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柳美稀が、28日に幕が上がる「ミュージカル『世界でいちばん美しい』〜鎌倉物語~」に出演する。藤谷治氏による小説が原作。鎌倉を舞台に登場人物それぞれの内面を描き出す。柳美稀は、永沢小海と沢口茉莉の二役を演じる。柳と言えば『賭ケグルイ』(生志摩妄役)での怪演。ピアスだらけのギャンブル狂といういわゆるぶっ飛んだキャラクターだが、本人は茶目っ気たっぷりの愛嬌のある人柄。そのギャップがファンの間では「面白い」と好評を集める。そんな彼女が今回挑むのが自身初のミュージカル。不安は「歌」というが、ボイストレーナーからはお墨付きを得ている。どのような思いで向き合っているのか。【取材・撮影=木村武雄】
ギャップが反響
――ギャップが面白いという声を多く聞きますが、ご自身はどういう性格なんですか?
過去に出演した『賭ケグルイ』と比べたら誰でもギャップはあると思うんですけど…(笑)。でも私自身、クールな性格ではないです。
――舞台挨拶でも盛り上げていて。
基本的にずっと笑ってます(笑)。あとは…気にしやすい性格ですかね…。
――結構、気にするタイプなんですか?勝手にポジティブな感じかなと。
気にするところは気にしちゃうタイプです。でもポジティブな部分はポジティブです。人前にいる方が明るくいられます。
――家に帰ると内に入っちゃうような?
もうオンラインの中に入ってしまうので…(笑)。
――あっ!ゲームが趣味なんですよね?
そうです。「モンハン」もやってますし、「APEX」もやっていました。「ヴァロラント」にも入っていた時期もあったり、「Ark」っていうサバイバルゲームをやったり、「スプラトゥーン」とかいろいろです。
――結構、声を出してやっているようですね。
結構声出します(笑)。一人でも負けた時とかはかなり叫んでますね。
――負けても平気ですか?
平気です!「そういう時もあるよね」って思います。ゲームに関してはすごいポジティブです。もちろん悔しいですけど、楽しいが勝ちますね。
作品を重ねて増す緊張感
――これまでの多くの作品に出られていますが、特に印象深い作品はありますか。
やっぱり『賭ケグルイ』です。すごく人気の漫画が原作だったので裏切らないようにしなきゃと色々考えて挑んだのを覚えています。キャラクターとしても、尋常じゃない狂い方をしている子でしたし、演じていても楽しかったです。
――やっぱり緊張はありましたか。
意外となかったですね。
――それまでの作品というのは、やっぱりクランクインの時は緊張したりとか。
10代とか20歳前後の時は何事も緊張は全くしなかったんです。今よりも楽観的な感じのはっちゃけタイプでした。
――そういう性格は羨ましいですね。
私も当時の私が羨ましいです(笑)。
――年齢を重ねるといろんな事を知ってきますからね。
そうなんです。だから今の方が緊張しやすいです。経験がゼロの時と比べたら、周りの期待度も上がって「どれぐらいできるんだろう」と思われるので、そこに応えなきゃという気持ちはあります。自分で「できなきゃおかしい」とハードルをガンガンあげていたので、そうしたところから緊張が来ているんだと思います。
――『賭ケグルイ』であれだけの怪演を見せたからよりそれが?
そうですね。「カレフォン」という舞台をやらせて頂いた時はもう緊張MAXでした!初舞台っていうのもあったんです。初めて生でお芝居をするっていうのもあったので、それを含めてだとは思うんですけど、緊張度合いが尋常じゃなかったです。
――やっぱり初日は相当?
初日は極度のからきたと思うんですけど、終わってから本当にお腹痛くなっちゃって、もう胃が痛くてご飯も食べられないぐらいでした。慣れてきたのは千秋楽あたりで「もうちょっとこうしたら」というアドバイスをやってみようかなと思えるほど少しゆとりができました。でも千秋楽も緊張はしていましたね。
――今振り返ると、その舞台が自分を大きくさせたなと。
自信はつきました。生ものだから取り返しがつかないじゃないですか。やり直しが利かないので、そういう面に対してはすごく強くなったと思います。
「高音」を発掘
――そして今回ミュージカルですけど、舞台としては3年ぶり。どうですか?
いや~リセットされています(笑)かなり緊張しています(笑)プラス初ミュージカルっていうのも相まってもうほんとガチガチです。稽古もガチガチしてます(笑)
――最初にこのお話がきた時はどういう心境だったんですか?
「え!ミュージカルですか?歌ですか!?」っていう感じでした。歌を人前で歌うというか、そういうお仕事させていただいたことがないので、大丈夫かなって。ありがたいけど不安が圧倒的でした。
――何か取り組んだことは?
ボイストレーニングに行かせて頂いて、苦手意識がある部分や基礎を教えて頂きました。その時はまだミュージカルで歌う歌が出来ていなかったので、自分の好きな歌で練習していました。
――その苦手な部分は?
高音です。喋る声もそうですが私声が低いんです。でも高音が出るらしいんですよ(笑)。「ソプラノ全然いけるよ」って言ってくださってるんですけど、正直苦手意識があるせいで出る気がしなかったです。それを克服するためのボイストレーニングです。
――ボイトレをやっている間に出るようになった?
最初の頃よりかは出るようになったと思います。
――今は楽曲はできている?
全て出来上がってもうガッツリ練習してます!
――自分のパートはやっぱりソプラノ?
高いですね、高いです…!(笑)。本当に高くて頭抱えてます。「私の高音、耳障りじゃないですか?」って皆に聞いてます(笑)。
――ボイトレの先生から、高音が出る以外に言われたことは?
最初にどこまで音域が出るのかを調べて「プロの歌手とほぼ同じ音域が出るよ」と言って下さって。
――すごいじゃないですか!
そうなんですよ。「うそだ~」って思いながら(笑)でもそう言って下さって。好きな歌を歌う時は基本、音域が低めな人の歌を歌う傾向がありますね。中島みゆきさんとか、真っ直ぐな低めな曲をのものとか。でも「全然高音も出るから自信持った方がいい」って言って下さってボイトレを重ねるごとに少し苦手意識がなくなりました。
――高音だと声量というか音圧が薄れると思うんですけど、それも「そんなことはないよ」って言われたんですか?
そうですね。「全然、地声でも高くできる。裏声に行かなくてもここまで出てるから、それを強みに生かした方がいいよ」って言って下さいました。
――では、このミュージカルで開花しますね!
開花できるようにもっと頑張ります!
喉が強い
――でも難しいですよね。ミュージカルなので。
難しいです。しかも元々ある歌を歌うのではなくオリジナルなので、見本がないじゃないですか。私が作っていくというか。そこが本当に難しいですね。全てちゃんと発音しなきゃっていう思考になっちゃって気持ちまで乗せられていなくて。それが初日までの課題です。
――でも練習し過ぎちゃうと喉壊しちゃうし。
でも意外と頑丈みたいで、もちろん多く歌うと喉がカサカサになるんですけど、少し休むと数時間後には元に戻っているんです。最後のシーンとかも結構叫ぶシーンが多いんですけど、今のところ潰れないですね。
――それは恵まれてますね!
本当にありがたいです!
――今後、舞台でも可能性は広がりますね。
なったらいいなと思います。今回の作品を通して、もし関係者の方が見て下さって「いいな」って思ってもらえたら嬉しいですね(笑)。頑張ります!
今泉力哉作品に出たい
――今、何か目指しているものはありますか?女優像というか。
マルチに活動できるように目指しています。もちろんミュージカルや舞台も出演しながら、映像の作品とか。今泉力哉監督の作品が好きなんです。日常を切り取ったみたいな派手な感じではなく、緩やかに何か毎日が流れていく作品で演じてみたいです。なので映画出演もやっていけたらいいなってすごく思っています。
――日常を演じるのは逆に難しいですよね?
難しいと思います。やっぱり普通を演じなきゃいけないですから。「普通が一番難しい」というのは他の方からも聞くので、あのテンション感が一番力量を試されると思います。
「ふたりモノローグ」撮影秘話
――「ふたりモノローグ」はどうでしたか?
あの撮影は楽しかったです! 『モノローグ』で頭の中で考えていることを後で声を足しているので、撮影中はほとんど喋らないんです。だから現場はシーンとしていて(笑)。お互いにセリフを言うんですけど、実際には言わないので、だいたいこのタイミングで言い終わっただろうと思って行動するっていう。結構大変でした。
――福原遥さんともそういう意思の疎通のようなやりとりはして?
一緒に本読みしたり、このタイミングはちょっと分かりづらいから、言い終わったらちょっと身体を前に出して合図を作ったりしましたね。
――相当、息が合っていないと難しいですね。
そうなんです。監督でさえも、今どこやってるか分かんない時もあったみたいです。ちょっとズレが…みたいな(笑)だから大変なのは監督ですよね。カットかけどころが分からないという。
――確かに!監督には合図を作ってない?
作ってないです(笑)なので、終わったらたまに「終わったよ」っていう目線を送ってました(笑)
――それにしても、あのキャラクターかっこよかったですね。あの作品の経験ってご自身にとってどんなものになりましたか?
クールな女の子を演じてる女の子という役なので、表情だけでお芝居をするっていうことに関しては…、あれはちょっと激しい目ですけど。感情をちゃんと顔や動きで表現するというのは、その後のお芝居に響いているのかなと思います。
――それで今回はミュージカルということで表情を大きく見せないといけないという。
確かにそうですね。でも今は表情よりも歌に全てとらわれていますね(笑)。歌で感情を表現するというのは難しいです。
――頭のてっぺんから声を出すイメージで歌うといいとは聞きますね。
すごく言われています。響かせるためにもてっぺんから出すイメージって。私、力が入って眉間にシワが寄って歌う癖があるんですけど「ここでギュってやると止まっちゃって声が出ないから、基本的には目開いて眉毛を上げ前に出すように」って言われていて。
――縮こまらないでということですね。
そうです。姿勢もちょっと後ろに体重をかけてみたり、本当に細かい技術がいっぱいありますね。
芸能界に入って気づいたこと
――柳さんって不器用な方なんですか。それとも器用?
どっちなんですかね。学生の頃は、基本的に何でも人よりもちょっと出来るぐらいの感じで、多分、器用な方だったと思うんです。勉強も頑張ればいい点数が取れて、運動に関しても人よりはちょっと運動神経がいい。でも頑張ってる人よりかはちょっと下みたいな。器用ライン。少し努力すればできるようになっちゃうみたいな感じのタイプだったんですけど、今は不器用になりつつありますね。
――周りがすごすぎて?
それもあるんですけど、どんどん考えすぎちゃって。感覚で動いた方が私はいいと思うんです。「感覚派だよね」って言われることも多くて。今回の舞台でも「感覚派だと思うけど」って言われて。でもミュージカルは技術が求められるので、若かりし頃のちょっとの努力では到底追いつかない場所で、結構大変です。
――逆にそのベースさえできてしまえば、自由に自分の感覚というか本能で動けますね。
そうですね。基礎のところだけ身につければ、ちょっとは自分の感性で動けるようになるのかなって思います。
――それってすごく強みですよね。本能で動けるようになったら、まさに舞台の醍醐味でもありますし。
確かにそうですね。その人の言葉の感情でパッと動けたりとか。何かしようという段取りを考えると何も動けなくなるタイプなので、それよりもその場で聞いて受け答えする方が私的にはやりやすいです。
――これまでの映像作品もそんな感じ。
そうです。まさに「動物戦隊ジュウオウジャー」の時はそうでした。もうお芝居の経験がないので、どういう風にしようっていうプランすらも浮かびにくかったので、そのままの感覚でした。こう言われたからこう頷くよなとか。こう言われたら目を背けたくなるよなとか。
――作品によってキャラクターをがっちり作り込むものもあれば、演者さんに任せることもあって。柳さんの場合は任される方が多かったですか?
もちろん原作があるものはある程度決められていますが、そうしたものがないものだと監督と少し擦り合わせをして演じるという感じです。1から10まで決めてっていうのはあまりなかったかもしれないです。
愛情を相手に注ぐ役柄
――改めて今回のミュージカルは2役ですが、どんなキャラクターですか。
沢口茉莉は小学5年生でちょっとませた女の子っていう感じです。永沢小海ちゃんは結構可愛いんです。ピュアでまっすぐに人を好きになる人です。
――歌は小海の方ですか?
どっちもあります!
――茉莉は島崎哲(椿泰我)の初恋相手というところで椿さんとのデュエットは?
2人で歌うところはないですけど、私が歌う内容は、2人は両想いだけど思いを伝えられないまま沢口が引っ越して、お手紙の内容を歌う。遠くに離れて気持ちを伝えるという感じなんです。子供の恋愛だけどウルっときます。
――ということはバラードなんですね。
そうです。子供だからこそピュアで不器用ですごくまっすぐな歌になっています。
――小海は?
好きになったらずっとこの人のことを見続けて、この人のために生きるっていうタイプの子です。歌も、あなたのここが好きなの、あなたは本当に美しいんだからっていう内容で。自分の愛情を全部相手に注ぐというか。本当に100%、120%の愛情を相手にあげるような。すごく可愛いくて、こんなにも人を好きになれるなんてすごいなって思いました。
――それを柳さんがどう演じるが楽しみですね。
思いが強すぎてネチネチしたような、自分の愛だけを押し付けてるっていう感じには絶対にしたくなくて、純粋にピュアな綺麗な愛情っていう風に見せられたらいいなと思ってます。
――柳さんの普段の快活なイメージとは違う?
違うかもしれないです。小海は最初、引っ込み思案なところもあるんです。でもせったクン(雪踏文彦=演・横原悠毅)を好きになって自分らしく明るくなっていって。
――最後の方になると柳さん自身に近くなるというか?
そうですね。演じやすいかもしれないです。もっとこう言いたいのに言えないというのがある、皆の輪に入って行けないのが小海ちゃん。でも最終的には輪のなかにちゃんと入って、自分の意見を言えるようになっていくという。
――では、その過程をどう演じていくのかも注目ですね。感情を閉じ込めている場面も楽しみですね。今の話を聞いているだけで今回のミュージカルが柳さんにとっての何か転機になるような気がしますね。
確かにそうなるかもしれないですね!私も楽しみです!頑張ります!
(おわり)
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