ダブルアンコールまで全22曲を熱演。訪れたオーディエンスをGOOD ON THE REELワールドに惹き込んだ(撮影・安藤未優)

ダブルアンコールまで全22曲を熱演。訪れたオーディエンスをGOOD ON THE REELワールドに惹き込んだ(撮影・安藤未優)

 ロックバンドのGOOD ON THE REELが9日、東京・日比谷野外音楽堂で、50回目の開催となった主催ライブイベント『「HAVE A “GOOD”NIGHT vol.50」ANNIVERSARY SPECIAL』をおこなった。メンバーは千野隆尋(Vo)、伊丸岡亮太(Gt)、岡﨑広平(Gt)、宇佐美友啓(Ba)、高橋誠(Dr)の5人。バンド結成10年にあたる今年。当時からの夢の一つである、日比谷野外音楽堂に辿り着いた。ダイナミクス豊かなエモーショナルな歌と演奏で、ダブルアンコールまで全22曲を熱演。訪れたオーディエンスをGOOD ON THE REELワールドに惹き込んだ。アンコールでは新曲「砂漠」を披露し、これからのバンドのアティチュードを示した。

50回目のHAVE A "GOOD"NIGHTへようこそ!!

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 午前中まで降り続いていた雨が午後には止み、曇り空が広がる日比谷野外音楽堂。訪れたオーディエンスは50回目となる、この記念すべきライブの始まりを待ち焦がれているようだった。日も暮れてステージ後方に掲げられた「HAVE A “GOOD” NIGHT」の青い幕がライトに照らされ存在感を放っていた。定刻を少々過ぎたところで、暗転するとモールス信号のような発信音が印象的なSEが流れ、メンバーがステージに登場した。最後にボーカルの千野がイエローのタオルを掲げながらステージに登場。

 「10年目にして辿り着いた野音が来ました! 50回目のHAVE A “GOOD” NIGHTへようこそ!!」と千野が投げかけ、50回目の自主企画は「雨天決行」で幕を開けた。一体感のあるスピーディーなバンドサウンドで、序盤からオーディエンスの冒険心を煽るようにアクセル全開で突っ走る。千野も笑顔で腕を掲げ、堂々たる振る舞いでステージングを魅せる。「ユリイカ」、「それは彼女の部屋で二人」とアッパーチューンを立て続けに演奏。エモーショナルな歌と演奏でオーディエンスを惹きつけていく。

 「今まで作ってきた曲を今日この場所で演奏できることが嬉しい、たくさんの曲を生んできたから…そして、今こうやってたくさんの人の耳に届くことができて、すごく喜んでいると思います。最後まで受け取ってほしい」と千野が想いを語り、伊丸岡のどこかもの哀しいアルペジオから「2月のセプテンバー」へ。情景が見えてくるような演奏に乗って、言葉をメロディとともに紡いでいく千野。虹が掛かるように右から左へライトが点滅し、楽曲を彩る。「花」では、世界観に入り込み感情を叩きつけるような歌声で、物語をダイナミックに演出していく。

 浮遊感漂うイントロが日比谷の夜空を包み込んだ「エターナル・サンシャイン」へ突入。眩い太陽のようなライティングは、まさにエターナル・サンシャインのようだった。続いて伊丸岡のソリッドなギターから「夕映」へ。<だから ねえ ねえ 僕をね…忘れないでほしいんだ♪>とオーディエンスに語りかけるように歌う千野。オーディエンスもリズムに合わせ手を挙げ揺らし、それに応えているようだった。そして、岡﨑の激しいトレモロギターソロが高揚感を煽っていった。

野音でのアコースティックは一つの夢だった

ライブの模様(撮影・安藤未優)

ライブの模様(撮影・安藤未優)

 ここから、メンバー皆が椅子に座り、アコースティックコーナーへ。星こそ見えなかったが虫の音が聞こえるなか、ノスタルジックな気分にさせてくれた「夏の大三角」、情緒豊かに表現した「つぼみ」、「野音でのアコースティックは一つの夢だった」と語る千野の言葉から「24時間」を丁寧に歌い上げた。アコースティックならではのしっとりとしたサウンドで、また違った趣を醸し出しグっと言葉が前に出てくる。

 宇佐美の「起立!」の掛け声から再びエレキセクションに。オーディエンスの手拍子が降り注ぐなか、「雨の音で踊りましょう!」と千野が投げかけると、「rainbeat」へ。高橋の叩き出す、フロアタムを使用したパワフルなリズムが大粒の雨を表現しているかのよう。そのドラムを後押しするかのように、宇佐美のベース音がソニックブームのように大気を震わせる。続いての「ゴースト」では疾走感あるビートにのって、ステージを伸び伸びと動き回る千野。

 「生きていく証を見せ合いましょう」と千野が告げ、「シャボン玉」へ。ステージ前方から大量のシャボン玉が舞い上がった。それに呼応するかのようにオーディエンスも持参したシャボン玉を客席から放つと、野音の空が一面のシャボン玉で埋め尽くされるという絵も言われぬ光景が広がった。「みんなと作った約束の景色だから忘れないでください」とこの景色への想いを語った。

新曲「砂漠」を披露

ライブの模様(撮影・安藤未優)

ライブの模様(撮影・安藤未優)

 高橋が野音の歴史について語る。自身の兄と野音が同い年だということから、家族代表として観に来ている兄に向けて次曲への振りをすることに。「かわいい弟の勇姿を家族代表として見届けてください」という振りから「REM」へ突入。伊丸岡、岡崎、宇佐美の3人もステージ前方でハードエッジなサウンドでギアをさらに上げていく。そして、未来への活路を照らし出す「サーチライト」へ。光の先に手を差し伸ばすオーディエンスの姿が印象的であった。

 さらに加速度を上げるように「ホワイトライン」へ。バンドとオーディエンスのエネルギーが渦巻いていくような瞬間。岡崎も拳を振り上げ、その会場の勢いを表現しているかのようだった。「もっと輝くように笑えるように願いを込めて、素晴らしき今日を…始めよう!」と千野が叫び「素晴らしき今日の始まり」を届けた。

 千野は「これは無理だとか決めつけたけど、一歩踏み出してみたら案外出来ちゃったりするもんです。世界なんてもっと簡単でいいじゃん。君が生きやすく生きられればいいんだよ。たくさん笑おう、たくさん歌おう」と、本編ラストは「シャワー」を演奏。4つ打ちのバスドラムに煌びやかなギターが絡みつく。歌詞とリンクするように赤、青、銀と3種のテープが発射され、シャワーのように野音に降り注いだ。<赤と青をうまく回して♪>と歌詞に合わせ会場全体で腕を回す景色が広がった。演奏が終了し感謝を伝えながらステージを去るメンバーたち。

 アンコールの手拍子が鳴り響く中、再びステージに戻ってきたメンバー。現在、楽曲制作をおこなっているという報告をすると、新曲「砂漠」を披露。ディレイの効いたギター、ダウンピッキングで力強いベース、期待を裏切らないサウンドで展開。オーディエンスも新曲に目と耳を集中させているようだった。これからのバンドのアティチュードを示しているような楽曲であった。

 そして、ライブでは久しぶりの楽曲だというミディアムナンバーの「うまくは言えないけれど」を届ける。バンドの出す温かいエナジーが夜空に吸い込まれていくよう。そして、キラーチューン「ハッピーエンド」へ。開放感あふれるサウンドは未来への希望を与えてくれた。鳴り止まない拍手にダブルアンコールに応えたメンバー。「今日この日がみんなの中でつぼみとなって、いつか思い出して花開いた時に少しでも笑えるように願いを込めて。かけがえのない日々を送ってください」と千野の言葉から最後にもう一曲「Mr.Week」を叙情的に届け、『HAVE A “GOOD” NIGHT vol.50』の幕は閉じた。

 千野のエモーショナルな歌とバンドの出す空間を巧みに使った演奏で、彼らならではの世界観にどっぷり浸ったひとときであった。新曲からも垣間見れたように次なるステップへ踏み出したGOOD ON THE REEL。この野音ライブは確実に彼らのターニングポイントの一つになったことだろう。(取材・村上順一)

セットリスト

GOOD ON THE REEL presents 『HAVE A "GOOD"NIGHT vol.50』ANNIVERSARY SPECIAL at 日比谷野外音楽堂

1.雨天決行
2.ユリイカ
3.それは彼女の部屋で二人
4.2月のセプテンバー
5.花
6.エターナル・サンシャイン
7.夕映
8.夏の大三角
9.つぼみ
10.24時間
11.rainbeat
12.ゴースト
13.シャボン玉
14.REM
15.サーチライト
16.ホワイトライン
17.素晴らしき今日の始まり
18.シャワー

EN1.砂漠(新曲)
EN2.うまくは言えないけれど
EN3.ハッピーエンド

ENCORE2

EN1.Mr.Week

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