映像ナシで高まる歌への集中力

武藤彩未。11月3日に豊洲で行われたイベントの模様(第2部)

武藤彩未。11月3日に豊洲で行われたイベントの模様(第2部)

 ただでさえアイドルグループでも少ないライブアルバムをソロアイドルがリリースするとなると珍しさは高まる。ビジュアル先行になりがちのアイドルのなかで、敢えてライブアルバムという音だけで勝負してきたのは興味深い。ソロアイドルとライブアルバムという組み合わせが今となっては異例なことだということがわかる。

 以前のインタビューで武藤は「ソロアイドルとしてやってきてこだわってきたのが歌なんですね。映像ではなく音源にすると歌を中心に聴いてもらえる。普段から一緒にライブを楽しめるというのも素敵だな」と語っていた。

 その発言通り映像がなければ神経は必然的に一番目立つ歌に集中する。しかし、そこは諸刃の剣にもなりえる。歌の実力が不十分だと音だけの商品としては厳しい部分も出てくるからだ。だが、武藤は歌にこだわってきたということもあり、十分に魅力的な歌声と歌唱力を持っている。

魅力の一つ、バラード

イブアルバム『Re:BIRTH~19th Birthday Live at 渋谷公会堂』

イブアルバム『Re:BIRTH~19th Birthday Live at 渋谷公会堂』

 武藤の武器のひとつにバラードが挙げられる。数いるアイドルの中でもバラードで一般聴衆者に聴かせられる人は少ない。武藤はその歌唱力と表現力の高さから「A.Y.M.Ballads」というアコースティック編成でのライブも行ってきた。

 アコースティックライブは普通のライブに比べ、より歌が浮き彫りになるため歌唱力がないと厳しいのが現実。だが、今回のリリースイベントで、1部で披露されたバラード曲で立ち止まる買い物客が多くいたと関係者は教えてくれた。彼女のバラードに何かを感じた人が多くいたということが、その事実を実証している。ライブや音源にクオリティの高いバラード曲を組み込めることはアーティストとして大きなアドバンテージとなる。

 国内外問わずバラードの重要度は高い。米国のロックミュージシャンも全米1位を獲得したのはバラードナンバーということも多いことから需要の高さがうかがえる。今回のライブアルバムでも4曲のバラードを聴くことが出来る。特に「永遠と瞬間」はバラードアレンジに変えて、歌詞をひとつひとつ丁寧に歌う彼女が印象的であった。

 インタビューで武藤はこうも語っていた。

 「ライブDVDは、映像を見ながらなので漫画だと思うんです。でも、耳で聴いて想像するライブアルバムは小説だなと思って。その違いは大きいですね。是非音を聴いて想像して欲しいんです」

 ライブCDには聴く人によって見えてくる映像が変わる無限の可能性を秘めたものだともいえる。ライブアルバムは過去様々なアーティストの名盤と言われるものも多く存在しており、今回リリースされたアルバムが彼女にとっての名盤となりえるだろうか。数年後検証してみる価値はある。

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