INTERVIEW

向井理×上白石萌歌

「人間は音を奏でる生き物」ドラマ『パリピ孔明』で気づいたこと


記者:村上順一

写真:山田健史

掲載:23年09月27日

読了時間:約10分

 向井理と上白石萌歌が、フジテレビ系水10ドラマ『パリピ孔明』(9月27日午後10時〜)に出演。向井は中国三国時代から現代へ転生してきた諸葛孔明、上白石はプロの歌手を目指し、活動を行うアマチュアシンガー・月見英子を演じる。原作は、累計発行部数160万部突破の『ヤングマガジン』(講談社)で現在も連載中の人気コミック『パリピ孔明』。昨年アニメ化され話題を集めた。同作は中国三国時代の名軍師・諸葛孔明が現代の渋谷に若かりし姿で転生し、歌手を目指す英子を軍師のごとく成功に導いていくサクセスストーリー。インタビューでは、これまで経験してきた作品とは一味違うという同作に臨む姿勢から、2人にとって音楽とはどのような存在なのか、話を聞いた。【取材=村上順一/撮影=山田健史】

既存のドラマとは違うことをやってやろう

山田健史

向井理

――『パリピ孔明』に出演が決まった時の心境はいかがでした?

向井理 『パリピ孔明』というタイトルがキャッチーな感じではあるので、どんな内容なのかなと思っていました。出演のお話しをいただいてから原作を読んだのですが、すごく骨太な内容で1人の女性がシンガーとして成長していく様を描く作品だったので、あんまりふざけた感じにはしたくないと思いました。それは制作サイドもそう思っていたと思います。

上白石萌歌 私は『パリピ孔明』という作品が持つ影響力はお話をいただく前から知っていました。私もお話をいただいてから原作を読ませていただいて、向井さんがおっしゃる通り、タイトルからは想像もつかないくらい人が夢を追う美しさや一人ひとりの信念がぶつかり合う、とても素敵な人間ドラマだと感じました。現場でも真面目にふざけているのですが、それがすごく楽しいです。

――今回、共演されてみていかがでしたか。

向井理 一つの作品に向き合う戦友といいますか、毎回真摯に言い合える関係だなと思っています。今までテレビで拝見してきた部分はお芝居をしている姿なので、本当の部分は実際にお会いしてみないとわからないから、先入観というのは持たないようにしています。しっかりとこの作品に向き合う姿勢、良くしていこうという意識がお芝居をしていく中で感じられましたし、頼もしさもあり一緒にやっていて楽しいです。

上白石萌歌 向井さんとは初めてご一緒したのですが、どんどん英子と孔明のような関係性になれていると思います。この作品をよくしたいという同じ思いで作品を見つめていける、とても心強い大先輩です。今回順撮り(シナリオの冒頭から順を追って撮影を進める方法)ではなく、急にクライマックスを撮ることになったり、その場その場で対応していかなければいけないところもあるのですが、向井さんは私が迷った時に手を差し伸べてくださいます。向井さんのお人柄が今回の作品を自然といい方向に導いてくれています。冷静に作品全体のことを考えていらっしゃって、英子の立場になって考えてくださるときもあり本当に心強い存在です。一緒にお芝居ができてとても幸せだなと感じています。

――本作を連続ドラマでやる魅力は、どのようなところに感じていますか?

向井理 原作通りそっくりそのままやるのだったらアニメでいいと思います。実写でやる意味というのは実際に人がやっている生々しさみたいなものが、実写化する上では大事だと思っています。監督をはじめ、プロデューサーさんなど周りの方の発想がかなり面白くて、ただの1シーンに終わらせないんです。「もうちょっとこうしてほしい」とか急に変わることもあるのですが、面白いので僕らもそれに応えようと思いますし、粛々とやっていくというよりは既存のドラマとは違うことをやってやろうという意思が伝わってきます。それはある種、奇をてらうところもあるかもしれないのですが、普通じゃないドラマを撮っている、見たことがないものをやっているんだという自負があります。

上白石萌歌 こんなことをやらせてもらっていいんだろうか、というぐらい毎日贅沢な画角の中に身を置かせてもらっています。各部署が本気で自分はこれがいいんじゃないかというものを全力でぶつけ合っているような現場で、ものすごく見応えがあるものになっています。実写化するということは原作をリスペクトしながらやっていくことになりますが、その人なりの感性で、その役に自分をはめていく。それぞれのキャラクターの個性がより際立ったり、登場する全員が違う光を放っているというのは実写化のいいところなのかなと思います。

「他に負けてはいけない」ビジュアルへのこだわり

山田健史

上白石萌歌

――向井さんは衣装も大変なんじゃないかと思いました。

向井理 衣装は軽量化したり、夏のロケに向けて熱が逃げる工夫をしていただいています。ビジュアル面もすごく大事な作品で、他に負けてはいけないという気持ちが出ている作品になっていると思います。「もうちょっと青色を強くして」など、すごく細かい指示が日々現場で飛び交っている環境なんです。

――今から完成した映像を見るのがすごく楽しみです。

向井理 すごいですよ。もう映画というかPVを見ているみたいな。僕は音楽ものの作品はいくつかやってきましたけど、 大体1つのジャンルになるのですが、『パリピ孔明』はラップやバラード、ロックやダンスもあります。僕はこんなにもクラブに行ったドラマは初めてで、撮影は大変ですが毎日お祭りしているみたいな感じで飽きないし楽しいです。

――向井さんはラップをやられるシーンもあったり、上白石さんも歌うシーンなどお芝居以外の部分ではどのような難しさを感じていますか。

上白石萌歌 今回は今まで自分が挑戦してこなかったジャンルの歌に挑戦しています。私は役としての宿題といいますか、やるべきことがあることがすごくありがたくて。歌の理解を深めていく中で、自分のキャラクターの輪郭がはっきりしてきたり、何かを課せられている状況というのはすごく贅沢だなと思っています。音楽もすごくこだわって作っているので、その分大変なこともたくさんあって、この壁は越えられないんじゃないかと何度も思いました。でも、音楽チームの皆さんはすごく真摯に向き合ってくださいますし、これまで自分では開けてこなかった扉を開けてもらっているような感覚があります。

――今まで歌ってこなかったようなジャンルの曲というのは?

上白石萌歌 ラップ調の曲や声を張るような曲です。今回オリジナルの曲も何曲かあって、ドラマ『パリピ孔明』から生まれた曲もたくさんあるので、楽曲をぜひ楽しみにしていてほしいです。

向井理 僕が演じる孔明は支える側の人間なので、あまり表に出るタイプのキャラじゃないんです。唯一あるとすればラップですが、僕はラップをやったことはないですし、そもそもやり方すらわからない状態です。一応レコーディングはしたのですが、結局レコーディングした音は本番では使わず、生で録るというのはひとつの挑戦でした。僕はお芝居をしている時に他の人のセリフを聞いて役作りをするのですが、今回「それラップじゃなくてお経だね」みたいなことを言われて。ラップですらよくわからないのに、ラップを目指した結果お経になっているというのは、もっとわけがわからない(笑)。ですので、自分なりのラップを披露して監督に演出してもらおうと思いました。レコーディングの段階でいろいろなアイデアを出した結果、ちょっと漢詩や詩吟みたいな感じもあったり、オリジナリティのあるラップになったんじゃないかなと思います。

――向井さんは孔明の印象はどのように感じていますか。

向井理 僕は三国志の漫画を子どもの頃に読んでましたし、ゲームをやったこともあったので、登場人物に関しては名前と顔はおぼろげながらわかる感じでした。孔明は天才軍師と呼ばれていた人で、人間離れした姿勢といいますか、浮世離れしたというイメージはすごく強いです。ですので、普通の人と違う感じのお芝居を心がけています。

――上白石さんはどのような姿勢で役にアプローチしましたか。

上白石萌歌 私は英子に忠実に、自分から三国志の情報は取り入れないようにしました。現場には偶然にも三国志ファンの方がとても多くて。とくに英子が働くライブハウス・BBラウンジのオーナー小林役の森山未来さんは、原作の小林を超えていました(笑)。小林の三国志に関するセリフはとても長いのですが、その3倍ぐらいになっている時があって、もう私はリアルに置いていかれてました。でも向井さんはそれにも応えていらっしゃってすごいなと。三国志マニアがこんなにたくさんいる現場で、皆さんがその役をやるのは必然だったといいますか、宿命だったように感じています。

2人のモチベーションが上がる音楽とは?

山田健史

向井理×上白石萌歌

――今回音楽がメインにある作品ですが、お2人がテンション、モチベーションが高まる音楽はありますか。

向井理 高校生の時、僕はサッカー部だったんですけど、試合やる前に絶対聴いていたのはレッド・ホット・チリ・ペッパーズの「Around the World」でした。学校に向かうときにガンガン聴きながら闘争心を高めて試合に臨んでました。

――向井さんはハウスがお好きだとお聞きしているのですが、最近はそういったジャンルの音楽を?

向井理 そうですね。移動中の車内は常にハウスを聴いています。あれ? この感じだと僕パリピみたいだよね?

上白石萌歌 あはは(笑)。

――上白石さんはどんな音楽でモチベーションを高めていますか。

上白石萌歌 私は18歳頃に恋をするかのようにandymoriを好きになりました。解散してしまいましたが、今でも心の底から大好きなバンドです。18歳、19歳の頃によく聴いていた曲は一生好きなんじゃないかなと思います。20代以降は広く音楽に触れる機会もあると思うのですが、10代の頃に聴いていた音楽の大きな軸みたいなものは年齢を重ねてもぶれない気がして。私にとっていつ聴いても、どれだけ大人になっても青春時代に戻れるようなサウンドがandymoriにはあるので、いくつになっても青春を感じられます。

――今も聴かれているわけですね。

上白石萌歌 はい。好きな気持ちは変わらず、解散して新しい曲は聴けないというところも含めてすごく好きなんです。

――ライブのシーンもすごく楽しみなのですが、客観的に見てどんなことを感じました?

向井理 撮影のタイミングで視聴者の人より、ライブシーンを先に見れるというのがすごく嬉しいです。カットされずにフル尺で観れているので、歌唱シーンは毎回鳥肌が立ちます。

――これは“パリピ孔明フェス”を開いてもらいたいですね。

向井理 やりたいねという話はしてますね…。

――最後にちょっと大きな質問になってしまうのですが、お2人とって音楽とはどのような存在ですか。

上白石萌歌 私は三度のご飯より大事なもので、心の栄養です。

向井理 僕らの仕事もそうなのですが、なくても生きていけるものかもしれません。とはいえ、日常で当たり前のように音楽は流れている。そうなると僕らにとってなくてはならないもので、どこか本能的なものがあるんじゃないかと思います。改めて人間は音を奏でる生き物なんだなと思いますし、それをドラマの中でどこまで訴求していけるかというのも楽しみです。

(おわり)

▼向井理

スタイリスト:外山由香里
ヘアメイク:晋一朗(IKEDAYA TOKYO)

▼上白石萌歌

スタイリスト:道端亜未
ヘアメイク:冨永朋子

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山田健史
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