底知れぬパワーを見せたロックな夜

底知れぬパワーを見せたロックな夜(撮影・柴田理恵)

 ロックバンドのザ・クロマニヨンズが30日、沖縄・ミュージックタウン音市場で、全国ツアー『ザ・クロマニヨンズTOUR JUNGLE 9 2015-2016』のファイナル公演をおこなった。昨年10月21日にリリースした9thアルバム『JUNGLE 9』を引っ提げ、11月7日・愛知公演を皮切りに、47都道府県・全70公演を展開してきた。このうち、20日の東京・中野サンプラザでの公演をレポートする。東京公演は、30日に沖縄で迎えるファイナルを控えてのもの。今年7月には結成10年を迎える。結成当時からの勢いをそのままにロックンロールな一夜を演出した。会場に詰めかけた観客もそのエネルギーを受け取るように、汗だくになりながら熱狂した。

中野ロックンロールショー

 カツジ

カツジ(撮影・柴田理恵)

 中野駅北口を出ると、すぐ左手にそびえる中野サンプラザ。中野のランドマークとして42年間愛され続けられているこの場所は、数多くのアーティストがコンサートをおこなってきた歴史を持つ。少しビルの隙間風が冷たくなった頃、サンプラザの正面広場には黒い革ジャンに細身のジーンズの出で立ちの若者や、髪を脱色し、金髪にした女性、この寒いなかTシャツ1枚の筋骨隆々の中年男性などが集い、さながら英・ロンドンのカムデンタウンを思わせる雰囲気を醸し出していた。

 会場の照明が落ち、ステージに桐田勝治(カツジ、Dr)、小林勝(コビー、Ba)、真島昌利(マーシー、Gt)、甲本ヒロト(ヒロト、Vo)の4人が姿を現わすと会場から歓声が上がる。ヒロトが「オーライ、ロッケンロー!」と叫び「生活」でこの日のステージの幕は上がった。そのまま「やる人」、「ボラとロック」でいきなりアクセル全開で畳み掛ける。観客も全席指定の会場にも関わらず、最初から立ちっぱなしで飛び跳ね、拳を上げる。

 ヒロトが「最後まで楽しんでいって下さい。『JUNGLE 9』のアルバムからどんどんやります!」と言って、バンドは「原チャリダルマ」を披露。コビーのうねるベースとカツジのカウベルの響きが、アルバムタイトルにもあるジャングルを連想させた。ステージのバックに巨大なJUNGLE 9のキャラクターが現れると、バンドは「オバケのブルース」を演奏。そのままメロディアスな「夜行性ヒトリ」で観客を湧かす。

サンプラザ中野

コビー

コビー(撮影・柴田理恵)

 ここでMC。ヒロトが「中野サンプラザ!」と叫ぶと観客は「イェー!」のレスポンスを返す。ヒロトが「走る、走る、俺たち~」とロックバンド・爆風スランプのヒット曲「ランナー」のサビを歌うと、観客から拍手が。ヒロトは「それは(爆風スランプの)サンプラザ中野、ここは中野サンプラザ」と呟くと会場は笑いに包まれた。

 マーシーがレスポールJrを掻き鳴らし、コビーがシャウトして「自転車リンリンリン」が始まる。ヒロトがハーモニカを吹き曲の最後を締めた。マーシーの耳馴染みのいいギターリフからデビューシングルである「タリホー」が始まると会場から大合唱が起こり、アクセル全開の観客は更にヒートアップ。マーシーはステージ端に移動し、ピックを観客席に投げる。

 そしてヒロトが「オーイェー、突撃ロック!」と叫び、アニメ『NARUTO-ナルト-疾風伝』のオープニングテーマにもなった11thシングル「突撃ロック」を演奏。続いて「炎」から「エイトビート」を叩き込む。マーシーのギターソロに合わせてヒロトがオーケストラの指揮者の様に両手を振りながら踊る。観客もつられて踊り狂う。

走り続けるレジェンド

マーシー

マーシー(撮影・柴田理恵)

 ヒロトは着ていたTシャツを脱ぎ、上半身裸になり「這う」が始まる。ファンキーなコビーのベースにヒロトのハーモニカが重なり、観客の身体が自然と揺れる。「ギリギリガガンガン」ではヒロトがステージを端から端まで走り回り歌い、最後はステージ中央のモニター前に仰向けに倒れて足をバタつかせながら有り余るエネルギーを爆発させていた。

 続く「紙飛行機」のサビで観客は、ヒロトに合わせ手を紙飛行機のように泳がせる。「楽しかったよー!」とヒロトが叫び、『JUNGLE 9』からのリードシングル「エルビス(仮)」を披露。コビーと共に観客はオイオイコールで一体となり、最高の盛り上がりを見せたまま、本編を終了した。

 メンバーが去ってからも観客はアンコールの手拍子と共にメンバーの名前を呼び続けた。会場が暗転し、カツジ以外のメンバーは上半身裸でステージに戻って来た。ヒロトは黄色いツアーTシャツを下半身に巻いただけという、まさに原人のような出で立ちだ。

ヒロト

ヒロト(撮影・柴田理恵)

 ヒロトは「名残惜しいですが、あとほんの少しの間、すげえロックンロール楽しんで下さい」と語り、観客の拍手と共に「キンクス・ガット・ミー」で、ヒロトは馬の嘶くようにハーモニカを吹き、会場を再び熱く盛り立てる。

 続く「雷雨決行」では青い照明に照らされたマーシーがギターソロを決める。最後に「ナンバーワン野郎!」を怒涛の如く演奏。観客は拳を上げ“うぉーうぉーうぉー”と叫び最高のロックンロールショーを最後まで満喫した。

 『ザ・クロマニヨンズTOUR JUNGLE 9 2015-2016』は、全国70公演を回るという大規模ツアーだ。世界にはザ・ローリング・ストーンズやポール・マッカートニーなど、70歳を越えてもなお、世界ツアーを回っているレジェンドが存在する。そして、間違いなく彼らも同じように走り続けるロックンロールレジェンドとなるだろう。今年で結成10年。ザ・クロマニヨンズの底知れぬエネルギーは、彼らを待つファンにこれからも届けられていく。(文・松尾模糊)

セットリスト

「ザ・クロマニヨンズTOUR JUNGLE 9 2015-2016」
2016年4月20日
東京・中野サンプラザ

01.生活
02.やる人
03.ボラとロック
04.生きてる人間
05.原チャリダルマ
06.オバケのブルース
07.夜行性ヒトリ
08.俺のモロニー
09.自転車リンリンリン
10.底なしブルー
11.タリホー
12.突撃ロック
13.炎
14.エイトビート
15.這う
16.中1とか中2
17.今夜ロックンロールに殺されたい
18.ギリギリガガンガン
19.紙飛行機
20.エルビス(仮)
ENCORE
En1.キンクス・ガット・ミー
En2.雷雨決行
En3.ナンバーワン野郎!

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