ザ・コレクターズ加藤、結成30年を控え今言いたいこと
INTERVIEW

ザ・コレクターズ加藤、結成30年を控え今言いたいこと


記者:編集部

撮影:[写真]ザ・コレクターズ加藤ひさしが語る今(1)

掲載:15年09月16日

読了時間:約19分

みんなそうじゃないですか?「言いたかったこと、言えなかったこと」ってあると思う

[写真]ザ・コレクターズ加藤ひさしが語る今(3)

アルバムに込めた思いを語る加藤(撮影・紀村了)

――一つ一つの表現は本当にユニークですが「言いたいこと」も明確ですね。一方で4曲目の「深海魚」や他にも「ガーデニング」、「家具を選ぼう」というのは、どちらかというとラブソング的な感じですよね

加藤ひさし そう、ラブソングですね。特に「家具を選ぼう」は究極のラブソング。家具メーカーとか、本当に使ってくれないかな? とか思っているんですが(笑)。

――こういうイメージは、ずっと心の中で持たれていたのでしょうか

加藤ひさし いや、全然そんなイメージは持っていない。たまたまキッチンテーブルみたいな小さいものが欲しいとカミさんが言うので、IKEAに買いに行ったんですよ。そうしたらだだっ広いフロアに老若男女、いろんなカップルがいるわけですが、そこらあたりからいろんなバトルの声が聞こえてくるんですよ。「こんなソファ、リビングに入らないでしょ! どうすんのよ!?」とか(笑)。でも、そこまで口論するということは愛があるからだと思ったんです。これから生活を始める新婚だって、同棲するようなカップルとかも、展示されているベッドに寝そべって本当に幸せそうなんです。そういうのを見て「ああ、そうか!」と。今までのラブソングって「幸せをあげるよ」とか、漠然とした表現とか、または金品をあげて釣ってやる、みたいな歌しかないじゃないですか(笑)。でもそこの家具を選ぶという行為こそ、こんなに愛にあふれた行為はないな、と思ったんです。

――とても具体的なターゲットですよね

加藤ひさし そうそう。テレビボードとかテーブルとか、何年も、何十年も使うわけじゃないですか? だったら口論にもなりますよね。「俺は木目がイイ!」「私は白!」。そんな真剣さこそが相手を思いつつ自分を思い、二人の暮らしをずっと続けていく愛の誓いに思えてならないんですよ。

――深いですね。今のお話をうかがった印象では、「本当に訴えたいんだ!」というメッセージを強く感じる曲と、続くラブソング的な楽曲も、それほどかけ離れたものではない印象が感じられますね。先程の「自分探しの歌」も内面的ですが、さらに内面的な部分ではないか、と思いました

加藤ひさし そう、メチャメチャ言いたいことなんですよ。言いたいことだし、変な話「ラブソングって、こういう視点でも書けるぜ!」ということを、同業者に訴えているところもあるんです。この曲はすごく内面的。でも「子供ができたらベビーベッド、ドライバ片手に組み立てよう、子供が増えたら…」こんな所帯じみた歌、なかなか歌えないと思いますよ(笑)。これをロックンロールで歌うというのはね。

――変わって10曲目の「SONG FOR FATHER」は、他の曲とは全く雰囲気の違うバラードですね。どのようないきさつで作られたのでしょうか

加藤ひさし うちのオヤジが2年前に80歳で、肺がんで死んだんですよ。この前のアルバムの制作に入る前に逝かれたんで、バタバタだったんですけど、やっぱり親を亡くすのが初めての経験だったものだから、それなりにショックもありました。それで自分なりに「オヤジの死」を書き留めておきたいと思ったんです。だから自分はそれを歌にするのが一番いいと思って、「SONG FOR FATHER」を弾き語りで、デモを録ったんです。

 でも何かあまりにもパーソナルすぎて、ザ・コレクターズのアルバムに入れることを躊躇していたんです。それで、前回のアルバムには入れなかったんだけど、メンバーからは「この曲、個人的な歌だけどすごくいいじゃん? なんでアルバムに入れなかったの?」という話を聞いたものだから、そのまま弾き語りのデモ音源にチェロの音を足して仕上げたんですよ。どうしても後から歌うと、当時の雰囲気が全く出なくて。まあ毛色が違ったし、レコーディングの仕方も違っていましたけどね。

――雰囲気とか、全体のテンションとは全く違うけど、曲はすごく響いてくる感じがしましたね

加藤ひさし そうですね。その時は自分で混乱もしている状態だったから、あまり収録していいものかどうかという判断ができなかったんです。でも時間がたって冷静に考えられるようになったから、今回は入れてみました。

――でも偶然というか、今回の「言いたいこと」というキーワードは、まさにピッタリなテーマの一つでもあるのではないでしょうか

加藤ひさし そうきましたね(笑)。俺は「Tシャツレボリューション」の歌詞の頭だけでこのアルバムのタイトルを付けたんですけど、どこの放送局やメディアの取材を受けても、必ずこのことを言われるんですよね。「このタイトルは、まさしくこの曲『SONG FOR FATHER』のことじゃないですか?」って。でも俺はそういうつもりは全くなかったんですよ。ただ、確かに俺はオヤジにもっと言いたいこともあったし、言えないこともあったし、言いそびれたこともあった。もちろん事故で突然死んだわけではなかったけど、入院してからはあっという間だったし。その間は俺なりに、オヤジの昔ばなしとか、自分の聴きたかったことはすべて聞いたつもりだったけど、まだまだ聴かなければいけなかったこともたくさんあったと思うし。まあみんなもそうじゃないですか? そういうことだけではなくて、学校時代とか、いろんな彼女、彼氏とかにも「言いたかったこと、言えなかったこと」はあると思う。女房に、どうしても言えないこととかね(笑)。
 
――奥さんに対してそういうものがあるのでしょうか(笑)
 
加藤ひさし いやいや、それこそ「言えないこと」でしょう(笑)。それこそ「言いそびれたこと」にしたいね(笑)。

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