INTERVIEW

江口のりこ×橋口亮輔監督

「学校に通っているみたいな感覚だった」、ドラマ『お母さんが一緒』


記者:村上順一

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掲載:24年03月03日

読了時間:約7分

 江口のりこが、ドラマ『お母さんが一緒』(毎週日曜よる10時)に出演。スカパー!のドラマチャンネル「ホームドラマチャンネル」開局25周年記念した作品。ペヤンヌマキの同名舞台を原作に、母親の誕生日に温泉旅行をプレゼントした三姉妹の悲喜こもごもを描く。監督・脚本を「ぐるりのこと。」「恋人たち」などで知られる橋口亮輔氏が担当。妹たちにコンプレックスを抱く長女・弥生を江口のりこ、仕事も男性関係もルーズな次女・愛美を内田慈、姉たちを冷ややかな目で見ている三女・清美を古川琴音が演じる。本作への思いを江口、そして橋口監督に聞いた。【取材=村上順一】

『ぐるりのこと。』以来

――本作ではどのようなことを考えながら、脚本書かれて演出されたのでしょうか。

橋口亮輔 松竹ブロードキャスティングの方からホームドラマチャンネルでオリジナルドラマのお話がありました。そこで、ペヤンヌさんの舞台をドラマにするのはどうですか?となりまして、それで見たら面白くて。僕がドラマにするならどう撮ればいいかと距離感などを考えていました。深夜枠のテレビドラマはだいたいがリハーサルせずに2日間ほどで撮ります。時間も限られていますから、やれることも限られる。それでも皆さんプロですからセリフをちゃんと覚えてきて喜怒哀楽をしっかり出してくれる。でも今回の作品はそうはいかないんじゃないかと。そういうことを考えているうちに俳優さんを決めないといけないとなって。江口さんに初めてお会いしたのは2008年の映画『ぐるりのこと。』でした。それ以来になりますし、内田慈さんもお忙しい。古川琴音さんも活躍されているので、ダメもとで皆さんにオファーしましたら奇跡的にタイミングあって。皆さんも2つ返事で「やります」と言ってくれて。そこから改めてどういう作品にするのかということも含めて考え直しました。

――お互いの第一印象は覚えていますか?

橋口亮輔 『ぐるりのこと。』は、リリー・フランキーさんと木村多江さんが感情をぶつけ合う15分ぐらいのシーンのところに「うるさいよ」って怒鳴り込んでくる隣人の役で出演していただきました。台本には<静かにしてもらえません?>という一言でした。今回久しぶりに再会して「よくあれで引き受けたね」と(笑)。撮影当時、現場で僕が言ったと思いますが「風邪を引いている役だからマスクして」とか、その場で3人の瞬発力でつくっていったと思います。江口さんがキレる、一瞬弾けるような芝居がなかったらシーンが成立しなかったと思います。それもあってすごく激しい人というイメージが僕の中にはありました。「わかりました」とパッとやってくれるっていう。その後の活躍も見てましたけど、久しぶりにリハーサルでお会いしてあらためて真摯に演技に向き合われる方だなと感じました。

江口のりこ 今よく引き受けたなーって仰ってましたけど、映画『ぐるりのこと。』はオーディションでした。どこかのアパートの一室で5人ぐらい並んでたのかな?「最近自分の周りに起きたイラだったことをちょっとやってください」って言われて。私は掃除機の音がうるさいっていうのを上の階の人か下の階の人に言いに行く芝居をやってみたら監督がすごく笑ってて。私、橋口さんのイメージはとても怖い人っていうのがありまして、橋口さんの映画はずっと見ていましたし、トークショーとかも見たことがあるんです。たしか10代のときかな?こういう映画を撮る人は絶対怖い人だと思って。オーディションでちょっと笑って楽しそうにされていたので「ああ出れたらいいな」と思って台本を見たら「うるさい」って入ってるから、あれをもう一回やればいいんだと思って。いざ現場に行くと雰囲気はすごいですね。大変なシーンの撮影っていう日でしたから。出演者の方もすごく集中されてますし、自分がここにいて邪魔にならないようにしようと。それで「風邪を引いたことにしてマスクをして」と言われて。言われたことを一生懸命やってるうちに1日が終わってホッとして。一緒にお芝居を作ったという感覚はなくて、無事に終わってホッとしただけだったので、今回また改めて長い時間一緒に作れたことはめちゃくちゃ嬉しかったです。

江口のりこ

江口のりこ

絶対にやりたい

――それで今回オファーを頂いてどういうお気持ちでしたか?

江口のりこ 嬉しいと思いました。橋口さんがドラマを撮ることにまずびっくりしましたし、絶対にやりたいって思いました。

――今回撮影で大変だったことは?

江口のりこ リハーサル期間があったんです。それがあったおかげで撮影を乗り切れました。そのリハーサルがすごく楽しくて。そこでいろいろ考えたり見つけたりすることができました。私だけじゃなく、他の共演者のみんなも撮影に入ったらもう後はやるしかないっていう感じでできたので本当にリハーサルがあってよかったです。

――演じる弥生はどういうキャラクター像をイメージされましたか。

江口のりこ 脚本を読むと大体こういう人かなっていうのは想像できると思いますが、リハーサルで監督が役をちょっとやって見せてくれるんです。それがめちゃくちゃ面白いんですよ。その姿を見て「あ、そうか、この役はこういう人か」と膨らますことができたり。監督は私の役だけじゃなく、内田慈さんや古川琴音ちゃんの役も「こんな感じでね」とやって見せてくれるんですけど、もうそれでいいじゃないかっていうくらい。でも、結局演じるのは私ですから、どの役をやってもどこかで私なんですよね。

――3姉妹の内田さん、古川さんの印象は?

江口のりこ 3人とも監督を信頼して「頑張ろうね」とやっていましたから絆みたいのもありますし、琴音ちゃんも慈ちゃんも芝居がすごく好きな方達だから、一緒に芝居をしていてもすごく楽しかったですし、芝居以外の時間もくだらない話をして楽しかったです。お2人が共演者でよかったなってすごく思っています。

江口のりこ

江口のりこ

全部しんどかった

――撮影していて一番しんどかったシーンは?

江口のりこ 基本的に全部しんどかったですね。全部しんどかったし、なぜか青山さんがいらっしゃる日は監督ちょっとご機嫌なんですね。だからその時は楽しかったですね。

橋口亮輔 そんなにいつも不機嫌でした?

江口のりこ 基本、怖いです。不機嫌ってこともないんですけど、全然怒鳴ったりもないのですが、ただなんか怖いです。

――リハーサルをやられたことで、やってよかったと思っていることを教えてください。

橋口亮輔 作品の中に「生」のところが少しでもないと、というお話はリハーサルの時にもさせてもらいました。滑らかに物語は進んでいるけど、今なんか変なものあったぞというものがないと作品にグッと引き込まれない。特に江口さんにやっていただいた弥生は振幅のある役なんです。周囲が振り回されて、それが笑いになっていくという役回り。作品のテーマそのものも含まれてるような役なので、それをどういう風にちゃんと生きてる女の人にするかなと。生っぽい女の人にするからということを江口さんといくつか例を挙げてお話させていただいた、それがリハーサルの時間です。

江口のりこ このリハーサル期間は毎日行くのが楽しくて。いつもこうやって監督がお話を聞かせてくれるんですね。少しでも役にアプローチしやすくなる。役者の仕事って役をやることですけど、一体何をすればいいのかわからないっていうのがよくあるんですね。台本をもらってセリフを覚えて、そのシーンを成立させるっていうことなのですが、それって誰でもできるし、別にそれが面白いかといったらそうでもない。じゃあどうすれば面白くなるのって、役作りって何だとか、役にアプローチするとかってどういうこと?どうしたら自分がやる役の人物ってどういう風にして見つけていくのかなって、それを見つけるやり方を今回改めて橋口さんに教えていただいたし、そこをどういう風に楽しんでやれるかという発見もありました。学校に通っているみたいな感覚があって、やっぱりこの仕事楽しいなって改めて思うことができましたし、この作業をやらないと現場でみんなで物を作っていくということはできないなと思いました。でもほとんどの作品がそういうことはせずに作っているから、それは寂しいことだなとすごく思いました。

――この作品を通してどのようなことを感じましたか。

江口のりこ 家族は面倒だなって思いましたね。うん、もう嫌って思ってもどうしたってやっぱ戻ってきて、やっぱり大丈夫ってなっちゃうし。ちょっと切り離せないところがあるので、本当に面倒だなって思ってます。

――この作品から学んだことは?

江口のりこ 妹にやいやい言うのは控えようかなと思いました。

(おわり)

ヘアメイク:鈴木彩
スタイリスト:清水奈緒美

「お母さんが一緒」(全5話+アナザーストーリー1話)
CSホームドラマチャンネルにて毎週(日)午後10:00~放送中!
3月31日(日)20:30~メイキング番組を放送するほか、同日21:00~全6話をアンコール一挙放送!
https://www.homedrama-ch.com/special/okasangaissho

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