INTERVIEW

柳美稀

「本格的な殺陣がついていてビックリ」舞台『西遊記』での挑戦


記者:村上順一

写真:村上順一

掲載:23年11月19日

読了時間:約6分

 女優、モデルの柳美稀が、舞台『西遊記』(上演中)に出演。高翠蘭を演じる。本作は1978年に「日本テレビ開局25年記念番組」として制作され、一世を風靡した人気ドラマを45年の時を経て、新たに令和版の「日本テレビ開局70年記念舞台」として企画し、大型アクションスペクタクルを創作。孫悟空は片岡愛之助、三蔵法師は小池徹平が演じる。脚本はマキノノゾミ、演出は堤幸彦が担当。LEDの映像技術、フライング、特殊効果をフル活用し、ライブエンタメの可能性を徹底的に追求した最先端、最新鋭の舞台となっている。『SHINE SHOW!』や『玉蜻 ~新説・八犬伝』など2023年は多くの舞台を経験した柳が、『西遊記』をどのような姿勢で臨もうとしているのか、話を聞いた。【取材・撮影=村上順一】

マネージャーの言葉を信じてやってみたら上手くいった

村上順一

柳美稀

――稽古も佳境に入られていると思いますが、手応えはいかがですか。(取材時)

 最初は役に対して考えすぎていました。私は考えれば考えるほどダメになっていくタイプということもあり、一旦考えるのをやめたんです。直感と言いますか、自分が感じたものをそのまま出せばいいやと思いやってみたら、堤さんも笑ってくださって。

――ありのまま演じてみたと。

 はい。肩の力が入りすぎてしまうことが悩みだったので、周りの視線や意見を気にしすぎて自分らしくなれていなかったんです。

――柳さんが演じられる高翠蘭はちょっと気が強い役だと聞いています。難しさをどこに感じていました?

 台本を読んだ瞬間に面白い役だというのはわかり、きっとお客さんに笑ってもらえる役だと感じました。ただそこに囚われてしまっていて、私は面白くなければいけない、面白くするにはどうしたらいいんだろう? とすごく考えてしまって。この言い回しを入れよう、セリフとセリフの間をちょっと空けてみようとか、いろいろ考えたのですがあまり上手く行かなくて。

 そういう悩みもあって、チーフマネージャーさんに相談をしました。普段はあまり助言みたいなことは言わない方なのですが、「普段の喋り方、間の取り方、ワードは面白いんだから、そのままやればいいんじゃないか」と言ってくださって。その言葉を聞いてそのままでいいのかなって。

――その助言によってありのままでやってみようと。

 そうなんです。チーフマネージャーが言うのであれば、きっとそうなんだと思いました。あまり褒めない方なので、その言葉を信じてやってみたら上手くいきました。

――高翠蘭と自分がリンクする部分はありますか。

 「喋らなければかわいいのに」と言われるところは一緒かなと(笑)。

――よく言われるんですか。

 ありがたいことに「この仕事をやっているから綺麗だよね」と言ってもらえることもあります。でも、「しゃべったらちょっと...」みたいな感じで言われることも多くて(笑)。

――柳さん表情のバリエーションも豊かですよね。

 昔から表情は豊かな方だと思います。ただちょっとやりすぎたなと思うこともあって(笑)。でもこれが高翠蘭を演じるのに役に立っていて、いろいろな感情を顔で表現しています。

――表情とセリフで強力な掛け算になっていると思いますし、いまお話ししていても快活で場が明るくなります。

 ありがとうございます。一時期変わろうと思ったことがありました。もうちょっと清楚な雰囲気になった方がいいのかなと思って。女優さんは気品があるイメージがあって、私もそういう方に憧れて頑張ってみたのですが無理でした。すぐにボロが出てしまったので、もうありのままでいいやって(笑)。

――あはは(笑)。さて、本作では女性のキャストが中山美穂さんと柳さんのお2人だけですが、中山さんとお話はされました?

 はい。稽古が始まる前にプレ稽古というのがありまして、若手の役者さんだったり、アンサンブルの皆さんで一度舞台を作り上げるんです。それに私も参加させていただきました。美穂さんはプレ稽古にはいらっしゃらないので、私は高翠蘭と美穂さん演じる鉄扇公主を演じさせてもらいました。そのタイミングで私が鉄扇公主を演じてみた感想として「セリフ、すごく難しくないですか?」みたいなことをお話しさせていただきました。

やっていることは間違っていなかったんだ

村上順一

柳美稀

――舞台「西遊記」ではフライングや特殊効果などいろいろ演出がありますが、柳さんも飛んだりされますか。

 私は飛ばないのですが殺陣があります。未経験なので必死に頑張っている最中です。(取材時)

――レッスンを受けたり?

 レッスンは受けていなくて、アクション監督が付けたものを真似しながら自分なりに稽古をしています。アンサンブルの皆さんのなかには、アクション俳優、スーツアクターをやられている方もいらっしゃるので、その方にコツなどを聞いたりしながら地道にやっています。それを通し稽古で皆さんに見ていただいて、「全然できてない」と言われてしょげて帰るみたいな毎日です。

――『動物戦隊ジュウオウジャー』(テレビ朝日)のときはアクションはなかった?

 アクションに近いものはちょっとあったのですが、映像なので編集で上手くやっているように見えていたんです。私は普段から運動をやっていないので、「本格的なアクションは初めてです」と素直に伝えたのですが、本格的な殺陣がついていてビックリしました(笑)。

――新しい自分を見せられそうですね。

 はい。舞台を観ていただいた方に、「こういう一面もあるんだ!」と思ってもらえるんじゃないかなと思います。アクション俳優の先輩が「筋はいい。センスもあるし、磨けば光る」と言ってくださったので、いつかアクションのお稽古に足を運んで、本格的にやってみたいと思っています。

――ちなみに共演者やスタッフさんからかけてもらった言葉で嬉しかったものはありますか。

 直接言っていただいたわけではないのですが、あるキャストさんのインタビューで、「キャストの中で、一人だけ選ぶとしたら登場人物の中では誰が好きですか?」といった質問があったみたいで、そこで私の名前を挙げてくださった方がいたとお聞きしました。その理由が、ピンポイントでしっかり笑いを取っているところがすごいと言ってくださっていたみたいなんです。自分が悩んでいたところを褒めていただけたことがすごく嬉しくて。やっていることは間違っていなかったんだなって。その言葉でまた一つ自信がつきました。

――それはどなたなんですか?

 三蔵法師役の小池徹平さんです。そのお話を聞いて本当に嬉しくて、より徹平さんのことが大好きになりました。

――着実にステップアップされている柳さんですが、役者としてどんな存在になっていきたいと思っていますか。

 ずっと掲げていることなのですが、唯一無二、私にしかできないものを作り上げられるような役者になりたいと思っています。

――名は体を表す、美稀の稀は珍しいという意味があるじゃないですか? お名前もそのマインドに関係していますか。

 名前の由来は母に聞いたことがあって、「稀に見る心が美しい人になれますように」という想いが込められているみたいなんです。私は名前に恥じないように心は美しくいられたらと思っています。気を遣えて周りをちゃんと見れる。人の悪口を言わない、嫌われないようにしたいです。でも、役を通して嫌われる、例えば「この役をやっていたから柳美稀は嫌い」と言われても大丈夫です。

――役を通して嫌われてもいい、それはなぜですか。

 それってその役になりきれていた、しっかり演じられていたことの証だと思います。そういったところも含めて唯一無二を極めていきたいです。

(おわり)

村上順一

柳美稀

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