野音でおこなわれたTHE COLLECTORSの30周年記念公演(撮影・柴田恵理)

野音でおこなわれたTHE COLLECTORSの30周年記念公演(撮影・柴田恵理)

 THE COLLECTORS(ザ・コレクターズ)が16日、東京・日比谷野外音楽堂で、結成30周年記念公演『THE COLLECTORS 30th Anniversary Live “EPISODE I”』を開催。「世界を止めて」「Tシャツレボリューション」など全23曲を熱演。アンコールの最後には、ライブの定番曲でデビューアルバムの表題曲「僕はコレクター」を披露し、詰めかけた3000人超の観客を魅了した。長くファンに愛され、多くのミュージシャンからも敬愛されているレジェンド。メンバーは50歳を超えているものの今もなお輝き続けるレイドバックな歌声とアグレッシブなプレイでこの日も観客を酔わせた。

うなる古市コータローのギター(撮影・柴田恵理)

うなる古市コータローのギター(撮影・柴田恵理)

 春の陽気の都心。ビルに囲また日比谷野音のステージを囲む青々とした木々の合間を縫ってひんやりとした風が流れ込む。まだ月も薄くのぞく青空の下で、Doris「Beatmaker」などのサイケデリックな曲がBGMとして流れていた。オレンジ色の夕日が少し空にかかった午後6時。ギターの古市コータローと交遊がある某ライブハウスの店長・高橋さんがステージに登場。短く挨拶するとバンド名をコールする。

 ゆったりとした足取りでメンバーが現れる。古市が「よく来てくれました」と短く挨拶すると、赤色のギブソンのセミアコを肩から掛けて、乾いたサウンドを鳴らす。そして、英国国旗があしらわれた衣装の加藤ひさしは少し背を曲げ、スタンドマイクに口を近づけると歌い始めた。「僕は知らないさ♪」。記念公演は、インディーズ時代の楽曲「NICK! NICK! NICK!」で幕を開けた。

 大歓声を浴びながら歌い届ける。すました顔で叩くドラムスの阿部耕作、メロウなラインを奏でるベースの山森JEFF正之。その2人による安定したグルーヴの上で気持ち良く滑べらす古市のギター。加藤もスタンドからマイクを外し、情緒的に歌う。2曲目の「虹色サーカス団」で披露した加藤によるハーモニカーの音色も雰囲気を盛り上げた。そのまま一気に3曲目「Million Crossroads Rock」まで駆け抜ける。

レイドバックな歌声で魅了した加藤ひさし(撮影・柴田恵理)

レイドバックな歌声で魅了した加藤ひさし(撮影・柴田恵理)

 ここで加藤がアコギを準備しながら語り掛ける。

 「いや、よく集まってくれました。野音は、空が明るいと目が悪くても遠くまでよく見える。たくさん入ってくれて良かった。30年やってきました。さっきコータローが控室で、僕が解散させる前のTHE BIKESの音源を聴いて“今と変わんないね”と言ってくれた。嬉しいよね。あれからコレクターズをつくって30年。全曲を届けたいけど、何日もかかっちゃう。今日は沢山あるアルバムのなかから厳選してみなさんにお届けします」

 気取ることもなく長年連れ添ったファンに優しくそう述べると、アコギに一振り。音色が東京の空に響き渡る。4曲目「GIFT」。青春時代が蘇るかのようだった。肩を揺らしながら聴き惚れる観客。前衛的な古市のギターはキリキリとぶつける。そのライン上でタップするように加藤の透明感のある歌声を響かせる。それは30年という時間の経過を感じさせないほどの艶やかなものだった。

 あっという間に時は過ぎていく。加藤と古市が曲終わりに耳打ちする。ドラムがリズムを刻むと、甲高い女性の声が響く。それとほぼ同時にバイオレットのライトが彼らを照らす。7曲目は「プリティ・ガール」。加藤の艶のあるビブラートは、女性の髪を優しく撫でるかのように甘い。そして、ファルセットも色気があった。反するように古市のギターは、時にハードに、時にファンクに多彩なグルーヴを奏でていた。

 1曲が終わるたびにライトが落とされる。うっすらと浮かび上がる加藤のシルエット。水を飲む仕草も大人の色気を感じる。その一方で、ユニークなトークで笑いをとる。

ドラムスの阿部耕作(撮影・柴田恵理)

ドラムスの阿部耕作(撮影・柴田恵理)

 「記念公演だからあまりしゃべらないようにしてるけど、ひさしとか言ってよ。55だよ」。そうした自虐に会場から笑い声が響く。この公演に向けてイメージをふくらませるために準備をして来たことを、古市とのトークで明かす。古市との掛け合いはまるで漫才のようで、笑いが絶えなかった。

 そうしたトークもあって和やかな雰囲気となったが、次の曲ではハードに展開する。「ガリレオ・ガリレイ」。感情をぶつけながら「ガガガガ リリリリ レレレレ オオオオ♪」と無数の言葉が矢継ぎ早に放つ加藤。中盤の山場を迎えて高まる高揚感。ディープブルーに染まるステージ。その後ろに構える「THE COLLECTORS」の電飾が煌びやかに光る。

 一転、9曲目「始まりの終わり」と10曲目「深海魚」は彼らの深層に触れるかのように、ミディアムバラードが届けられる。赤く染まるなか、ギターのアルペジオが辺りを照らすように繊細にきらめく。それに合わせるようにドラムのハイアットが響く。ベースのロングトーンは地に霧がかかるように重かった。11曲目「僕は恐竜」ではゆったりと静かに歌う。エコーのかかったドラムが打たれると加藤の歌声に力が入る。ギターのメロディアスな音色が響く。

メロウなラインを奏でるベースの山森JEFF正之(撮影・柴田恵理)

メロウなラインを奏でるベースの山森JEFF正之(撮影・柴田恵理)

 コレクターズのサウンドは、ブリティッシュロックのリズムをベースに、古市のギターがサイケデリックにうねる。それと対峙するかのような、加藤ひさしの甘くレイドバックな歌声。この2つのグルーヴが重なることで、楽曲全体を艶やかにしている。この日もそうで、数十年経った曲も色あせることなく、今を生きているようだった。とてもアダルティなロックンロールだ。

 そして、この日は12曲目「Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!」から更に疾走する。ベースの浮き立つような跳ねるサウンドで観客をウキウキとさせ、前衛的なギターを奏でる古市は自身の腰を左右に振って興奮の度合いを表現する。加藤もステージ前に出て叫ぶ。そして「売れた実感がある」と語った、NHK Eテレのアニメ『おじゃる丸』エンディングテーマ「Da! Da!! Da!!!」で駆け抜ける。

 「30年やってこれたのは良いメンバーやファンに恵まれたこと」という感謝の言葉を挟んで披露した「僕の時間機械」(タイムマシーン)、そして「世界を止めて」は会場全体で大合唱。まさに“有頂天”。高揚感と達成感に満ち溢れていた。そして、加藤をこう語る。「ロックンロール楽しい。やばい、ライブ最高。ここ最近はライブやってこなかったから、皆がいるだけで、なんか歌いたくなる。まさか、この年齢でライブが好きになるとは。ロックンロール!」。

サイケデリックなギターを奏でる古市コータローのギター(撮影・柴田恵理)

サイケデリックなギターを奏でる古市コータローのギター(撮影・柴田恵理)

 メンバー紹介を挟んでの16曲目「ごめんよリサ」は、加藤がギターを弾き、古市がメインボーカルを務める。ハスキーな歌声で魅了し、そのまま、加藤が一旦ステージを去って、バックバンドによるダイナミックなインストを披露した。ギターとベースの掛け合いがカッコ良く、ギターはスクラッチで疾走させる。ドラムソロは雷鳴の如く轟いた。

 「TOUGH」で衣装チェンジした加藤が再登場。ラストに向けて8ビートロックンロールを野音に轟かせる。加藤がアグレシッブに歌う。古市がジャンプしながら弾く。投げキッスを送り「百億のキッスと千億の誓い」を続けて披露する。

 ドラムが四拍子を刻む。「今日はどうもありがとう。最高の夜になったよ! 最後の曲です!」と言って披露したのは「Tシャツレボリューション」。大歓声を浴びる。ベースに寄り添い奏でるギター。指を天に突き刺す観客。加藤は古市の肩に腕をかけてともに歌い、大盛況のなか、本編は終了した。

武道館決定を告げる野音ステージ(撮影・柴田恵理)

武道館決定を告げる野音ステージ(撮影・柴田恵理)

 アンコールでは、加藤がアカペラで「Tシャツレボリューション」を熱唱する。観客もそれに乗る。Tシャツ姿の古市の背中を観客に見せる。そこには「LIVE AT 武道館」の文字が。来年3月1日に自身初の日本武道館での単独公演をおこなうことを発表。加藤は、「俺たちの30周年! 武道館でやらせてくれ!」と叫び、再び「Tシャツレボリューション」を歌い、同曲のフレーズ「誰にも負けない気がしている!」と決意表明であるかのように、力強くファンキーに歌った。その姿に会場からは黄色い声援が飛んだ。

 興奮状態のまま、アンコール曲が届けられ、最後はメジャーデビューアルバムの表題曲「僕はコレクター」を会場全体で歌い、幕を閉じた。加藤は最後にこうも語っていた。「25周年の時も楽しかったけど、今日が一番楽しかった。皆のお蔭だよ! 今年はベスト盤も出します。沢山フェスにも出ます。最高の年になるよ!」(取材・木村陽仁)

セットリスト

THE COLLECTORS 30th Anniversary Live “EPISODE I”
2016年4月16日(土)日比谷野外音楽堂

01.NICK! NICK! NICK!
02.虹色サーカス団
03. Million Crossroads Rock
MC
04.GIFT
05.ミノホドシラズ
06.たよれる男
07.プリティ・ガール
MC
08.ガリレオ・ガリレイ
09.始まりの終わり
10.深海魚
11.僕は恐竜
12. Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!
13.Da! Da!! Da!!!
14.僕の時間機械
15.世界を止めて
MC
16.ごめんよリサ
17.インスト
18.TOUGH
19.百億のキッスと千億の誓い
20.Tシャツレボリューション

EN01.愛ある世界
EN02.CHEWING GUM
EN03.僕はコレクター

この記事の写真
THE COLLECTORSが野音で30周年記念公演[1]

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)