歌手の杏子が9月28日に、両A面シングル「イカサマ美男子feat.リンダ/Magenta Butterfly」をリリースする。杏子と言えば、ソロで魅せる妖艶さ漂うハスキーな歌声と、デュエットでは相手役の魅力を最大限に惹き出しながらも、その周りを優雅に飛ぶ蝶のように誘惑めいた歌声が特長だ。そして、今回の新曲「イカサマ美男子feat.リンダ」では後者が引き立つツインボーカルを採用した。その相手役に、3ピースロックバンドのN’夙川BOYS(現在活動休止中)のリンダを選んだ。リンダ招聘のきっかけは、杏子がふと手にした雑誌に載っていたリンダの“目力”に惹かれたから。それからトントン拍子に話が進み、作詞作曲を、BARBEE BOYSの盟友・いまみちともたか(イマサ)に依頼、ひと夏のアバンチュールを描いた。そのイマサは、2人のレコーディングをみて「まるで双子のようにタイミングが似ていた」と驚いたという。相性抜群の2人が織りなす恋の慕情。互いの印象などについて杏子とリンダに話を聞いた。
男の人に不穏な動きがあったらシャットアウト
――8月10日におこなわれた、下北沢GARDENでのライブ『いまみち杏子のお・も・て・な・し夏のヒ・ト・サ・ラ・イ【仮】』では、杏子さんの誕生日を祝おうと、ヒトサライや藤井隆さん、OKAMOTO’Sのオカモトコウキさん、そして、リンダさんに、BARBEE BOYSのエンリケさんとKOISOさんもサプライズで登場するなど豪華でした。杏子さんからみた感触はいかがでしたか。
杏子 色んなゲストをお呼びしての“おもてなし”と言ったものの、ヒトサライとの対バン形式になりつつ、最後にリンダが出てきて、ちょっとパンチを効かせようと思ったので、企み的には上手くいったなと思っています。
――ライブの企画はいつ頃から始まっていたのでしょうか?
杏子 去年のイマサ(いまみちともたか)のバースデー前日に、下北沢GARDENでライブがあって、その時は私がサプライズの仕込みをしたので、イマサが「じゃあ、お返しに」という話になって私のバースデーの8月10日にライブが決まったんです。その割には、意外と何も決まらずに「大丈夫なのか?」みたいな感じだったんだけど、こっちはこっちで進めていって、リンダを巻き込んでみたいな感じでした。リンダに出演を快諾してもらって、「そのイベントの時に2人で歌える新曲をイマサに作ってもらえたらいいな」という事になったんです。
杏子 そっちはそっちで進行していって、私はUNDER NORTH CLUB BANDという自分が最近プライベートでやっているバンドに、藤井隆君をゲストに呼ぼうという事になり、あとはそれぞれのバンドに関してはお任せにしてあったんです。
――エンリケさんやKOISOさんといったあれだけの面子を揃えるというのは凄く大変なのではないかと思いました。
杏子 ですよね。よくぞ皆さんスケジュールを合わせて頂いて…。
――「イカサマ美男子feat.リンダ」は今回のライブで初披露でしたね。ステージからみた観客の反応はいかがでしたか?
杏子 やっぱり生でやることで、更に歌詞が生きてきたなと思いました。レコーディングはレコーディングでもちろん面白さはあったけど、実際にお客さんに向かって歌っているリンダを見て「私の方が先」と自分の方もどんどんエンジンがかかって、上がってくる感じでした。
――歌詞も男性に対して攻めの姿勢ですよね。
リンダ 2人で1人の男に対して争っているけど、結局、男に対してはすごく否定的な感じがしているなとは思っているんです。
――歌詞はご自身の経験に基づくリアルな部分もあるのでしょうか?
杏子 相手の男の人に不穏な動きがあったら、私は一切話し合わなくてシャットアウトするので、その後その人がどうなっているのか、相手の人とどうなっているのか、一切話さないですね(笑)。だけど、友達が恋人をリサーチしている状況はよく見ます。探偵会社を使ったり。でも、その当事者の女の子同士が結局連絡を取り合って仲良くなって、男性を泳がだから気を付けた方がいいよ、男子という。そこに変な友情が入ったりとか。私は一切そういう状況にはしないですね。怪しいと思ったら何の連絡も取らない。「それが駄目なのよ!」とよく言われますけど。
――駄目なんですか?
杏子 「杏ちゃんもっと話し合ったら?」とか言われます。たぶん、そこで取り乱す自分が嫌なんじゃないかと思います。そういう自分は見たくないという(笑)。
――リンダさんはそういう状況下になったことは?
リンダ 経験はないですけど、職場とか近しい所ではそういう恋の話を聞いたりしましたね。
――意外と周りではあるんでしょうか?
リンダ 実は水面下で、ありますよね。
「イカサマ美男子」はひと夏のアバンチュール
――歌詞で<タワケ、タワケ>と印象的なフレーズを連呼していますが、この歌詞を初めて読んだ時に感じた事は?
杏子 私は時代劇を想像してしまいました(笑)。まわりの女の子に思わず、「“タワケ”という言葉って大丈夫?」と聞くくらい、リサーチをしましたね…。若い子が「“タワケ”って何ですか?」と言っていたくらいなので。
――“タワケ”という言葉自体を知らない方もいたんですね。
杏子 「ほら、時代劇とかで『このタワケ!』とか言っているじゃん?」と言ったら、「ああ、そうですね」くらいなんです。
リンダ 実際には全然使われていない言葉ですよね。
――現代では基本的には使わないと思います。
リンダ 「イカサマ」もそうだし「美男子」もそう。
――「イカサマ」はギャンブルの世界では使うかもしれませんが、「美男子」も今はあまり使われず「イケメン」と言いますよね。
杏子 あと、読み方も美男子は「びなんし」と「びだんし」と両方の発音があって、私は「びなんし」だと思っていたんです。「びなんびじょ(美男美女)」とも言いますし。イマサに聞いたら「“びだんし”で」と言うんです。気になって調べたら、発音は両方あるとわかって。
――濁点が付いているかどうかで言葉の印象は変わると思うんです。濁点が入っている名前は力を持っているという話も聞きます。
杏子 そういえばこの間、ロックバーに電話して喋っていたら、その店名に濁点が入っていて、確かに「濁点の入っている店は売れる」なんて話をしていましたね。
――やはりそうなんですかね?
杏子 「BARBEE BOYS(バービーボーイズ)」も(笑)。「イカサマびなんし♪」だったらパンチがなくて流れていっちゃうかもしれませんしね。
リンダ けっこう韻を踏んでいたりもしますしね。
――歌詞にある「春歌上等」という造語も面白いですね。
リンダ 私も気になってイマサさんに聞いたんですけど、「春歌上等」「用意秋冬」じゃないですかなので、「夏がないですね」とお聞きしたら、これは「夏の話だ」と仰ったんです。
――「イカサマ美男子feat.リンダ」は夏の話なんですか?
リンダ 「ひと夏のアバンチュールみたいな感じの、曲自体が夏なんだよ」と言われて「さすが!」と思いました。
杏子 私は、季節感はないなと思いましたけどね。それ、リンダに指摘されて「あっ!」と思ったんじゃないの(笑)。だって<夏はあっさり 冬はこってり>とか言っている時点で…。
リンダ いやいや、わざわざ「春歌上等」という言葉を使うという事は絶対に狙っていると思いますよ。そこの「夏」をあえて「歌」に変えたというところに、こだわりを感じたんですよね。
――確かにその視点で見てみると「夏」という単語がないのは気になりますね。
リンダ いろんな所にイマサさんのこだわりがあるんだなと思って。
杏子 エロティックさを出すための「春歌」かも。
リンダ 色気が要りますよね。
最後にツルっと歌ったのがパーフェクト
――レコーディングした時は、いまみちさんから歌の要望などありましたか?
杏子 私には「あんまり熱く歌わないでね」というくらい。ちょっとクールくらいが良いと言われていて、クールに歌っていたんですけど、1人で歌い始めたときに熱を帯びてきて、シャウトしていたら「う〜ん。それもいいかもね!」みたいな話になったんです。だから、色んなバージョンを私は録って、後はオイシイところをピックアップして、という風にしました。
リンダ 先に杏子さんと一緒に歌って、次に私が歌って、次に杏子さんという順番だったんですけど、始めはそんなに歌詞の感情を熱く入れないで、「タワケ」も控えめに歌っている感じだったんです。私はその調子で歌っていたんですけど、杏子さんがだんだんと飲み込んで曲に入っていて、最後に「ツルっ」と歌ったのがパーフェクトで。イマサさんも「素晴らしい!」となっていました。
――レコーディングはけっこうファーストテイクが良いという時がありますよね。
杏子 多いですね。ファーストテイクはあまり考えずに録ってますから。それが良いパターンがあります。
――今回は逆に最後に録ったテイクが良かったという珍しいパターンですね。
杏子 珍しいよね。多分、音の感じと歌詞の感じの中で、イマサの思う感じで歌うのが一番だとは思っていたけど、自分がちょっとズレてきているなと思ったので、それで「最後に一回ツルっと全部自分の好きなように歌っていい?」と言って歌ったんです。その方法はよくやるんですけど、外す時もあるんです。今回は上手くハマったかな。
――これは杏子さんにしか出来ないですよね。自身が歌いたいように歌ってみるというのは。リンダさんだったらいまみちさんに言い出しづらかったりしますか?
リンダ 「こういう感じかな?」という感じではあったんですよ。ここを、気を付けるというポイントがあって。それを意識しながら歌って、ミスっていたら多分そこは違うテイクを使ったりというのはあると思うんですけど。そういう風に「全部歌いたいです」というのは私からはなかったです。
杏子 リンダは仮歌を送ってきてくれたんだよね。そうしたら、イマサが何も注文を出していないのに、リンダが歌ってきたテイクがイマサ的にはビンゴだったみたいで。
――もう全部汲み取っていたんですね。
リンダ 杏子さんは仮歌やらなかったんですよね?
――ぶっつけ本番で?
杏子 そうそう。やっていなかったからリンダのを聴いて「こういう感じで歌ったらいいかな」とかその場で考えつつ。
リンダ 私が曲を聴かせて頂いた時は、まず私はN'夙川BOYSというバンドをやっていたんですけど、そのバンドの時の歌のキーを聴いて「リンダのキーはこれくらいが合うだろう」と杏子さんのキーとの間をとって作って下さったんです。でも、N'夙川BOYS自体が男女ボーカルの間のキーだったので自分のキーではないんですよ。だから歌ってみたら、ちょっと低めな感じだったので、それで1音上げて頂いて。1音変わるとだいぶ世界観が変わりますよね?
――キーの変更は曲の印象を変えますよね。
リンダ どっちのキーも歌って、それをお返ししたんです。もし、元のキーが良いのならその方が良いですし。曲を作っている方の出したいものをやりたいじゃないですか? だから、それでお返ししたら「そのままで大丈夫」と言って頂いて。最初は、シンセの音の仮メロで送って頂いて、次は杏子さんの要望でイマサさんの歌い回しの音源を頂いたんです。
――いまみちさんの歌う仮歌ですか?
杏子 楽器の歌メロと照らし合わせてもニュアンスがわからないから、イマサが良い声なのも知っているから、「歌ってよ」としつこく言って(笑)。シンセのメロディだと何かスーパーマーケットで流れているBGMみたいでイメージが湧かなかったし(笑)。
――その仮歌バージョン聴いてみたいですね。
リンダ それでイマサさんに仮歌を歌ってもらえたから、イマサさんの押さえたい所を押さえて歌えたのかなとは思います。
小悪魔ちゃんを探していた
――リンダさんは、杏子さんが一緒にやるボーカリストを探しているなかで、雑誌で見つけたと聞きました。杏子さんは一緒にやるボーカリストを探すアンテナを常に張っているのでしょうか?
杏子 その話がたまたま上がっていたんですよ。8月10日のライブでは、ゲストに誰を呼ぼうかという話がスタッフとの間であったんです。それでシングルを作らなきゃ、女子とデュエットをやれたらいいよね、とかアイディアがいくつも出ている時期で、何となくアンテナは立てていたんです。
そして、ヘアサロンで雑誌を読んでいる時に、そこに載っていたリンダの目力にピーンときて。すぐに、その雑誌に写っていたリンダの写メをスタッフに送ったんです。ただ、この人は忙しそうだし、どうだろうという話もあったけど、「聞くだけ聞いてみよう」というところからスタートしたんです。
――杏子さんがその時、違う雑誌を読んでいたらこの話はなかった?
杏子 本当にそうですね。リンダの事は知ってはいても、凄く昔に福岡ですれ違ったというくらいで。私、もともとミュージシャン仲間があまりいないので「誰かいないかな?」という感じだったので、あの時その雑誌をめくらなかったら…。
――そのお話が来た時、リンダさんはどう思いましたか?
リンダ 新曲の話はまだなくて、まずライブの話から先に頂いていたんです。だから「何を歌うんだろう?」と思いました。BARBEE BOYSを聴いてきているので、杏子さんと女性とのデュエットのイメージがつかなかったです。杏子さんと私と歌を合わせた事もなかったから、合うかもわからないと思って。私、対応できるかなとか思ったりして、けっこう怖かったです。
――それでもワクワク感もあったのではないですか?
リンダ そうですね。でもやりたい、こんな機会たぶん一生ないし。
――たまたまその雑誌を読んだ所からの運命ですね。
リンダ すごく色んな葛藤があったんですけど、見えない未来に懸けてみようと思って(笑)。
――杏子さんと一緒に歌ってみてどうでしたか?
リンダ 声が合うなって思いました。「なんか双子みたい」とイマサさんにも言って頂いて。
――フィーリングの相性もあるのでしょうかね?
杏子 しっかり合わせなければいけないと思って歌った訳ではないけど、リズムや音の切るタイミングがピタッと一緒だったり。
――それは重要ですよね。
杏子 リズムの縦を揃えるのはけっこう大変かなと思っていたら、タイム感が一緒だった。
――それは双子と言われても納得ですね。
リンダ イマサさんが言ったのはきっとそういう事なんですよね。
――揃えようと思っても難しいと思います。
杏子 タイム感はそれぞれ違うけど、それが見事にハマッたので。
――杏子さんから見てリンダさんの魅力とは?
杏子 やっぱり小悪魔っぽいこの可愛さは演出しようとしてもなかなか出せないと言いますか。ちょっと“強め”とか“セクシーっぽい”感じは、歌う時に、息の成分を多めにして出すと少しコントロールが出来るんだけど、“小悪魔な感じ”というのはなかなかやろうと思って出せるような歌い方ではないですね。
リンダ 小悪魔ちゃんを探していたんですよね?
杏子 そう(笑)。本人は普通にしているんだけど、ストンとしながら爪痕を残していくような。なかなか真似をしようと思っても出来ない感じの歌い方、声の出し方ですね。2人でハモッている時はちょっと似ている時もあって、「あれ? 私が上を歌ったはずなのに、下だっけ?」と思って、イマサが「でしょ? どっちかわからないんだよ…!」と言うんです。
――声の倍音成分が似ているのでしょうかね?
リンダ そうなんですかね。初めはひたすら驚いていましたね。
ワンテイクでOKが出た
――バンドのレコーディングの時、お2人は立ち会ったのでしょうか?
杏子 立ち会おうかと思ったらもう終わっちゃってたんだよね(笑)。
リンダ 1テイクでOKが出たみたいなんです。
杏子 下の階にスタジオがあって上の階にはビリヤードとかあるようなスタジオが横浜にあって、リンダとその上の階にいたんです。ちょっと衣装の話なんかをしていたら、ハマ君(ハマ・オカモト=OKAMOTO’S)とイマサとか男子達が上がってきて、サウンドチェック終わったのかな? と思ったら「録り終わっちゃった!」とか言うんです。
――ワンテイクは早いですね。それは前の「あなたにアディクション with いまみちともたか & OKAMOTO’S」の時のコンビネーションが活きているんでしょうね。
杏子 多分、イマサも2人の感じもわかっていて、2人の欲しい所もわかっていてくれたからだと思います。
――OKAMOTO’Sの2人(ハマ・オカモトとオカモトレイジ)の演奏というのはどういう所に魅力があると思いますか?
杏子 バンドとして格好が良いから、積み上げていって常に進化していっている所が。ドラマ『火花』の主題歌「BROTHER」もすごく格好が良かったし。
――OKAMOTO’Sは現代のバンドなのに、どこかノスタルジックな部分もありますよね。
杏子 聴いて探ってるバンドとかが昔のバンドだったりとか、多分そういうところから影響されてたりするから、それでイマサと話が合うみたいなんです。
言葉数が多いから「窒息する!」
――「Magenta Butterfly」についてですが、これは地中海系エクササイズからの?
杏子 地中海系エクササイズの「BAILA BAILA」というのがあって、BAILAはスペイン語で「踊る」という意味なんですけど、そのチームでこだわっているのは、そのオリジナル曲があってそれを1曲頭から最後まで踊りきって、脂肪を燃焼しようみたいな。それでオリジナル曲に毎回こだわってるんですけど、今回は3回目のコラボで「Magenta Butterfly」という曲をやらせてもらって。毎回、普段自分ではあんまり歌わないような歌を山口さん(作曲家・山口大介)とかが作ってきてくれるので、勉強になりますね。だからノリとか難しくて。
――曲調として「イカサマ美男子feat.リンダ」とは全然違いますからね。「Magenta Butterfly」のような楽曲はプライベートで歌ったりはしないのでしょうか?
杏子 いろんなユニットとかを組んだりしていて、歌うのはバラードとかが多いので、こういう感じの曲はなかなか歌わないですね。英詞もけっこう詰めて入っていて。今回はまだ楽な方ですけど。「Magenta Butterfly」は言葉数が多いから「窒息する!」という感じでした(笑)。
――英語で歌う時は、日本語の時とは歌い方のモードを切り替えないと難しいですか?
杏子 英語はちょっと発音が口の奥になります。日本語はもうちょっと前に発音して、英語は奥に行くので声の色も変わるからキーを決めるのがけっこう大変ですね。普通に日本語で歌っている時のキーの設定より上げたら、良い場合と下げた方が良い場合とけっこう変わるんですよ。
リンダ 英語で喋ったら声が高くなる人が多いですよね。
――よそ行きの声みたいな感じでしょうか? 母親が電話で喋る時のトーンのような。
杏子 よそ行きになると思います。あと、変に可愛い感じになったり。
――作詞がJeffrey Danielさんですね。
杏子 JeffreはBAILA BAILAチームと繋がりがあって、ダンスではマイケル・ジャクソンにムーンウォークを教えた方なんです。前にも歌詞を書いてもらった事があって、1回対談をしたんです。穏やかで大人しい印象の方でした。私の声を別の曲で聴いてもらってイメージしてという感じなんですけど、Jeffreも毎回、譜割がわからないと困るだろうという事で仮歌を歌ってもらうんです。私のキーで歌うからファルセットなんです。それが格好良くて。
ステージングで姿勢が悪いなと思った
――地中海系エクササイズというのはヨーロッパではメジャーな存在なのでしょうか?
杏子 わかりやすくする為にそう名前を付けているだけで、曲はどちらかというとエキゾチックな感じですね。特にそこのメインでやっている伊藤由里子先生がエアロビックの世界チャンピオンに9回なられているんです。その世界大会がスペインあたりであったそうなんです。だから、スペインのブレーンがいるんです。BAILAもスペイン語で「ダンス」だし、地中海という言葉で表現すると全然知らない人たちにもわかりやすいかなと思ったんです。
――お話を聞いて合致した所があるのですが、杏子さんのステージングを見ているとスパニッシュな感じがあります。
杏子 私はステージングで姿勢が悪いなと思ったんです。友達にそれを言ったら「クラシックバレエをやると立った姿勢が良くなるよ」と言われたんですけど、「今更な…」と思って1回行っただけでもう嫌になっちゃって。今度は、フラメンコはどうかなと思ってちょっと習ったんです。3カ月やってやめて、また3カ月やっての繰り返しで。結局、カスタネットのところまで行ってやめちゃいました。私たちはだいたい8ビートの感覚ですけど、フラメンコは12拍子だからそういう違いの面白さでやっていたんです。
――そういったバックボーンがあったのですね。
杏子 スパニッシュの踊る感じが面白かったんです。酒場の小さな踊りなので、イメージとしては自分が踊っていて「どの男性がいいかな?」と目星をつけておいて、踊っている間は無視をするけど、最後に目で「捕まえるわよ!」という感じで。踊り終わったら一緒に飲もう、みたいな。
リンダ 魅惑のダンスなんですね。
――それでは最後に皆さんへのメッセージをお願いします。
杏子 聴いてもらいたいというのはもちろんなんですけど、実際に歌うとより上がるので、歌ってみてもらいたいなと思います。バッキングトラックも付いているので友達同士とか女子同士で歌って欲しいなと思います。歌うと余計熱くなって上がるんです。もう忘年会とかでウケると思います。私、OLをやっていた時、入社1年目とか芸をやらされたので「あの時代にこの歌があればな…」と思いました(笑)。
リンダ 歌ってみると、けっこう照れる歌詞とかあるんですよ。ちょっと小っ恥ずかしいような。歌ってみて頂ければわかると思うんですけど。「タワケ」がこんなにもしんどいものなのかと、歌ってみて実感しました(笑)。
――「タワケ」はやっぱりしんどいんですか?
杏子 ブレスなしでずっと歌っていますからね。
リンダ 本当にお腹を使うんですよ。屈んで歌わないとちゃんと歌えないような。
――じゃあこれもエクササイズになりますね。
杏子 なると思いますよ。
リンダ この曲で「お腹から歌う」という事を思い出しました。すごくパワーが要ると思うんですけど。何が言いたいかというと、やっぱり歌ってみて欲しいなという事です。
(取材・村上順一/撮影・冨田味我)
作品情報
杏子「イカサマ美男子 feat. リンダ/Magenta Butterfly」
定価:1500円(税込)
品種:CD
発売日:9月28日
▽収録曲
01. イカサマ美男子 feat. リンダ
02. Magenta Butterfly ~BAILA BAILA2016 Special song~
03. Illumina
04. あなたにアディクション with いまみちともたか & OKAMOTO'S
05. イカサマ美男子 feat. リンダ <Backing Track>
06. Magenta Butterfly <Backing Track>
◆杏子 1992年「BARBEE BOYS」の解散後、ソロ活動をスタート。同年リリースのシングル「DISTANCIA~この胸の約束~」がいきなりのヒット。自身が所属する音楽制作プロダクション、オフィスオーガスタ全アーティストによるスペシャル・ユニット “福耳”の中心メンバーとしても活躍中。2012年、いまみちともたか、OKAMOTO‘S、TRICERATOPS、来門(smorgas)、山崎まさよし、秦 基博ほか、豪華ゲストとのコラボレーションが話題となったソロ・デビュー20周年記念アルバム「Sky’s My Limit」をリリース。2014年、2015年と人気エクササイズ『BAILA BAILA』とのコラボレーションが話題を呼ぶ。JFN系列全国ネットFM番組「杏子のSpice of Life」等、テレビ・ラジオ番組のパーソナリティをはじめ、映画、舞台等に出演するなど、幅広いジャンルで活動を展開している。