FEMMとコラボしたLil’ Fang(FAKY)、Yup’in

FEMMとコラボしたLil’ Fang(FAKY)、Yup’in

 サカナクションなど、音と映像で常に実験的な表現を繰り広げるアーティストたちを抱えるレーベル『HIP LAND MUSIC』が主催する、日本初の実験的な音楽×テクノロジー×映像イベント「VRDG+H」が横浜のDMM VR THEATERで3月26日に開催された。“テクノロジーとライブ”。常に寄り添う存在だったこの二つが今、あらゆる方向に進化を遂げているデジタル音楽シーンで革命を起こし始めている。VR、ライブストリーミング、データ…テックとの融合で、これまで制限されてきたライブの表現手法が広がる中、HifanaのKEIZOmachine!やマネキンダンスユニットFEMMとDaihei Shibataのコラボレーションなど、明確なオーディオビジュアルのビジョンを示す次世代アーティストたちが集うイベントとなった。

テクノロジーを身にまとった生物

 そこでは次世代のサウンドクリエイターとビジュアルクリエイター5組が先進的なオーディオビジュアルの世界を見せてくれた。今回開催されたVRイベントは日本では初の試みとなる。チケットは完売、会場には最新のクリエイティブに期待する熱心な観客が詰めかけた。主催するのはHIP LAND MUSIC。サカナクションやavengers in sci-fi、THE Flickersなど、音と映像で常に実験的な表現を繰り広げるアーティストたちを抱えるレーベルが、この実験的な取り組みを主催することも注目の一つ。

 開催地となったDMM VR THEATERは、世界初の3DCGホログラフィック専用のエンターテイメントシアター。透過ボードと高精細LEDディスプレイを配置したステージに映し出されるフォトリアルなCG映像が、リアルな3Dホログラム体験を生み出す、まさにテックとライブを象徴する環境が、次世代アーティストたちのパフォーマンスを演出していった。

 最初に登場したKeijiro Takahashi X DUB-Russell。ステージに立つDUB-Russellの左右に現れた女神像が、曲のグリッチ音やキックに合わせて徐々に壊れていく音と映像がシンクロしたライブを披露。激しいエレクトロニック・サウンドが響くライブに合わせて、静止状態だった女神像をさまざまなCG効果で原型を留めないほどに破壊し再生させるライブは、まるでテクノロジーを身にまとった生物のよう。類稀なスピード感あるビートがCG映像とリアルタイムで複雑に絡みあう演出に会場は静まり返り、終演と同時に拍手が鳴り響き、現実へと引き戻された。

 続いて、Akihiko Taniguchiのライブが始まったと同時にステージに現れたのは、本人を3Dスキャンした等身大のアバター。バーチャル空間を歩くアバターの目線が捉えた、自作の詩を朗読するオリジナリティあふれるパフォーマンスが行われた。Minecraftのように広大なバーチャル空間に次々と現れる3Dスキャンされた建物や洗濯物、キッチン用品など巨大なオブジェが転がる世界はまるでTaniguchi本人の頭のなかにダイブしたような錯覚が走る。3Dスキャナーを使った人物のデータ化はエンターテイメントの世界で増えたが、そのデータをどう使いエンタメ化させるかの方向性を示すパフォーマンスだった。

FEMMのRiRi(リリ)とLuLa(ルラ)

FEMMのRiRi(リリ)とLuLa(ルラ)

 坂本渉太と吉田恭之による映像ユニットDAIMAOUと、独特な即興感を醸し出すエレクトロニック・サウンドのwk(es)によるコラボレーションは、上下左右前後の空間に伸張した映像が映しだされる3Dならではの演出を見せてくれた。3Dアニメで描かれた少女や、たぬきやきつねなどの動物、さらに“大魔王”をモチーフとした映像や、擬音語などの文字が突然スクリーンに現れては消えていく。3D映像が演出の一部であり、音楽のストーリーを引き立てる役割ともなって観客の想像力を刺激していくポテンシャルの高さを感じた。3DCGならではの突発的かつ立体的な映像と、時々流れるコミカルなアニメと言葉の組み合わせは、独特な電子音楽の世界観を作るだけでなく、難解なパターンが折り重なる曲を消化しやすくしてリスナーに届けてくれるといった、二面性を持っているように感じられた。

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