ツアー初日から圧倒的パフォーマンスを見せたLACCO TOWER(撮影・鈴木公平、藤川正典)

ツアー初日から圧倒的パフォーマンスを見せたLACCO TOWER(撮影・鈴木公平、藤川正典)

 5人組ロックバンドLACCO TOWERが、18日に東京・恵比寿LIQUIDROOMで「LACCO TOWER『心臓文庫』リリースツアー“心造旅行”【独奏演奏会】」の初日公演をおこなった。ニューアルバムの楽曲を中心に今年、活動14年を迎えた彼らが更なる飛躍を遂げることを確信させる圧倒的なパフォーマンスで、熱い夜を演出した。

ステージスタート前にすでに熱気充満

 ツアーは6月にリリースされたニューアルバム『心臓文庫』を引っ提げてのもの。この日おこなわれた東京から始まり、全国を回りながら11月にバンド史上最大となる会場・品川ステラボールを目指す。合わせて様々なロックフェスや対バンイベントなど、過酷なスケジュールに果敢に挑戦しており、まさにネクストステップを目指した攻めの姿勢を見せている。

 LACCO TOWERは松川ケイスケ(ボーカル)と塩崎啓示(ベース)を中心に、重田雅俊(ドラム)、真一ジェット(キーボード)と、4年前よりバンドに合流した細川大介(ギター)の5人のメンバーにより構成されるロックバンド。2015年6月にメジャー1stアルバム『非幸福論』でメジャーデビュー。長い経験で培われたライブ感覚、卓越したテクニックと、ライブ全体で見せるバンドならではの個性、世界観で大きな存在感を示しつつある。

松川ケイスケ(撮影・鈴木公平、藤川正典)

松川ケイスケ(撮影・鈴木公平、藤川正典)

 LACCO TOWERの登場を待つ会場の中では、彼らと親交のある後輩バンドのメンバーからなる、ふんどし姿のグループ「みこしーズ」が、「LACCO、LACCO、LACCO、LACCO!」「セイヤー!」「LACCO、LACCO、LACCO、LACCO!」「ワッショイ!」と、LACCO TOWERのライブではおなじみの曲「ラッコ節」の一節を繰り返し、観衆の熱気を更に煽る。そしてみこしーズの一人が「ステージを見ろ!」と叫ぶと、会場は暗転。

 レーザーやピンスポットなど、幻想的な照明がステージを彩る。その照明に合わせクールなSEが会場を包み込んでいく。やがてその音が一気に強烈な8ビートを打ち始めると、いよいよLACCO TOWERのメンバーはステージに姿を現した。最初に登場したのは重田、そして塩崎、細川、真一ジェットと続き、最後にスーツ姿の松川がステージに現れ、厳かに一例を観衆にささげた。鳴り響く轟音の中、松川が観衆に「LACCO TOWER『心臓文庫』リリースツアー”心造旅行”【独奏演奏会】へようこそ!」と語り掛ける。そして、一瞬のブレイクからギターの静かなバッキング、導入のメロディを紡ぐ松川の声から、一気に猛烈なビートを打ち込む「葡萄」でステージはスタートした。

無駄な音はない、彼らならではの世界観

熱い演奏を見せたLACCO TOWER(撮影・鈴木公平、藤川正典)

熱い演奏を見せたLACCO TOWER(撮影・鈴木公平、藤川正典)

 ステージは「奇妙奇天烈摩訶不思議」「楽団奇譚」と容赦のない強烈な8ビートの応酬が続く。メタルサウンドをほうふつとさせる、重田が打ち込む猛烈なビート。そのビートに追従しながら、流れるようなベースラインを生み出す塩崎。その基盤の上で細川が弾き出すロックなテイストと、スマートな雰囲気を持つ真一ジェットのピアノというユニークなハーモニー。一見、混とんとしたサウンドの中で、足を踏ん張るように立つ松川がいることで、そこには彼らならではの世界観が現れ、すべての音がその一つ一つの要素として意味を持つ。そこには無駄な音が一つもない、と感じさせる。

 さらに急激にリズムチェンジが繰り返される「罪之罰」へと続くと、観衆はLACCO TOWERの仕組んだ巧妙な罠に、まんまとはまっていく。イントロの4拍子から微妙に変化する3拍子、テンポチェンジを経てそしてサビへの8ビートへ。そして絶妙なブレイクを入れながら、ラストのサビへ突入していく。切ない雰囲気をちりばめたこの歌の頂点は、単なる音のインパクトだけではない、歌に込められたメッセージを、衝撃として観衆に叩き込んでいく。

手を挙げる観客(撮影・鈴木公平、藤川正典)

手を挙げる観客(撮影・鈴木公平、藤川正典)

 突っ走っていくように叩き込まれる激しいリズムすら、観衆の気持ちをあちらに引き、こちらに引きとすっかり意識を引き込んで、注目の焦点を松川の歌に向ける。楽曲一つひとつの構成から、そのセットリスト、さらに彼らのその一挙一動まで。絶対的な主導を握る松川。その左右にいる塩崎と細川が、あるタイミングで髪を振り乱し、華麗に舞う一瞬を、観衆はフロアで激しく音に酔いながらも、見逃さないように集中しているように見えた。

LACCO TOWERがステージから放つメッセージ

LACCO TOWERのステージ(撮影・鈴木公平、藤川正典)

LACCO TOWERのステージ(撮影・鈴木公平、藤川正典)

 「蜂蜜」からライブは中盤へ向かうと、彼らは、また新たな方向へステージを導いた。激しいビートと重々しい空気でまるで威圧するかのような序盤から、ポップでキャッチー、そしてさらに感情に作用する物語へ。真一ジェットが奏でるピアノの調べから、様々に変化する物語の世界へ観衆を誘う。時に優しく、そしてまた別の時には叫び突き抜けるような松川の歌が、がっちりと観衆の気持ちを掴んで離さない。極めつけは真一ジェットの叫びで、キラーナンバー「傷年傷女(しょうねんしょうじょ)」へなだれ込む契機。松川は「踊れ!」と叫び、観衆はさらにリズムに合わせて体を揺らす。

 ここで、松川は今年活動14年を迎えたLACCO TOWERのバンドとしての歩みが決して平坦ではなく「自分が世界には、必要ではないのではないか、と思ったことがある」と語った。そんな経験から、彼らのライブを見た観衆に「『必要でない』なんて思えなくなる、そんな助けになれれば、僕らは幸せだ」と強い思いを抱いている様子を見せる。そしてそんなポジティブなメッセージを込めた「未来前夜」とともに、松川は一つの言葉で「笑えよ」と観客にエールを送った。そこからステージが終わるまで、観衆の表情には「笑顔」しか見られなかった。ステージの彼らも、観衆も笑顔に包まれていた。そして松川の「笑って帰れよ、LIQUID!」というラストメッセージとともに、ラストナンバー「薄紅」を披露し本編を終えた。

 彼らの紡ぎ上げた物語は終わりを迎えたが、さらに称賛の意を込め観衆はまた再び彼らを呼ぶ。「LACCO、LACCO、LACCO、LACCO!」「セイヤー!」「LACCO、LACCO、LACCO、LACCO!」「ワッショイ!」その大きな呼び声に再びステージに現れた5人。彼ら一人ひとりが改めてこの14年を振り返り、感謝を告げる。そしてその想いを込めたという、ニューアルバムのラストナンバー「相思相逢」から「藍染」、さらに会場を熱くするかのように「ラッコ節」をはさみ、「一夜」でこの熱い夜を締めくくった。

 終盤には松川の言葉につられるように、自分が笑っていたことに驚いた。バンドとして揺るぎないスタイルを作り上げていることはもちろんだが、それに加えてバンドが持つコンセプトを、熱烈なファンたちとともに共有していることこそがLACCO TOWERの強みとも見える。新たな挑戦の結果が見えるのはまだこれからだが、初戦はファイナルが大きく期待できるステージになったことはいうまでもない。11月が楽しみでならない。(取材・桂伸也)

セットリスト

『LACCO TOWER「心臓文庫」リリースツアー”心造旅行”【独奏演奏会】』
@恵比寿LIQUIDROOM

01. 葡萄
02. 奇妙奇天烈摩訶不思議
03. 楽団奇譚
04. 罪之罰
05. 秘密
06. 蜂蜜
07. 苺
08. 蛍
09. 珈琲
10. 世界分之一人
11. 鼓動
12. 傷年傷女
13. 未来前夜
14. 非幸福論
15. 柘榴
16. 林檎
17. 薄紅
encore
E01. 相思相逢
E02. 藍染
E03. ラッコ節
E04. 一夜

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