中田裕二が初の全国ホールツアー[1]

中田裕二が初の全国ホールツアーで魅せた音の世界観に観客はときめいた

 シンガーソングライターの中田裕二が去る4月17日、中野サンプラザホールで、初の全国ホールツアー『TOUR 16“LIBERTY”』のファイナル公演をおこなった。椿屋四重奏時代にも立ったゆかりの場所。昨年11月発売の5枚目アルバム『LIBERTY』収録曲を中心に全21曲を、時にしっとりと、時に情緒的に歌い上げた。ソロとして約5年。この間に生み出してきた数々の曲は、ロックやファンク、ジャズ、ボサノバ、シティポップ、AORなど実に多彩。そして、どれもが哀愁漂う美しきロマンが広がる。この日もホールに舞った音色と歌声は中田のアダルティな世界観を映し出し、それらが観客の心をときめかせた。

ホールツアーに寄せる思い

多彩なグルーヴで観客を魅了した中田裕二

多彩なグルーヴで観客を魅了した中田裕二

 風の強い日曜日だった。空に浮かぶグレーの雲は瞬き視界から消えていく。髪は揺らぎ目線を遮る。荒天とは無縁のホール。ステージには多彩な楽器が陣取る。様々な音色は中田のビターな歌声とどう絡むのか期待が膨らむ。そうしたウキウキとした心持ちは自然と興奮した声とファンキーなBGMに乗る。

 ほぼ定刻。ゆっくりと明かりが落とされる。ステージにある4つのクリスタルのオブジェが緑色に染まる。バンドメンバーが姿を現す。地を這うような幻想的なロングトーンの音色を奏でる。オブジェが青色に塗り替えられると、クリーム色のジャケットを羽織った中田が悠々と現れ、マイクの前で一呼吸。歌い始める。「WOMAN」。

 バックバンドは、キーボード(奥野真哉)、パーカッション(朝倉真司)、ベース(隅倉弘至)、ドラム(小松シゲル)、ギター(平泉光司)。この構成でまずは届けられたファンキーな音色は、観客の心を躍らせた。中田も「リボルバー」ではタンバリンを持って器用に音を跳ねさせた。

 ここでMC。「ようこそ、おいで下さいました」。バーテンダーのように丁寧な口調で挨拶すると「地元が大変な事になっていまして…」と出身地で起きた熊本地震に触れて「お願いがあります。どうか暗い顔せずに、目一杯楽しんで下さい。そして、宜しければ終わった後、募金をお願い致します」。極力笑顔でそう述べた。

 そして、昨年発売の『LIBERTY』について「壮大なスケールの作品となりました。初のホールツアーで、きょう見て頂けたら“あ、なるほどな。こういう事をやりたかったんだな”というのがお分かりになられると思います」とその真意を明かし、エレキギターを構える。

 程なくして始まったのは、シティポップ調の「KILL YOUR SMILE」。中田の落ち着いた歌声がリズミカルな都会派サウンドに絡み合う。キーボードの高音が街並みを走り抜けるようだ。中田の歪んだギターソロもそれに続いた。

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