■松山千春のカバーも披露

増子直純(撮影:石井麻木)

増子直純(撮影:石井麻木)

 「俺らクラスになると、Zepp来るときも運転手付きの……! りんかい線ですからね」饒舌なMCで笑いを誘いながらもキメるところはバッチリキメてくれるのが怒髪天。「可燃モノ」「全人類肯定曲」では陽気な狂騒を打ち鳴らし、「69893」「207」ではブルージーに、男臭くニヒルに迫ってくる。ハードなツアースケジュールで、げっそりと身体が絞れたメンバーをよそに「1人だけ空気パンパン入ってる」と今日もイジられる“愛され・坂さん”のドラムも、モヒカン頭になったシミさんのベースもドッシリとアンサンブルの土台を支え、そこに王子・上原子のギターが彩りを与えていく。

 先日おこなわれた『カムバック・サーモン2016“もっと愛されたくて半世紀”』の話からの成り行きで、まさかの松山千春「長い夜」カバーを披露。「DVDでは全カットだな」と、来場者だけの特別感。“この先、若いバンドに流れても「兄貴たちが寂しがってる」と思い出させる呪いをかけた楽曲”だという「焼け木杭に火をつけろ!」はこれまでと違った聴こえ方になりそうだ。

ステージでの怒髪天(撮影:石井麻木)

ステージでの怒髪天(撮影:石井麻木)

 終盤、会場一体の割れんばかりの大合唱に包まれた「雪割り桜」からの「セイノワ」はメッセージ性の強い同曲が本ツアーを以って、怒髪天&ファンに欠かせない楽曲となったことを目の当たりにした瞬間であった。そして、優雅に音楽で人生を謳歌する「歌劇派人生」で本編は幕を閉じた。

 アンコールでは、「俺たち大人がイヤな世の中でも楽しく生きてる姿を見せてやらんと!」と「オトナノススメ」。会場全体が右へ左へと大きく揺れ、目一杯の“オトナはサイコー!”コールで最高潮のフィナーレを迎えた。

 「今回のツアーで一番。武道館よりいいよ」一人ステージに残った増子が口を開いた。「俺たちの音楽はあんまり足しにならんと思うけども。マイナスにはならんから。イヤなことがあった時に、俺たちも同じ気持ちなんだなと思ってくれ」集まってくれたファンに感謝の意を述べ、自分たちができる恩返しは“解散しないこと”だという──。そして、最後の最後の言葉。

 「いろいろ大変なことあるけど、最後に一つだけ約束。 生きてまた会おうぜーー!!!」

 そう叫ぶと、額が膝につくくらい深々と頭を下げた。50歳を迎えた男の生き様に、30年を超えて闘い続けるバンドの音楽とその姿に、割れんばかりの拍手が巻き起こったのだった。(文:冬将軍)

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