NHKスペシャル『熱狂は世界を駆ける~J-POP新時代~』が12月22日午後9時からNHK総合で放送される。番組では、Creepy Nuts、Number_i、新しい学校のリーダーズの3組それぞれの世界展開を取材し、J-POPが世界で熱狂を巻き起こす背景に迫っている。筆者は一早く試写。そこで見えてきたのは、いま日本のアーティストが世界で注目されている、新たな時代の幕開けとも言うべき現象だ。【文=平吉賢治】

国境を越えた唯一無二のサウンドとダンス

Creepy Nuts(撮影 Hiroya Brian)NHK提供

Creepy Nuts(撮影 Hiroya Brian)NHK提供

 Creepy Nutsの楽曲「Bling-Bang-Bang-Born」はストリーミング配信の総再生回数7億超え、Billboard Global 200で8位という快挙を成し遂げ、あらゆる国の人々を魅了した。

 7月20日、Creepy Nutsはドジャー・スタジアム(米ロサンゼルス)でオーディエンスの歓声と共に迎えられた。類まれなスキルで世界大会を制したDJ松永。そして、日本屈指のラッパー・R-指定。日本最強のHIP HOPユニットと表現しても過言ではない。

 テクニカルかつソリッドなDJ松永のプレイに、切れ味鋭く深く耳に残るR-指定のラップ。彼らの楽曲「Bling-Bang-Bang-Born」のパフォーマンスを受け、現地の人々は踊り、合唱し、各々が手に持つスマートフォンで世界中に拡散した。

 2024年を代表する1曲ともなった「Bling-Bang-Bang-Born」。海外において、この楽曲が最初にブレイクしたのはウクライナという。番組では現地のリスナーの生の声から、この楽曲が起こしたムーブメントについて様々な理由が紹介されている。

熱狂する現地ファン NHK提供

 なかでも、“ウクライナ軍の兵士が踊る動画もあって、とにかくバズりました”という声は、いかにこの楽曲がグローバルに浸透したかを物語っている。

 各国でヒットしたこの曲はニューヨークにも届き、「この曲はチェックすべきだ」と、米国の音楽業界からも注目された。このシーンでは、Creepy Nutsがどういった展開でアメリカでも評価されたかが克明に描写されており、必見のポイントとも言えよう。

 また、楽曲のサウンド面についても考察されており、DJ松永が取り入れた「ジャージークラブ」というビート(ジャンル)、R-指定のラップの“口気持ち良さ”、ダンスの背景などにも言及され、彼らがいかなる要因によって海外でヒットしたかが紐解かれている。

 これを受け、番組内で彼らのパフォーマンスを観ると、Creepy Nutsの魅力がさらに明瞭に浮き彫りとなるのではないだろうか。

“より多くの人に届けたい”想いからの世界への挑戦

岸優太 NHK提供

神宮寺勇太 NHK提供

平野紫耀 NHK提供

 Number_iは、世界最大級の音楽フェス・アメリカの「コーチェラ・フェスティバル」に出演。現地リハーサルへの密着、独占インタビューを通じ、世界への一歩を踏み出した3人の挑戦を映す。

 「守りに入ったことをやっても――もっと振り切りたい」と語る平野紫耀。“人生で一番と言っていいほどアウェーな環境”と岸優太が表現したステージだが、エレクトロミュージック、HIP HOPなど幅広い音楽性を取り入れて表現した彼らの楽曲は、海外の人々の心を掴んだ。

 番組内では「コーチェラ・フェスティバル」の詳細と規模について解説され、このフェスで日本人アーティストが活躍することの凄みを伝える。

 国内の人気にとどまらず、世界に挑み、果敢に行動するNumber_i。アイドル路線から一線を画した各楽曲の音像や歌唱、ダンス、様々な想い、姿、言葉が、あらゆる角度から収められている。

 インタビューのシーンで岸優太は「僕たちを知ってくれる第一歩として――」し、神宮寺勇太は「とにかく自分たちの好きな音楽を出していきたい」と述べている。

 平野紫耀が言葉にする「もっと振り切りたい」という想いは、 “より多くの人に届けたい”というメンバーそれぞれの「世界への挑戦」という果敢な精神を顕在化させるような印象を抱かせてくれる。

 レポートを経て観られる「コーチェラ・フェスティバル」で爪痕を残した彼らのステージングは、より一層深みのあるものとして心に響くのではないだろうか。

世界に降臨、新しい学校のリーダーズ

新しい学校のリーダーズ(撮影 Lindsey Blane)NHK提供

 番組は、新しい学校のリーダーズのワールドツアーにも同行。アメリカやメキシコをはじめ世界で、強烈な個性と存在感を光らせ、日本トップクラスの人気を誇る秘密に迫っている。

 ヒット曲「オトナブルー」がTikTokで33億回再生を記録されたことに触れ、メキシコでの大盛況のライブ映像が映し出される。

 新しい学校のリーダーズは、世界26都市をまわるワールドツアーを敢行。メンバーの衣装を真似たり、日本語の歌詞を覚えて歌うその国々のファンの姿が見られ、彼女たちがどれだけ多くの国や地域で熱烈に支持されているかが伝わってくる。

新しい学校のリーダーズ(撮影 Lindsey Blane)NHK提供

 新しい学校のリーダーズは何故、これほどまでに海外のファンを熱狂させるか。番組ではそれを、ライブやステージ外での各面、ファンとの交流などから、人気の具体性を克明に示す。

 特に、ある一人の熱烈なファンの数々の言葉や、ライブに足を運んだり衣装を自作することがレポートされるなど、新しい学校のリーダーズの魅力を具体的に伝えられる場面は印象的だ。

 ここでは“推し活”が、海外では別の表現で呼称され、多くの人々が“好きなアーティストなどを積極的に推している”という点も取り上げている。日本のカルチャーが海外に普及した象徴とも捉えられるシーンだ。

 さらに、プロデューサー・中川悠介氏の「日本の中でどうふざけて、面白くはみ出していくかみたいなのがテーマだった――」という主題について、本人からその想いの内実が語られる。ここでは“どういった理由で” 新しい学校のリーダーズが成功したかというある種の“答え”に触れることができるかもしれない。

 下積み時代の様子や2017年の貴重なライブ映像――初期衝動から現在、世界で邁進するライブ映像まで――を含むレポートにより、現在の新しい学校のリーダーズの活躍がさらにビビッドかつディープに映るのではないだろうか。

熱狂する現地ファン NHK提供

世界を駆けるJ-POP新時代の幕開け

 世界中で活躍するアーティストたちの秘密に迫る、NHKスペシャル「熱狂は世界を駆ける~J-POP新時代~」。ここでは、Creepy Nuts、number_i、新しい学校のリーダーズの3組それぞれの世界での展開をプレビュー記事として紹介した。

 「なぜ、いま日本のアーティストたちが世界で注目されるのか」。それは、新時代の到来なのだろうか。まだ、始まりにすぎないのだろうか。

 これまでは比較的、独自の立ち位置と考えられてきたかもしれないJ-POPが、本番組により “世界を駆けるJ-POP新時代”の幕開けと、いま、目の当たりにできるのではないだろうか。

番組情報

 NHKスペシャル「熱狂は世界を駆ける~J-POP 新時代~」

 【出演】 新しい学校のリーダーズ/Creepy Nuts/Number_i ※50音順

 【語り】 板垣李光人

 【放送予定】 総合 12月22日(日)午後9:00~9:49

 再放送 総合 12月29日(日)午前0:12~1:01(28日深夜)

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