NEMOPHILA、いま見据えるバンドのビジョン
INTERVIEW

NEMOPHILA

いま見据えるバンドのビジョン:『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』


記者:村上順一

撮影:村上順一

掲載:24年03月24日

読了時間:約7分

 地獄のゆるふわガールズバンドのNEMOPHILAが、アニメ「おしりたんてい」の劇場版長編第2弾『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』(公開中)のキャンペーン・ソングを担当。キャンペーン・ソングには、昨年12月にリリースされたバラード「ODYSSEY」が起用されている。『おしりたんてい』は、累計発行部数1,000万部を超えるトロル原作の大ヒット児童書シリーズ。本作は2022年公開の『映画おしりたんてい シリアーティ』に続き2作目となる劇場版長編作品。どんな時も冷静に、ププッと事件を解決してきたおしりたんていに、絶体絶命のピンチが。ある事件を境に忽然と姿を消したかつての相棒スイセン(CV・仲里依紗)との再会に戸惑いつつも贋作事件の調査を進めるおしりたんていは、世界中の美術館を震撼させる巨大な陰謀に巻き込まれていくというストーリー。インタビューでは、mayu(Vo.)、SAKI(Gt.)、葉月(Gt.)、ハラグチサン(Ba.)、むらたたむ(Dr.)メンバー5人に、『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』を観て何を感じたのか、日本武道館公演を経ていまイメージする次のビジョンについて話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

共感した葛藤

©トロル・ポプラ社/2024「映画おしりたんてい」製作委員会

――本作を観て、みなさんどのようなことを感じましたか。

mayu おしり君のフォルムから、子供向けの作品という印象がありましたが、『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』を観させていただいて、思っていたよりもテーマがヘビーだったので、すごく驚きました。特にスイセンの師であるキンモク先生がクリエイティブなことに対して葛藤するところがとても共感できました。また、『おしりたんてい』ならではの謎解きの部分も楽しかったですし、大きなテーマとして愛が描かれていて、すごく内容の濃い1時間で最初から最後まで没頭して観ていました。

たむ 『おしりたんてい』は子供が大好きなお尻、子供が好きなものがテーマになっていて、それに加えて謎解きなど、ちょっと考える部分が組み込まれています。それが本当に絶妙なバランスだなと思いました。今回、3歳の娘も試写会に連れて行ったのですが、「あっ、おしりだ!」と喜んで観ていたのでうれしかったです。

――親として助かりますよね(笑)。

たむ そうなんです(笑)。ストーリーが進んでいく中で、おしりくんがやられたりしても「プー」ってやっつけるところは3歳児でもわかりやすいです。そして、大人が観ても、もしかしてこの人は今こういう気持ちなんじゃないか、と感情の裏側を感じとれる深さがある映画だなと思いながら観ていました。本当にあっという間でしたし、娘も真剣に集中して観ていて、しっかり楽しんでいたので、様々な年代の方に観ていただきたい作品だと思いました。

――ハラグチサンはどう観ていました?

ハラグチサン おしりたんていは私の妹と甥っ子がすごく好きな作品で、それもあって私もたまにテレビで『おしりたんてい』を観ていました。まさかその『おしりたんてい』のキャンペーン・ソングを担当させていただけるとは想像もしていませんでした。映画は先ほどmayuが言っていたように、自分たちも音楽をクリエイトしているので、キンモク先生と自分たちがすごく重なりましたし、シリアスだけど笑いもあってとても楽しい映画だなと思いました。そして、キャンペーン・ソングの「ODYSSEY」は、私たちが普段鳴らしているラウドなサウンドとは違い、壮大なバラードなのですが、バラードという曲調が持っている無限の可能性も感じました。

――葉月さんは『おしりたんてい』を観られて感じたことは?

葉月 映画、楽しく観させていただきました。私、『おしりたんてい』のキャラクターのフォルムがとても好きなんです。おしり君をはじめ、かいとうやマルチーズしょちょうなどわかりやすいフォルムが好きで、それにときめいている自分を見て、「私、まだ子どもの心を持ってるんだ」と思いました(笑)。また、大人の目線から見ても、キャラクターに感情移入できる瞬間も多々あったので、すごく考えさせられる映画でもあり、子供の頃に戻って楽しめる映画で、いろいろな角度から観ることができる作品だと思いました。

――NEMOPHILAの音楽性と「おしりたんてい」のギャップも最高でした。

葉月 私たちは地獄のゆるふわバンドと謳っていて、サウンドはゴリゴリなのですが、普段はゆるふわな感じなんです。その部分がマッチしていると思います。

――音楽活動に活きそうなところはありましたか。

葉月 最近は日常、生活していく中で感じたことや感情を音にするみたいことにチャレンジしていて、この映画を観て感じたことをカタチにできないかなと思って、曲を書いたりしています。

――SAKIさんはいかがですか。

SAKI キャラクターは知っていたのですが、アニメを観たことはなかったんです。自分たちで大丈夫なんだろうか? とちょっと不安があったのですが、映画のストーリーは大人向けの作品と変わらない作りだと思いました。もし自分が小さい頃に観ていたら、もっといろいろなものを見つけられたと思いました。また、私は小さい頃から謎解きが好きで、ミステリー作品を読んだりしていたのですが、それに繋がったのは、『おしりたんてい』のようなアニメがきっかけだったことを思い出したり、とても有意義な時間を過ごさせていただきました。

「これが自分の道だ」というものが見つけられれば

村上順一

NEMOPHILA

――さて、2月17日に日本武道館公演を終えたばかりですが、今バンドとしてどのような展望が生まれましたか。

mayu 当日までは日本武道館に向けての気持ちが大きかったのですが、武道館公演を終えた今ならなんでもできるんじゃないか、といった無敵な感覚があります。もっといろいろなことに挑戦していきたいと思っていますし、アメリカでライブはやりましたが、これまで以上に海外も視野に入れて活動していきたいです。その一つとしてヨーロッパでライブをしてみたいです。

ハラグチサン 私もmayuと同じ気持ちで、今なら何でもできそうですし、やれる気がしています。今までの自分たちの人生があって、武道館があって今そう思えているわけで、根拠のない自信とか無知がゆえの強さとかそういう感じでもなく、自信を持ってなんでもやれそうな気がしています。

――今お2人はどこまでやれそうですか。

ハラグチサン 熱湯風呂とか?

mayu エネルギーがみなぎっている状態なので、今なら全然やれる(笑)。

――あはは(笑)。たむさんが思う活動の展望は?

たむ ドラムを始めて16年くらい経ったのですが、その中で「これは間違った選択だったかも...」と思うときがありました。日本武道館のステージに立てたことで、その選択が全て正解に変えられたような気がしています。これから先も様々な選択をして生きていくと思うのですか、今回の成功体験によって、自分の力で正解に変えていけるんだ、と今すごく感じているので、自分の意思を強く持って、これからもバンド活動を続けていこうと考えています。

――葉月さんのビジョンはいかがですか。

葉月 武道館は私たちだけの力ではなく、ファンとスタッフさんで作り上げたみんなの日本武道館だったと思います。まずは近い未来としてそのお礼と言いますか、メンバーがお世話になった地域、生まれ育った場所に行って感謝を伝えられたらいいなと思っています。

――感謝を伝えにいく中で、未来のビジョンも明確になっていきそうですね。SAKIさんはいかがですか。

SAKI いい意味で日本武道館を特別なものにしないようにできたらいいなと思いました。矢沢永吉さん 、THE ALFEEさん、BUCK-TICKさんは武道館ライブを恒例にされていて、矢沢さんは150回以上日本武道館に立たれています。そのくらいの気持ちで、ライブ1本1本を大切に取り組んでいけたらと思っています。

――皆さんのように夢を叶える秘訣はありますか。

mayu 私の中で秘訣は1つしかないと思っていて、それは続けることです。夢を叶えている人は必ず続けています。そこに工夫や意思、心がないとだめだと思うのですが、その人が全身全霊で努力をしていれば、きっと誰かがその姿を見てくれていると思います。そこには上手い下手とか、かわいい、かわいくないとかはあまり関係ないと思っています。周りから大切にされる人というのは、人を大切にしている人だと思いますし、そういう人は必ず報われると信じています。

――続けることが一番難しいとも言われていますよね。今回の『おしりたんてい』のテーマに本物、偽物とありますが、やはり本物を目指すことになりますよね?

mayu そこがすごく難しいところで、この映画の肝でもあると思っています。きっかけ、入り口がなんであれ、その本質に自分が気づけばいいことだと思います。最初は誰かの真似から入って、正解を迷いながら進んだとしても、結果的に「これが自分の道だ」と胸を張って言えるものが見つけられれば、それはまさしくオンリーワンになると思います。そして、それを極めていくことが夢を叶える秘訣なのかなと思っています。

(おわり)

作品情報

『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』

原作:トロル

監督:セトウケンジ

脚本:高橋ナツコ 成田 順

音楽:高木 洋

声の出演:三瓶由布子 齋藤彩夏 櫻井孝宏 杉村憲司 池田鉄洋 小西克幸 中村まこと 渡辺いっけい
ゲスト:仲里依紗 津田健次郎 二又一成

キャラクターデザイン・作画監督:真庭秀明

製作担当:末竹 憲

編集:吉田公紀

録音:澤村裕樹

音響効果:中原隆太

美術デザイン:増田竜太郎

美術監督:東 美紀

色彩設計:森 綾

撮影監督:則友邦仁

制作:東映アニメーション

製作:2024「映画おしりたんてい」製作委員会

配給:東映 本編:71分 ©トロル・ポプラ社/2024「映画おしりたんてい」製作委員会

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