ヒップホップ×アイドル、lyrical school 両シーンで存在感増す
INTERVIEW

ヒップホップ×アイドル、lyrical school 両シーンで存在感増す


記者:榑林史章

撮影:サムネイル

掲載:16年11月17日

読了時間:約10分

アイドルとヒップホップの両シーンで存在感を増しているlyrical school

アイドルとヒップホップの両シーンで存在感を増しているlyrical school

 今年4月にメジャーデビューした女性5人組ヒップホップアイドルユニットのlyrical school(略称・リリスク)が11月16日に、メジャー1stアルバム『guidebook』をリリースした。メンバーは、ayaka、minan、hime、mei、amiの5人。2010年にオーディションで選ばれた6人で結成。2012年にlyrical schoolに改名した。メンバーの卒業と加入を経て、2015年12月に今の体制となった。アイドルとヒップホップを融合させた独自のスタンスや、スマホジャックMVが話題になるなど今注目の存在だ。今回のインタビューでは、メンバーからayakaとhimeの2人に、アルバムやこれまでの活動、さらにはアイドルとヒップホップというスタイルについて話を聞いた。

デビュー7カ月で得られたもの

ayaka(左)とhime(撮影・榑林史章)

ayaka(左)とhime(撮影・榑林史章)

――メジャーデビューから約7カ月が経ちました。

ayaka 本当に早かったです。

hime 私は昨年12月に加入したのですが、とにかく目まぐるしかったです。ライブもたくさんやらせてもらったのですが、なかでも印象に残っているのは、8月に代々木公園野外ステージでおこなったフリーライブ『SUMMER FOUNDATION 2016』です。ワンマンでしたし。夕方の良い具合の時間帯だったので、すごく気持ち良かったです。

――何か達成感や成果を感じたことはありましたか?

hime メジャーデビューシングル「RUN and RUN」のMVが話題になったときは、とても達成感がありました。動画再生回数もそうですし、カンヌ広告祭で賞をいただいたので。いろんな場所でいろんな方に見ていただいたという、実感がありました。

ayaka あのMVは、撮影自体もスマートフォンでほとんど撮りました。画角が狭くて動きが制限されますし、カメラのレンズも小さくて、どこに視線をやればいいか分かりづらかったりと、苦労して撮ったので、完成したものを見たときには感動して、達成感がありました。

――2ndシングル「サマーファンデーション」のMVでは花火大会ジャックもおこないましたね。曲に合わせて花火が打ち上がるというものでした。

ayaka 実際におこなわれる花火大会のプログラムを事前にいただいて、それに合わせて振り付けも変えて、リハーサルを何度もやって撮影に挑みました。完成したものを見て、初めてこんなに綺麗だったんだ! と。私たち自身、みんなが驚くようなことや楽しいことをやりたいと常々思っているので、今後も面白いことを考えていきたいです!

――その2曲も収録した、メジャー1stアルバム『guidebook』をリリースします。どんなお気持ちでしょうか?

hime リリスクとしてはインディーズで何枚も出しているけど、私が加入してからは初めてのアルバムなので、とても思い入れの強い作品になりました。アルバム全体として、ラップのし方を変えるように心がけています。ワンパターンではない、多彩なラップを楽しんでほしいなと思います。

ayaka ラップという部分では、私はけっこう苦戦しました。前にノルか後ろにノルか、けっこうジラして入るとか。なかなか上手く出来なかったんですけど、himeにリズムの取り方や言葉の置き方などをアドバイスしてもらって。それでやっと出来るようになって。それから、毎回ブースに入る前にエンジニアさんから「今日もかわいいよ」と言ってもらって、テンションをアゲていました(笑)。

リリスクの過去、現在、未来を描いた「guidebook」

ayaka(撮影・榑林史章)

ayaka(撮影・榑林史章)

――『guidebook』というタイトルは、どんな理由で付けられたのですか?

ayaka ときの流れがテーマで、過去、現在、未来を描いています。

hime アルバムのイントロやアウトロ(編注=曲終わり、イントロの対)など数カ所で、とある街を舞台にしたskitが入っているんですが、物語的にガイドブックがキーワードになっているんです。あと、メジャーになってからのシングル曲が全部入っているので、lyrical schoolのことが分かるガイドブックみたいな意味も込めています。

――アルバムは、どんな作品になりましたか?

hime 収録時間も30分くらいなのですごく聴きやすいですし、曲順も“これが正解だ”と思えるくらい、すごくストーリーになっています。あと私は曲タイトルからも「ラストソング」が最後だろうと思っていたんですけど、「RUN and RUN」が最後の曲なんです。「ラストソング」からの流れもすごく良くて、自分たちのアルバムのことながら、「RUN and RUN」を最後に持って来るなんて素晴らしいな〜と。

ayaka 未来に向けて走るという意味で、ラストが「RUN and RUN」なんですよ。

――「ラストソング」には、これまでのシングル曲にちなんだワードが散りばめられています。

ayaka そうなんです。この1曲で、私たちの歴史も感じてもらえるものになっています。作家さんの愛情も伝わって、歌っていてすごく嬉しかったですね。

アイドルとヒップホップの狭間で

hime(撮影・榑林史章)

hime(撮影・榑林史章)

――大江千里さん、かせきさいだぁさんやGAKU-MCさんなど、いろいろな方が作詞・作曲などで参加しています。そもそもお2人は、こういうみなさんの音楽は聴いていましたか?

hime 私はもともとヒップホップが大好きで、だから女の子でヒップホップをやっているlyrical schoolに入りたいと思ったんです。GAKU-MCさんがやっていらしたEAST END × YURIさんの「DA・YO・NE」は知っていましたし、日本語ラップは勉強の意味も含めてたくさん聴くようにしています。

ayaka 私は、洋楽のヒップホップばっかりで、正直J-ラップはあまり聴いてこなくて。そもそも2010年にlyrical schoolが始まったときは、ラップ経験のない子ばかりが集まったので、まずは日本語ラップを聴くところから始めました。今はだいぶ詳しくなったと思いますけど、私はむしろアイドルのほうが好きなんです。

――アイドルとヒップホップの融合という独自のスタイルは、最初から受け入れられたわけではなかったですよね?

ayaka 大変な時期もありました。ヒップホップイベントに出てもアイドルイベントに出ても、どっちもアウェーなので盛り上げ方が分からなかったし、どうやったら自分たちの固定ファンが付くのか、ライブをやるたびにみんなで考えました。でも曲が増えていくにつれて、徐々に自分たちの色も出せるようになっていきました。

――何か自信がついたきっかけは?

ayaka 2011年にtofubeatsさんに作っていただいた「プチャヘンザ!」を歌ったときです。この曲が、初めてマイクリレーをした曲なんです。メンバーの中で、それぞれがどういう個性を求められているのかが明確になって、自分の役割や見せ方もはっきりしたと言うか。

――ライムスターの宇多丸さんが、褒めてくれたこともありましたね。

ayaka はい。ラジオ番組だったかな? 良いと言っていただけて、それからヒップホップのファンの方からも少しずつ認めてもらえるようになったと思います。

――今自分たちの軸足は、アイドルかヒップホップかどっちにあるのですか?

ayaka 両方です。いいとこ取りと言うか。アイドルとヒップホップの両方に、片足ずつを突っ込んでいる感じです。

hime 確かにそうです。どっちの畑に行っても戦えて、でもどっちかに偏るわけではない。そういうスタンスのグループは他にはいないので、自分たちだけの武器だと思っています。

ayaka 他にもっとたくさん、ヒップホップをやるアイドルさんが出てきてくれたらいいのになって思います。

――他にも出てきたら、自分たちの個性が埋もれてしまわない?

ayaka そこは自信があります。うちには、himeがいますので!

hime それに、他にもたくさんいたほうが、自分たちにとっても良い刺激になると思うので。

来年は花を咲かせたい

ayaka(左)とhime(撮影・榑林史章)

ayaka(左)とhime(撮影・榑林史章)

――では、今後やってみたいことや目標は?

ayaka 今年のTIF(TOKYO IDOL FESTIVAL)でコラボステージのために、callmeさんに初めて1人8小節分の自己紹介ラップを作ったんですが、作るのにスタッフさんにもすごく手伝ってもらったんです。だから、今後はスタッフさんの手伝いがなくても、自分1人でリリックとかラップのフロウを作れるよう頑張りたいです。

――トラックを作ったりは?

ayaka ムリです〜。機械は苦手なので。

hime 私はやってみたいです。ラップもリリックもトラックも、機会があれば全部チャレンジしたい。父親は一般人なんですけど、洋楽のヒップホップが好きで、趣味で曲を作ったりもしているんです。必要な機材は家に揃っているので。あとは、この1年良い意味で満足することはなくて、とにかくラップがもっと上手くなりたいのが一番です。自分の中で限界を決めずに、頑張りたいです。

――目標とする人は?

hime HilcrhymeのTOCさんです。Hilcrhymeでは歌っぽい感じですけど、ソロでやっている活動はがんがんヒップホップなんです。ああいう活動をしてみたいですね。

ayaka 私は……、特にこれというのはないですけど、とにかく名前を知ってもらうことが先決かな、と。

――ayakaさんは、ちょっとふわっとしていますね(笑)。

hime これでもayakaさんがリーダーなんです(笑)。しゃべるとこんな感じですけど、バックステージではしっかりリーダーをやっていて。ダンスの先生すら気づかないことも指摘してくれます。私は自分のことだけで精一杯だけど、ayakaさんはグループ全体もそうだし、一人ひとりを深く見てくれている印象があります。だからayakaさんがいてくれるだけで、安心します。

ayaka あはは。いや〜全然そんなことないです(笑)。でもやっぱり、私が一番歳上だし、himeは本当にヒップホップに詳しくて、ラップが上手いとか、メンバーみんなのことをもっとみなさんに知ってほしいです。だから、「私はいいので、うちの子たちのことをお願いします!」という感じです。握手会のときなんかは、ファンの方から「僕は誰を推せばいいですか?」と、相談されることもあって。それで、「じゃあhimeがいいと思うよ」って。

――ファンからの信頼も厚いということですね。では、来年の展望は?

ayaka 今年は「RUN and RUN」のMVが注目を集めたことで、「スマホの子」とか「縦型の子」とか呼ばれたりしたので、もっといろんなポイントで注目してもらえるような活動をして、肩書きをどんどん更新していきたいです。

hime 今年は、種まきして少し芽が出たみたいな感じなので、来年は花を咲かせたいです!

(取材・文・撮影/榑林史章)

 ◆lyrical school(リリカル・スクール) 2010年に清純派ヒップホップアイドルユニットとして結成、2012年からlyrical schoolに改名し、現在はayaka、ami、mei、minan、himeの5人で活動。これまでに様々な夏フェスやアイドルフェスに出演し、2016年4月にシングル「RUN and RUN」でメジャーデビュー。同曲のスマホジャックMVが話題を集め、カンヌ広告祭サイバー部門他、コードアワード2016などで受賞。11月27日(日) 福岡・Early Believersを皮切りに全国ツアーを開催。12月29日(木)に東京・Zepp Tokyoでファイナルをおこなう。

作品情報

lyrical School メジャー1st album「guidebook」

lyrical School メジャー1st album「guidebook」

lyrical School
メジャー1st album「guidebook」
2016年11月16日発売

1.-old-(skit)
2.GOLDEN
3.プレイルーム
4. おしえて
5.DO IT NOW!(HEY!HEY!HEY!)
6.サマーファンデーション
7.-☆☆☆-(skit)
8.リリシスト
9.マジックアワー
10.恋わずわず
11.-too old-(skit)
12.ラストソング
13.RUN

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