約半年にわたって開催したツアーは延べ34万を動員し、全国へ小田の歌声を届けた

約半年にわたって開催したツアーは延べ34万を動員し、全国へ小田の歌声を届けた

 シンガーソングライターの小田和正が10月29日・30日、沖縄県宜野湾市の宜野湾海浜公園屋外劇場で、全国ツアー『KAZUMASA ODA TOUR2016 君住む街へ』の最終公演をおこない、24会場48公演におよんだツアーを締め括った。4月20日に発売したオールタイムベストアルバム『あの日 あの時』を引っ提げ、4月30日の静岡エコパアリーナから約半年にわたって開催してきたツアーは延べ34万を動員した。そして、9月27日・28日には、東京・国立代々木競技場第一体育館で2度目の東京公演を開催。46年の歩みを網羅したベストヒットとも言える選曲で、約3時間、オフコース時代の曲「さよなら」やソロでの大ヒット曲「ラブ・ストーリーは突然に」などアンコール含め全30曲を披露。小田の心を癒す透明感のある歌声によって会場に訪れたファンを魅了した。このうち、9月27日・東京公演の模様を以下にレポートする。

至高の歌声に魅了

小田和正

小田和正

 来年から大規模な改修が予定されている国立代々木競技場第一体育館は、大勢の観客で埋め尽くされていた。ステージ後方にも観客を入れる360度のセットが組まれていた。アリーナを枝の葉のように花道が伸びている。花道中央にはグランドピアノの姿も見える。BGMには米・ロックバンドのKISSの「Rock and Roll All Nite」などノリの良い楽曲が流れ、どのようなライブが展開されるのか、このステージセットを見ているだけでもワクワクさせられた。

 定刻が過ぎ暗転すると、ステージ後方のスクリーンに小田のヒストリーを遡るVTRが流れる。46年の歩みを振り返るような映像に観客も目を奪われる。そうしたなか、サポートメンバーがステージに登場。最後に小田が盛大な拍手のなか、颯爽とステージに登場した。ギターを抱え「wonderful life」でライブは始まった。クリスタルのように透き通る小田の歌声が、会場に響き渡った。ハンドマイクに切り替え、花道を歌いながら進んで行く小田。観客に語りかけるように「こころ」を温もりのある声で歌い上げていく。

 オフコース時代の楽曲「眠れぬ夜」を披露。Gibsonのアコースティックギターの乾いたサウンドが小田の歌声を後押ししていく。ここでMCを挟む。9月22日に鈴木雅之の『masayuki suzuki taste of martini tour 2016 Step 1.2.3 ~dolce Lovers~』に出演した時の心境を語った。小田は「マーチン(鈴木雅之の愛称)のライブに出てブーイングされたらどうしよう」と心配していたことを語り、その背景には「昔フォークソング全盛の時代、よく帰れと言われたトラウマがそうさせる(笑)」とユーモアを交え話した。

 故郷である横浜を舞台に書いた今の季節にぴったりの楽曲「秋の気配」を披露。ブルーのライトに照らされ、しっとりと歌う小田。そして、しばしの静寂のなか、小田がピアノの前に座る。始まったのは「さよなら」、小田によるピアノの伴奏と、シルキーで力強い歌声に観客も耳を傾ける。「こんなにキーが高い曲は本番でしか歌わない。いつも出ないかもしれないなあと思いながら歌うんですけど、あ〜(声が)出た出たって思いながら歌ってます」と笑いを交えながら語った。

小田和正

小田和正

 小田の誕生日が9月20日で近かったことから会場からは、「誕生日おめでとう〜!!」と声が掛けられる。その声に反応し、「では、誕生日ということで皆さんに歌ってもらいましょうか。でも、今まで皆さんと一緒に歌うということは、やってこなかったのですがたまにはいいかな」と小田が初めて書いた曲だという「僕の贈りもの」を、観客のシンガロングとともに届けた。観客と一緒に歌うという貴重な瞬間でもあった。

 天井から木漏れ日のような光が降り注ぐなか「時に愛は」を披露。小田と稲葉政裕(Gt)によるギターソロの掛け合いも美しい旋律を奏でた。ピアノの伴奏にバイオリンのメロディが叙情的に響いた「言葉にできない」。小田の歌声によってまさにタイトルのように“言葉にはできない”癒しの空間に。

 そして、「Yes-No」では観客も総立ちで盛り上げる。サビでは小田が観客にマイクを向け歌ってもらう場面も。「ありがとう〜」と感謝の言葉を告げながら、ステージを走る姿は我々に活力を与えてくれるようだった。ここで、“ご当地紀行”という小田がツアーで訪れた場所を探訪する映像が流された。ご当地で名所や出会ったファンとの交流や、小田の会話に和やかな雰囲気に会場が包まれた。

本当に故郷っていいもんだな

小田和正

小田和正

 再びステージに戻ってきた小田。「the flag」で後半戦はスタート。<僕はここにいる>と強い存在証明を掲げた楽曲によって会場の一体感は高まっていく。続けて、16ビートのリズムが心地良い「伝えたいことがあるんだ」へ。派手なライティングの中、エキサイティングなギターソロを決める稲葉に視線が集中する。

 「恋は大騒ぎ」では、カラフルな巨大風船が客席に放たれた。小田もステージに運ばれてきた風船を歌いながら押し返していく。そして、「キラキラ」ではステージを降り、客席を縫うように歌い歩いていく小田。天井のミラーボールが回転し、大ヒット曲「ラブ・ストーリーは突然に」へ。小田の合図で観客も大合唱。一つの場所にとどまることなく、観客に会いに行くように歌い続ける姿は「君住む街へ」へを体現しているようだった。

 優雅な金原千恵子を筆頭としたストリングスサウンドが印象的だった「風と君を待つだけ」、<同じ時を生きているんだ>という歌詞が胸に響いてきた「たしかなこと」と小田の歌がより一層言葉に深みを持たせてくれた。

 MCでは「ツアーの度に思うんですけど、今回は特に思いました。本当に故郷っていいもんだなと。皆さんも大事にしているとは思いますが、さらに愛おしく思って大事にしてほしい」と語り、故郷への思いを歌に乗せ「my home town」を情感を込めて丁寧に歌い上げた。そこに様々な地域の映像がスクリーンに映し出されさらに曲の世界観を鮮明にしてくれた。

 ライブも終盤に近づいてくると「さよならは言わない」、「今日も どこかで」を披露。歌っている小田の背中からは、言葉以上のものが宿っているように思える瞬間があった。マイクスタンドを使用し、手を後ろに組み、少しリラックスした雰囲気のなか届けられたのは「風は止んだ」。凪の海に響いているかのような優しい歌声が、会場の隅々まで浸透していくようだった。

 本編ラストに届けられたのは、ツアータイトルでもある「君住む街へ」。ゆっくりと花道を歩きながら歌う。ツアーで周ってきた場所にも届いて行きそうなほどの、美しいロングトーンの歌声が想いを乗せて“君住む街"へ届いていくようだった。感謝を告げステージを後にし、本編を終了した。

ライブの模様

ライブの模様

 アンコールの手拍子が響き渡るなか、小田とバンドメンバーがステージに。アンコールはピアノが歌に寄り添うような、そんな感覚を味あわせてくれた「愛になる」、サビでの観客のシンガロングが気持ちの良い一体感を魅せてくれた「YES-YES-YES」、子守唄のような温かさを感じさせた「やさしい夜」を披露。その歌声に大きな拍手が送られた。

 鳴り止まないアンコールにダブルアンコールに応えた。「ダイジョウブ」では、観客に手を振り感謝。そして、「また会える日まで」をバンドメンバーとともにアカペラで美しいハーモニーを聴かせた。ラストは、伸びやかな歌声と、アコースティックギターのサウンドが煌びやかに響く「NEXTのテーマ -僕等がいた-」でライブの幕は閉じた。スクリーンには“また会える日まで”のメッセージが映し出されていた。

 MCでは訪れたファンの声にも応えてくれる、小田の優しさがあふれていた好演であった。歌っている最中でも何度も“ありがとう”と感謝を告げる姿が印象に残った。ファンとともに歩んできた46年。その感謝の気持ちが全面に出たステージに酔いしれたひと時であった。

(取材・村上順一)

セットリスト

小田和正「KAZUMASA ODA TOUR2016 君住む街へ」
9月27日 東京・国立代々木競技場 第一体育館

01.wonderful life
02.こころ
03.眠れぬ夜
04.秋の気配
05.さよなら
06.僕の贈りもの
07.愛を止めないで
08.時に愛は
09.心はなれて
10.言葉にできない
11.I LOVE YOU
12.Yes-No
13.the flag
14.伝えたいことがあるんだ
15.恋は大騒ぎ
16.キラキラ
17.ラブ・ストーリーは突然に
18.風と君を待つだけ
19.たしかなこと
20.my home town
21.さよならは言わない
22.今日も どこかで
23.風は止んだ
24.君住む街へ

ENCORE

01.愛になる
02.YES-YES-YES
03.やさしい夜

ENCORE2

01.ダイジョウブ
02.また会える日まで
03.NEXTのテーマ -僕等がいた-

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