彼らが活動15年で作り上げてきたものとは

彼らが活動15年で作り上げてきたものとは

 【ライブレポート】Head Phones Presidentが去る11月28日に、東京・新宿ReNYで活動15周年を記念したライブ『HEAD PHONES PRESIDENT 15th Anniversary LIVE』を開催した。

 ラウドなサウンドを信条とするロックの歴史の中で、80年代に世界を席捲したメタルブームは、90年代に入ると、NIRVANAやPearl Jamなどのグランジ/オルタナティブロックへとその主流を移し、メタルブームに心酔していた僕は、急速にその興味を無くしてしまった。ちょうどメタルブームが衰退した頃でもあり、何か自分の感性とは違うものを主張していたからだと、今振り返れば考えるのだが、そんな僕が再びそんなラウドなロックサウンドに指向を向け始めたのは、今回紹介するHEAD PHONES PRESIDENTの見せた新たな感覚に触れたことがきっかけだったと思う。

Head Phones President

Head Phones President

 彼らの音は衝撃的だった。その登場は、独自の感覚で日本のへビーロックシーンの中、時代の流れに流されラウドなサウンドから遠のいた多くの人々を、再びそのシーンに引き戻すきっかけになった。日本での活動に留まらず、海外のロックフェスやライブハウスのステージなどにも積極的にチャレンジし続けてきた彼らは、現在数あるヘビーロックバンドの中でも、日本を代表する存在になった。バンドは今年で活動15周年を迎え、さらに日本のロックシーンを牽引すべく活発な活動を続けている。

 今年は11月に最新アルバム「alternation」をリリース、そしてこの28日には活動15周年を記念し、東京・新宿ReNYでそのアニバーサリーライブを行ったHEAD PHONES PRESIDENT。今回はこのライブの模様から、彼らが15周年で築き上げたもの、そしてこれからさらに築き上げていこうとしているものを探っていきたい。(取材・桂 伸也)

物語を感じさせるステージ

Head Phones President

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 彼らのライブステージに先立って、この日はゲストアーティストとしてMUM、Angers、exist†trace、AGGRESSIVE DOGS a.k.a UZI-ONEといったHEAD PHONES PRESIDENTとも親交の深い、且つ強力なライブパフォーマンスを信条とするバンドが登場。自らのステージに多くのバンドをゲストに迎え、ヘビーサウンド好きのファンにたっぷりとそのひと時を楽しんでもらう、といった企画を、これまでもHEAD PHONES PRESIDENTは多く企画してきた。そこには「自分たちだけでは成長できない、シーン活性化に貢献することで自分たちは成長していくことができる」そんな信念を元に広い視野で活動を進めていこうとする真意がうかがえた。

 全4バンドの熱のこもったステージも終わり、いよいよ彼らの登場の時は来た。暗転した会場の中、ピンスポットが当てられ登場したのは、黒いドレスをまとったHEAD PHONES PRESIDENTのボーカリストAnzaと、白い衣装に身を包んだ3人のダンサー。ステージ中央に張り出した花道、その先端に設置されたポールに絡みながら、静かなSEの中で4人は妖艶なダンスを繰り広げ、そこに幻想的な雰囲気を作り上げた。ミュージカルや舞台女優としても活躍するAnzaだけに、空間の雰囲気作り、そして物語を感じさせるような演出はお手のものといった感じだ。

 元アイドル、そして女優としても活躍するなど、ロックアーティストとしては異色の経歴を持つAnzaを中心に、ギターのHiro、ベースのNarumi、そしてドラムのBatchと、HEAD PHONES PRESIDENTはそれぞれが異なる音楽遍歴を持つ、個性的なメンバーがバンドを構成している。15周年を迎え、そんなメンバーたちが一丸となり、彼らなりの極上のヘビーサウンドを奏でる。だからこそ、彼らは唯一無二のバンドとして君臨しているといえる。

 そしていよいよ、4人によるステージはスタートした。オープニングナンバーは「Escapism」。彼らが世にその名を知らしめることになった、記念すべき第一作のシングルナンバーだ。静かなハーモニーを奏でる彼らのそのプレーに、じっと耳を傾ける観衆。しかし、続く「Life is Not Fair 」では一転してラウドで激しいサウンドに変貌を遂げる。そんな抑揚の変化の中で、時に叫び、時に呟くように物語を語るAnza。その表情はサウンドに合わせ、一点を見つめる真剣なまなざしから、ある瞬間より悲痛なもの、そして爆発するような怒りを湛えたものへと、刻一刻と変化していった。

内面から表裏へ、表現の変化

Head Phones President

Head Phones President

 この日は、舞台劇の幕の転換のように、大きく三つのステージで進行した。ファーストステージは黒の衣装をまとったAnzaとともに、彼らの1stアルバム『VARY』や初期のシングル曲などがセットに組み込まれ展開された。そして間にHiro、Narumi、Batchの3人でのセッションをはさむと、上半身は黒のベスト、そして白のスカートにお色直しをしたAnzaが再びステージに現れ、セカンドステージをスタートさせた。牧歌的なサウンドが印象的な「A~La~Z 」で幕を開けた第二章。ここでは2ndアルバム『Folie a deux』アルバムのナンバーを中心にセットは進んだ。

 さらに続く「Snares 」よりステージは、またさまざまな起伏を表現しながらも、ファーストステージと比較すると、サウンドの違いも多く見せていた。ハーモニクスやスラップなど、多彩な音色の引き出しを見せたNarumiのベースと、フレージングの多彩さ、トリッキーさで強い印象を残したHiroのギターは、より曲の印象を際立たせる方向へと表現を変え、HEAD PHONES PRESIDENTがバンドとしてのスタイルをより強く確立したことを示していた。

 また、ファーストからセカンドに移るとともに、Anzaの表情にも変化が現れた。心からの喜びを示すかのように、また時には道化のように見せた笑顔。ファーストステージは全身黒の衣装がイメージさせる、どちらかというと内面的な感情の動き、セカンドで見せたその姿には、彼女のコスチュームが印象付ける、表裏のようなまた異なる世界観も感じられた。

彼らが、何者かを強く表現したステージ

Head Phones President

Head Phones President

 そして、いよいよ迎えたラストステージ。直前に行われたセッションでは、Hiroの超絶技巧を駆使したギターソロに続き、Batchのテクニカルなドラムソロが披露された。日本を代表するハードロックバンドの一つである、EARTHSHAKERのドラマー工藤義弘を師に持つBatchは、この日のステージで全編に渡って堅実にリズムをサポート。師匠譲りとも感じられるテクニックだけではない、ヘビーサウンドを支える屋台骨としての活躍はいうまでもない。そんな彼の真価は、このソロプレーに表現されていた。

 Anzaは再び全身黒の衣装を身にまとって皆の前に現れた。ここからは、2012年、彼らが現在の4人体制となり走り始めるきっかけとなった、3rdアルバム『Stand In The World』以降の選曲でステージは進められた。このアルバム以降、Anzaのボーカルはよりメロディアスな印象を強め、HEAD PHONES PRESIDENTとしてのサウンドは、彼らならではの個性を進化させながら、キャッチーな印象も深めていったように感じられる。その流れのためか、多くの観衆がAnzaの動きに同調し、大きく腕を振り上げ、彼らのリズムに身をゆだねて揺れる姿が、多く見られた。

 4thアルバム『Disillusion』のオープニングナンバー「The One To Break」より、ラストは5thアルバムの『alternation』の「Failed」へ。物語を紡ぎだすようなストーリー性のあるステージはそのままに、Anzaとメンバーたちはそれぞれ観衆と、ステージの中で会話を楽しんでいるようにも見えた。

 ラストナンバーが終わり、なおもアンコールをせがむ観衆の声に応じ再びステージに登場した彼らは、この日登場した全てのバンド、スタッフ、そして彼らが歩んできた15年間、彼らを応援し続けてきたファンへの感謝を告げ、3rdアルバムのタイトル曲「Stand In The World」でこの日のステージを締めくくった。

 「Stand In The World」は今構成される4人のメンバーでの躍進を誓った一つの形とも見える、3rdアルバムのタイトル曲であり、近年の彼らのステージで代表曲の一つとして、ステージの重要な箇所でプレーされるナンバーだ。荘厳で重厚なハーモニー、打ち鳴らされるビートに支えられ、歌い響かせるAnzaのメロディは、さまざまな山や谷を越え、たどりついた10年ののちに、まさに彼らが何者であるかを決定したことを物語っているように見えた。そのタイトルどおり「Stand In The World」=「世界に君臨する」彼らの道のりが、これからの彼らの将来に確かなものになることを、願わずには入られない。

セットリスト

Head Phones President

Head Phones President

01. Escapism
02. Life is Not Fair
03. What's
04. Too Scared
05. Star
06. I'll-treat
07. I Will Stay
08. A~La~Z
09. Snares
10. Hang Veil
11. Chain
12. Labyrinth
13. Light to Die
14. Nowhere
15. Folie a Deux
16. The One To Break
17. Just A Human
18. Rainy Star
19. Miss You
20. All You Need
21. Live With
22. Failed
encore
23. A New World
24. Stand In The World

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