ライブバンドとして魅せる感情のサウンド

 この日のトリを務めるのは、LAMP IN TERREN。真っ赤なシャツを羽織った松本大(Vo、Gt)のギターのダウンストロークから、語りかけるような歌唱で始まる「portrait」を披露。松本が「最高の音楽を鳴らそう、よろしく」と挨拶すると「ランデヴー」を立て続けに演奏。大屋真太郎(Gt)がギターソロを決め、ジャズマスターを掲げた。そのまま「林檎の理」で畳み掛ける。Bメロからサビに入る前に川口大喜(Dr)のバスドラに合わせ、手拍子が会場から巻き起こった。

LAMP IN TERREN

LAMP IN TERREN

 「ただいま!」と松本が改めて挨拶を交わすと「おかえり!」と観客から声が上がる。松本は「今日は集まってくれてどうもありがとう! 話したいことは沢山あって3時間くらい話せるけど、今日はライブをしにきたので、どんどん曲やってもいいですか?」と観客に尋ねると、会場から拍手のレスポンスが返る。そして、5月3日に1stシングルとしてリリースされる「innocence」を披露。この楽曲は5月6日より公開されるアニメ映画『亜人 -衝突- 』の主題歌になっている。中原健仁(Ba)のベースが荒々しくうねり、大屋のギターと川口のドラム、そして、松本の声が研ぎ澄まされたように響き、剥き出しの感情の塊のようなものを眺めている様な感覚に陥る。観客も心を掴まれたように、ステージを観入っていた。

 松本が「人生はいつ何があるか分からない。でも今この瞬間しか、自分で感じることはできない。目の前にあることを楽しんで下さい。音楽はみんなをひとつにする魔法だと思って曲を作ったので、聴いて下さい」と観客に語りかけ、5月3日のシングルに収録される新曲「キャラバン」を披露。アップテンポのビートに軽快なギターリフがのる爽やかなロックナンバーに会場は手拍子で応えた。熱気も冷めやらぬまま、松本は「LAMP IN TERRENでした。ありがとう、またね」とメンバーと共にステージを去り本編を終えた。

 まだまだ物足りない観客のアンコールの手拍子の中、再びLAMP IN TERRENが登場。中原が「アンコールありがとう!」と感謝を述べると、観客から歓声が上がった。松本は「アンコールについて説明します」と今回のツアーは6カ所でそれぞれの出演バンドのカバーを披露していることを説明。最近やっと素直に歌詞が書けるようになったと語る松本が「自分が言いたくても、言えないことを言ってくれている曲」だという、SHE’Sの「Un-science」をカバー。

 大屋のディレイの掛かったギターサウンドと松本の力強いボーカルが、SHE'Sとはまた違った曲の魅力を引き出した。続けて演奏されたLAMP IN TERRENの「multiverse」では観客が拳を上げて「ウォーウォー ウォウォウォウ ウォーウォー」の大合唱が巻き起こった。曲の最後には、松本がSHE'SとHOWL BE QUIETのメンバー、出演者全員をステージに呼び込み、文字通り会場は一体となった。

最後は桑田佳祐の「波乗りジョニー」を3バンドでカバーするというサプライズも。まだ季節は春だが、観客は一足早い夏の訪れを楽しむかのように飛び跳ねていた。この日のステージを終え、最後は出演者と観客で記念撮影をおこない、なごやかな雰囲気のままツアー最終公演は幕を閉じた。

 この日のバラエティに富んだ公演に観客も満足した様子だった。どのバンドも三者三様、しかし、20代の勢いと、その若さからは掛け離れたような完成度の高さを見せてくれた。彼らがこれからどんな大きな波を音楽シーンに巻き起こすのか、楽しみである。(取材・松尾模糊)

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)