“深紅”に触れる

モノクマとモノミも登場

モノクマとモノミも登場

 そして、始まった9曲目「キャミソール」はギターとベースのユニゾンから始まる。軽やかさがある曲は、心弾ませる女性の休日を描いているようにも感じた。ドラムはジャジーに跳ね、沙也加はこうしたグルーヴに身を寄せ、ゆったりと舞った。足をけり上げる仕草もキュートだ。10曲目「If -君が行くセカイ-」からは明るさが増していく。沙也加のウキウキした心模様が表れているようだった。

 エレクトロサウンドが再び響き渡った「kissing」では、観客と一緒に歌う。その姿に満足の沙也加は「OK」とポーズを決める。そして言葉でも気持ちを伝える。「よっしゃ! 準備はできた?」。12曲「wonder」ではこれまでバックに徹していたギターが全面に出てくる。疾走感のある楽曲にギターがアグレッシブに攻める。そして、ステージバックのカーテンが一斉に開かれ、白の網目模様の幻想的な空間が浮かび上がる。スキップを踏むBilly。そして沙也加は彼の肩に手をかける。

 MCを挟んで届けられたのは新曲「beloved」。楽曲に入る前、この曲について沙也加とBillyはこう紹介していた。「大人の恋愛の曲が欲しくて。今時ないぐらいのバラード。カラオケでも歌いやすいによう歌詞も考えています。一番気に入っている曲」(沙也加)、「初期に戻った曲。原点回帰で一番切ないバラード」(Billy)

 キーボードとギターサウンドで感傷的に始まった同曲は、感情むき出しのサウンドとは対照的に、心を閉ざす女性の影を感じた。低めの音階で歌う沙也加は、この歌の主人公の心模様を繊細に描いていた。女優としても活動する彼女だからこそ表現できる行間にも感じた。そして、Billyは激しく奏で、時にはライトハンドを使って柔らかみを持たせるなど、強弱を巧みに使って、その物語を彩っていく。

 トラトリの“深紅”をみたところで本編は佳境へと向かっていく。ファンクさも感じた14曲目「from where to where –ため息の理由-」を歌い届けると、ノリノリのナンバー「未来形Answer」で締めくくる。激しくギターを弾き鳴らすBilly。それに呼応して激しく点滅を繰り返す紫のライト。そして、弾む沙也加。最後は深々と頭を下げてステージを去った。

沙也加の本心

今夏に初出演を果たした「Animelo Summer Live」で着ていた衣装をまとった2人

今夏に初出演を果たした「Animelo Summer Live」で着ていた衣装をまとった2人

 数分続いたアンコールを経て再登場した沙也加とBillyは、グッズの衣装を身に着けて登場。グッズ紹介でも観客の笑顔を誘い、一部のグッズが完売したことなどを報告。「皆行けますか!」と言って披露したのは激しいロックナンバー「Good Bye School Dayz - theme of SUPER DANGANRONPA 2 THE STAGE - (Re:GENERATION Version)」。『スーパーダンガンロンパ2 THE STAGE』のテーマソングにもなっている曲で、曲間、沙也加が舞台袖から劇中のキャラクター、モノクマとモノミを連れてくると一緒に歌唱。沙也加は「来てくれたよ!」と喜んだ。「最後は1つになって」と「Sunny Day」を熱唱した。

 しかし、まだ足らない観客は再びアンコール。今度は明かりが落とされるとしばらくの沈黙のあと沙也加の歌声が響いた。その瞬間、明かりが戻されると、今夏に初出演を果たした「Animelo Summer Live」で着ていた衣装をまとった2人。すっかりアンセムとなった沙也加作詞作曲の「FLYING FAFNIR」を披露した。同曲はTVアニメ「銃皇無尽のファフニール」オープニング・テーマ。シンセの音色とギターのカッティングがドラマチックに曲を演出。そして、旗を振りかざし、熱唱する沙也加の姿は、さながらジャンヌダルクのような力強さを感じた。歌い終えると「もっと着たくて。テンション上がるね」と喜びを語った。

 「緊張しないで楽しくやれた。どんどん寒くなるので風邪をひかないようにね」と観客へ心遣いも。そして、来年1月27日発売の「beloved E.P.」の発売記念イベントを東京、大阪、名古屋、福岡、仙台で実施することを発表した。

 沙也加は「(このユニットを)生かしてくれてありがとう。行けるところまで行きたいのでついてきてください」と述べ、「この曲はここで披露して完成するものだと思っています。新しいものを共有して作っていきたい」と「Proud」を披露。優しい音色に、のびやかな沙也加の歌声は澄み切ったこの会場を突き抜け、光輝いていた。そして、会場側面に映る沙也加の影は幻想的でもあった。

 歌い終えた沙也加と、弾き終えたBillyは観客との別れを惜しむように、長い時間、ステージに立ち、最後までお礼の言葉を言い続けていた。トラトリの夢の続きは来年の発売イベントで見られそうだ。

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