「嗚呼!―」上映会に出席した内田裕也と行定勲監督(撮影・小池直也)

「嗚呼!―」上映会に出席した内田裕也と行定勲監督(撮影・小池直也)

 ロックミュージシャンの内田裕也が8日、東京・新宿武蔵野館でおこなわれた、映画『ジムノペディに乱れる』公開記念イベントに、行定勲監督とともに出席した。この日は、自身が主演を務めた『嗚呼!おんなたち猥歌』(81年公開)が上映。内田は同作の想い出を語り、「男はやっぱり捕まんないと駄目なんですよね。それくらいの作品に対して毒がないと」と持論も展開した。

 映画は、「日活ロマンポルノ」生誕45周年を記念したロマンポルノ・リブート・プロジェクトの第1弾作品。同作で監督を務めた行定勲氏が、その制作に際して影響を受けた作品が『嗚呼!―』だったことから、後者の作品で主演を務めた内田裕也をゲストに上映会とトークイベントが開かれた。

 先に登壇した行定監督は『嗚呼!―』について「凄い傑作。初めて見る人が羨ましい。どの場面も焼き付く様で観るだけで面白い」と興奮気味に解説。後に続く内田は杖を突き、スタッフにサポートされながら登場。開口一番「思ったより観客が少ないのに頭にきてます」と内田節を炸裂させた。

 内田はその後、この映画にまつわるエピソードを披露。このなかで、1週間におよぶ事前リハーサル後のクランクイン前日に当初の女優がドタキャン、という事件があった事が明かされた。内田は「『主演女優が降りたんで、休止させてください』って言われてキレまくってね。皆が映画を作ろうと、情熱を傾けているのにそんな事をするなんて。この世界にいる価値がないと思うんだよ」と今も腹を立てている様子を伺わせた。

 会場全体がその女優が誰かと気になっている中、内田は「そうしたら2、3カ月前に息子が捕まったっていうんだな。ざまあみろとは思いませんでしたけど、人間ってやったら返ってくるんだなと思いました。高畑淳子さんです。皆さんは笑ってるけど、男同士なら殺し合いになってますよ」とその名前を明かした。

 その後も内田は色々な人のサポートで代役を探すなど、沢山のエピソードを感慨深げに披露。

 更に創作についてのこだわりについても「俺もしょっちゅう捕まってますけどね、男はやっぱり捕まんないと駄目なんですよね。それくらいの作品に対して毒がないと。犯罪を起こせとは言いませんけど。それくらいの覚悟があるのが、戦う準備だと思うんで」と語った。

 映画の劇伴音楽については「音楽もね、沢田研二と萩原健一が最後のウェスタンカーニバルで俺用に元々作ってくれた『ローリング・オン・ザ・ロード』が最後の甲府駅のシーンで流れるのがほろっと泣けた。監督もわざときれいな音じゃなくてライブの音源を使って臨場感を出しているんです。映画音楽としても日本映画の中でも優秀な作品だと思います」と明かした。

 その他にも色々な思い出が語られ、最終的に「僕は凄く乗ってやりました。監督もスタッフも『何か変な映画だな』って思いながら着いてきてくれて嬉しかったです。本当に因縁のある映画です。完成して嬉しかったという充実感でいっぱいでした」とまとめた。

 イベント最後に内田は「深く考えずにさらっと観て頂ければいいなと思います。こうやって長い間行定監督の記憶にも留めて頂いて、日本映画の1ページを飾れた事も嬉しく思っております。あと何本作れるかわかりませんけど、かならず『おー』っていう作品を作りたいと思います。その時、主演は高畑淳子で」と冗談まじりにメッセージした。(取材・小池直也)

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