氷室京介が21日、東京ドームで、4大ドームツアー『KYOSUKE HIMURO LAST GIGS』の5日目公演をおこなった。大阪、名古屋、そして福岡を巡り、最終地の東京ではこの日を含めて3公演が開かれる。その初日は本ツアー最多の全32曲を熱演。アンコールの最後には感極まり歌えなくなる場面もあったが、ファンが歌い支えた。凄まじいグルーヴのなかで届けられるBOØWY、そしてソロ楽曲を全て受け止め、35年の氷室の生き様をエネルギーに変えた。自身初の完全ベスト『L’ÉPILOGUE』で問うた「氷室京介とは何か」。その答えが垣間見えた夜だった。

 抱えられるようにしてステージを後にした福岡公演。そうした姿もあって、ファンの間では東京公演を心配視する声も挙がっていた。しかし、いざふたを開けてみればその心配を忘れさせるほどの圧巻のパフォーマンス。不調の耳のイヤモニを何度も外す仕草はあったが、Charlie Paxson(Dr)、西山史晃(Ba)、大島俊一(Key)、DAITA(G)、YT(G)、Tessey(Manipulator)のバックバンドが織りなす完璧なサウンドとグルーヴ、そして、サポート。加え、ファンの大歓声に乗って、最初から最後までフルスロットルの良好な状態で歌い届けた。

 ツアーを最後に、ライブ活動を無期限休止することが決まっている。リベンジを誓った一昨年の横浜スタジアム。それ以来のライブは大阪、名古屋、福岡を巡って、いよいよ最後の地にたどり着いた。ファンは、氷室との再会を楽しむ一方で、曲を終えるごとに近くづく最後の時を複雑な心境で見据えている。

 最後のツアーともあって、どう向き合えばいいのか、いつもとは違う心境のなかで迎えた。MCを挟まずにノンストップで届けられたツアー前半。これまで本ツアーを、BOØWY楽曲を織り交ぜた豪華セットリストと伝えてきたが、なぜ、氷室のラストライブでBOØWY楽曲を組み込んだのか。名古屋公演のMCでは「(BOØWY楽曲を多く入れ込んだセットリストはこれまで)東京でしかやったことがなかったから、喜んでもらえると思って」と語っていたが、それとは別の真意がこの日の公演で薄らと見えてきた。

 ライブ=氷室京介。それはBOØWY時代から大事にしてきた生き様でありプライドでもある。その重要なライブを終えるという意味はあまりにも大きい。前記の通り、氷室は初の完全版で自身のキャリアを問うた。それをツアーにも重ねたとも思われる。ソロ楽曲をもっと聴きたかった、もっと言葉を聴きたかった――、最後だから募る思いは様々だ。ただ氷室京介の集大成とみる時、BOØWY楽曲も重要だ。それはこの日のMCで語った氷室の言葉にも表れている。

 「バンド時代の『JUST A HERO』は、BOØWYがブレイクする寸前だった。人間関係も最初の頃と変わってきて、メンバーも忙しい時期だった。だから、その時に初めてギターやベース、打ち込みの機材を買って自分でデモを作った。それがあったから、こうしてソロが出来た。それがなければ今がない」

 この日は、調子も良く2度のアンコールに応えた。バックバンドはオリジナルに忠実ながらもそれぞれの個性に色を付けて舞った。そして、ファンのエネルギーも凄まじかった。急きょステージバックに設けられた席も、ステージが見えようが見えまいがお構いなし。大歓声をもって楽しんだ。それに呼応するように氷室は魂を込めて歌った。ファンのアグレッシブな反応に笑顔も自然とこぼれた。そして、アンコールラストの曲「SUMMER GAME」で氷室は感極まって歌えなくなった。しかし、それをファンが大合唱して歌い紡ぎ、支えた。その姿にDAITA、そして長年連れ添った西山も涙した。

 氷室は、自身の音楽人生を振り返ったとき、幸せだと語った。

 「12歳の時にちゃんとした大人になれるのか心配していたけど。皆のお蔭で大好きな歌を歌って来れたのは本当に幸せなことだと思う。辿り着きたい場所にたどり着いたかな、まだ2日残っているけど、そう思う」

 氷室とは何か。その意義を十分に考えさせられる東京初日。残すはあと2公演。数々のドラマを演じてきた氷室。そして、彼を支えるバックバンドはどのような「LAST GIGS」を見せてくれるのか。(取材・木村陽仁、村上順一)

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