葉雅紀が務めることもあり、豊富な話題で取材現場は大いに盛り上がった。そして、質問の最後にSMAPについての質問が切り出されると、リーダーの大野智が口を開いた。

 大野は「5人にとっても偉大すぎて、淋しい気持ちがあります。一緒にお仕事させて頂いたこと、貴重な時間が沢山ありますので、僕らにとっても宝物になりました。先輩に沢山学んだことを僕らなりに引き継いで、僕らなりにこれからもやっていきたい」とSMAPがかけがえのない存在であることに言及した。

 櫻井翔は紅白に初めて出場した思い出を振り返る。嵐が初出場した2009年、司会を務めていたのがSMAPの中居正広だった。その中居は袖口から見守っていてくれていたとし、「初めての紅白で不安もいっぱいあったなかで心強く感じました。これまでやってきていなかったことを、最初に切り開いてきた先輩。学ぶことも多い」と敬意を示した。

 松本潤もまた、「ジャニーズのメンバーで一番最初に東京ドームでライブをやっているのを見たのはSMAPでした。僕らも、国立(競技場)でやっているのをみて立ちたいと思ったのもSMAPでした」と先輩の背中を見てきたことを伝えた。

 29日を終えた段階で、6グループのうち5グループが囲み取材をおこない、それぞれがSMAPについて言及。残すのはTOKIOのみとなったが、30日の囲み取材で彼らのSMAPへの思いが明かされた。

 松岡昌宏は「僕らはずっとバックにつかせてもらって、背中を見て育った。光GENJIさんもそうですし、今回、SMAPさんということで。気づけば僕らが一番上になってしまった。それは歴史の一つとして。TOKIOがちょっと気を引き締めて、頑張りたいという気持ちも出てきた」と新たな覚悟が芽生えてきたことを伝える。

 さらに、「先輩方の今までの栄光もずっと残るものですから、それを僕らは勉強してきましたし、引き継ぎながらしっかり頑張っていきたい」と、SMAPの“栄光”を継承し、TOKIOとしての活動に努力を続けたい心境を語った。

 これを受けて長瀬智也も口を開く。「僕らは何一つ変わらないですよ、気持ちは。なんで、いつも通り。先輩たちのことを見ていきたいと思ってますし、リスペクトももちろんしてます。何も変わりません」と言葉を寄せた。

 また、29日には、2日間のリハを終えてNHK制作統括の矢島良チーフプロデューサーが言及した。「出場辞退の旨のお手紙を頂きまして、我々もそのお気持ちを尊重させて頂くというかたちになりました」と出場辞退の申し入れがあったことを正式に認め、「今は46組のアーティストの皆さんとゲストの皆さんも素晴らしい方々が集まっていると思いますので、しっかり番組をお届けするという気持ちです」と述べた。

 更に「今、嵐の皆さまは日本の音楽界をけんいん引する方々だと思っています。今年の『夢を歌おう』という紅白のタイトルを具現化するようなステージにして頂けたら」と大トリの嵐に期待を寄せた。

 その嵐は30日、「スペシャルメドレー」のリハーサルをおこなわれた。大みそかの紅白本番では、関ジャニ∞が「ズッコケ男道~紅白で夢を歌おう~」でトップバッターを務め、全体9番目に登場するSexy Zoneは「よびすて紅白’16」を歌唱する。V6は「Smile!メドレー」、KinKi Kidsはデビュー曲「硝子の少年」で初出場の舞台を飾り、「オリンピック・パラリンピックフラッグツアー」のスペシャルアンバサダーを務めるTOKIOは「宙船」をジャニーズ初となる東京都庁からの中継で披露する。

 SMAPのいない紅白歌合戦――。後輩たちが語った言葉に共通したのは“偉大な先輩”の功績に対するリスペクトであり、自らの足元を見つめ、さらなる高みを目指す強い意志。その言葉を体現する舞台がまもなく訪れる。(取材・小野眞三)

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