二次元と三次元が交差する幻想的な世界観が広がったさユりの東京公演

二次元と三次元が交差する幻想的な世界観が広がったさユりの東京公演

 2.5次元パラレルシンガーソングライター、酸欠少女さユりが去る6月24日、東京キネマ倶楽部で、ワンマンライブ『ミカヅキの航海』東京追加公演を開催。現実と仮想が織りなす2.5次元の独特の世界観のもとで「来世で会おう」や「るーららるーらーるららるーらー」など全15曲を熱唱した。

冷たい雨

「ミカヅキの航海」東京キネマ倶楽部

「ミカヅキの航海」東京キネマ倶楽部

 彼女の姿を真影するような冷たい雨が降りしきる夜だった。山手線や京浜東北線が走る沿線にある東京キネマ倶楽部には、入場を待つ様々な柄の傘が列を作っていた。制服姿の女性が目につく。傘からはみ出た肩やカバンを濡らしながらも気にせず前を見ていた。

 この日のステージセットは、ステージの透過スクリーンに2次元のさユりの映像が流れた。その先にいるのが3次元のさユり、そしてバックバンド。その“2つ”のさユりは絶妙にシンクロして、あたかも同じ世界で生きているよう。そんな現実と仮想が交差する不思議な感覚のライブは「来世で会おう」から始まった。

一瞬にして心に同期する

「ミカヅキの航海」東京キネマ倶楽部

「ミカヅキの航海」東京キネマ倶楽部

 彼女は一瞬にして人の心に同期する。目の前に広がる空間に息を呑む観客ははじめこそ、その幻想的な世界に目を奪われていたが、次第に理性を忘れ、自身の声、心の中と向き合う。その数分後には彼女の知性と会話している。そんな感覚だった。体も空気も飛び越えて、さユりの思考と直接繋がる。彼女の歌にはそんな魔法のような魅惑があった。

 そして、多くの観客は憑りつかれたように、曲の殆どを、手を挙げるわけでもなく、頭を振るわけでもなく、ただじっと聴いていた。しかし、会場は高揚感に包まれている。心で彼女と対峙しているかのようだった。それだけ彼女の言霊は刺激的で重い。大人が遠ざける問題に対峙する彼女は自身の心を削り、歌にしていることが影響しているといえよう。それはとてもピュアな心でなければ向き合うことはできない。

 その想いを彼女は歌だけでなく、ライブでは言葉をもって素直に届ける。「私は生きるために歌いにきました」。「社会は気にしなくていいです。あなたと私の2人だけの気分でやりましょう」。

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