デビュー1年で大舞台、内田彩というアーティストが見せる大輪

デビュー1年で有明コロシアムで単独公演を行った内田彩(撮影・草刈雅之)
【ライブレポート】アニメ『ラブライブ!』に声の出演を果たすなど、人気を得ている声優で歌手の内田彩が12月5日、東京・有明コロシアムで、5月の1stソロライブに続いて、2ndライブ『AYA UCHIDA 2nd LIVE Blooming! -咲き誇れみんな-』を開催した。昨年11月に、1stフルアルバム『アップルミント』でソロデビューを果たした。あれから1年も経たないうちに2ndアルバム『Blooming!』をリリース。そしてあれよあれよという間に今回のライブ開催の運びとなった。
もちろん、声優としての経験の積み重ねはあれど、7000人規模の動員力を誇る有明コロシアムのライブは、まだデビュー1年というキャリアから考えると異例の扱いともとらえられるだろう。実際に現地の席を埋めた観客席の様子を見れば、それは実感できるに違いない。これ程までに内田が注目をあびている理由とはどんなものなのだろうか? 今回はこのライブでの模様から、その真実を紐解いてみたい。(取材・桂 伸也)
咲き誇る花園
開演前から会場に鳴り響く「Blooming!」の曲に合わせて、ファンたちは手にしたサイリウムを振りながら、内田の登場するその時を今か今かと待ち続けていた。開演予定の時間から10分も過ぎた頃、暗転と共に大きく鳴り響いた歓声でステージはスタートした。
けたたましくかき鳴らされるギターの音色をきっかけに、2ndアルバムの「Blooming!」がオープニングナンバーとしてプレーされた。明るく、皆をたたえるような曲のリズム、そして内田の声。観衆の手にある緑とピンクのサイリウムが、リズムに合わせて揺れる。その様は、まさしく曲のタイトル通りに、美しい花が咲き誇る花園のようにも見えた。
「みんな、咲き誇る準備はできていますか!? みんなで笑顔の花を咲かせていけますか!?」と、内田は観衆に向け、来場への感謝の言葉を添えて語り掛ける。その声に怒涛の声援で答える観衆。続く「スニーカーフューチャーガール」「Like a bird」「最後の花火」と、弾けそうな気持ちをそのまま表したような、リズミカルなサウンドが続く。一時も笑顔を絶やさず、時には観衆と共にジャンプし、踊り続けながら歌を聴くもの一人一人にしっかりと届ける。
そんな内田に合わせるように、サイリウムの色も青、そして赤と、観衆の持つものすべてが同期して変化していく。まさに内田を太陽とするかの如く、その光はステージに向けられ、内田の発する声に合わせてたなびいていた。そしてステージは、内田のキャラクターを表したような明るいナンバー「Go! My Cruising!」まで突っ走ると、続いたバラードナンバー「Let it shine」で、ほっと一息を入れるような時間を迎えた。サイリウムの色は黄色に変わり、曲のゆったりした雰囲気から初夏や晩秋のような、センチメンタルな空気を会場に吹き込んでいた。
夢だった
ステージは中盤、インストの「ハルカカナタ」から、お色直しに白を基調に花を盛りつけたスカートの内田が、自ら「ペガサス号」と名付けた白い自転車に乗ってステージにあらわれた。右へ左へ、そしてステージ中央に設けられた花道へと、キュートな雰囲気を振りまき、「いざゆけ!ペガサス号」を歌いながら観衆にアピール。「夢だったんです、自転車の歌だったから、レコーディング中からやってみたくて」という内田の思いが、曲の愉快な雰囲気と相まって、一時楽しい空間を作り上げていた。
ステージ後半では「泣きべそパンダはどこへ行った」「キックとパンチどっちがいい?」など1stアルバムのナンバーも披露。ワルツ、ゆったりした16ビート、そしてマーチのような前進する雰囲気と、次々に移り変わるリズムの中で、序盤で見せたつき抜けるような明るさとはまた違ったカラーを表現し、観衆を魅了した。
ラストナンバーは「with you」。まるで春の訪れを告げるような、温かくも力強く、前進させてくれるような内田の歌は、まさに聴くものの心に花を咲かせ、新しい出会いを予感させてくれるようでもあった。
「アンコール!」「ウッチ―!」「もう1回!」様々なアンコールが観衆から飛び交い、内田はこの日2度のアンコールに応じた。「ソロデビューって聞かされた時には正直『え~私はいいです…』って思っていたけど、こんなに幸せな体験ができるんだから、やってよかったと思っています。本当にありがとう!」と、今の思いと共に、観衆への感謝の言葉を投げかけた。
エンディング曲は、オープニングにもプレーされた「Blooming!」。「咲き誇れ、みんな!」メロディにならない、叫びのようなラストの一節。内田は観衆と共に、この日一番の大輪の花を咲かせ、ステージを締めくくった。
底抜けに明るい雰囲気
底抜けに明るい雰囲気、内田が持つその雰囲気は、彼女の持つ大きな力の一つといえるだろう。単に楽しいことを語るだけではない、明るくウキウキしてきそうな雰囲気が、彼女の歌には感じられる。そんな彼女の歌を聴いていると、気持ちはアクティブになる。ライブのプレーを見ると、大声でそのライブを楽しみ、そして彼女を支えたくなる。何かつながっていたいと感じさせる、そんな雰囲気こそが内田彩という一人のアーティストの魅力だ。
尚、この日のライブでは、来年2月に新譜として2枚のコンセプトアルバム『Sweet Tears』『Bitter Kiss』がリリースされることが発表された。これだけハイペースにリリースを続けることもかなり異例の出来事であるが、この2枚のアルバムでは、果たしてどのような内田の世界が垣間見られるだろうか? 彼女の咲かせる新たな花を、期待していきたいところだ。
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