INTERVIEW

栁俊太郎

『今際の国のアリス』に続く麻生羽呂作品 『ゾン100』Pから言われた意外な一言


記者:木村武雄

写真:木村武雄

掲載:23年08月11日

読了時間:約6分

 栁俊太郎が、Netflix映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』(石田雄介監督)で赤楚衛二演じる主人公アキラの親友ケンチョこと竜崎憲一朗役を演じている。街中にゾンビが溢れるという絶望的な状況を逆転の発想でポジティブに生き生きとサバイブするアキラたちの姿を描く。麻生羽呂原作作品への出演は『今際の国のアリス』以来となる栁は本作ではトラウマを抱える怖がりな役どころに挑む。TBS日曜劇場『アトムの童』では主人公・那由他に大きな影響を与える人物を好演。以降も話題作への出演が続き、彼へのオファーは急増している。そんな栁が本作のケンチョという人物はどう捉えて演じたのか。【取材・撮影=木村武雄】

栁俊太郎

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ケンチョは人間味のあるキャラクター

――今回の役は、どう受け止めてアプローチされたんですか?

 今回も新しい形の役でした。ああいう三枚目のキャラクターはあまり演じてこなかったので新鮮な気持ちでした。実は設定がすごくリアルなんです。ゾンビの世界でこういうキャラクターがいるから、新しい世界観で面白いと感じるんですけど、人間の設定的にはすごく純粋でリアル。マンガで描くからマンガのキャラクターになってしまうんですけど、ケンチョを実写にしたら割と人間味が出るんじゃないかって思っていて、見た目からも自分でマンガに寄せすぎない実写版のケンチョを作りたいと思っていました。なので、そこにアプローチしたというか、自分にケンチョの感情などを落とし込んで、自由にやらせて頂きました。

――赤楚さん演じるアキラに対して、ケンチョの立場的にはどういう役回りだと捉えていたんですか。

 彼がどんどんヒーローになっていくので、自分が助けられた分、何があっても隣で支える、本当にシンプルな話です。常に100%なんですよね。まっすぐな感情が常にぶつかり合っている映画なので、ケンチョ的にはアキラがこう思ったら「俺はお前についていくぞ」って。仲直りした後は割とついていくだけでしたね。

――前に、どんなクズな男でも栁さんが演じると愛嬌が出てくるという話をさせて頂いたんですけど、今回も最初の方はクズでビビりで。でも愛嬌があるっていうのはやっぱり栁さんだからと思いました。

 原作もそうですけど、根本的にはいいヤツなんです。それが終盤に向かうにつれて全面に出てくる。それが分かりやすく描かれていたので、そういう意味では最後はいいヤツでかっこよく終えるというゴールがはっきり見えていました。そこに繋げるための「ここではこのぐらいで見せておいて最後はこう見せれたらいいな」っていう演じ方のビジョンもはっきりしていました。

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――それは一つの作品に長く出続けられることのやりやすさもあって?

 ありました。でもだからこその難しさもありました。見せ方を調整しないといけませんので。常に出ているとインパクトだけではやっていけないんです。いちいちインパクトをつけるとちょっと飽きるというか、胃もたれするなみたいな。そのバランスを考えないといけないんです。

――完成したものを観た時にどう感じましたか?

 反省の方が多かったです。現場で「こうだからここは抑えておこう」と思っていたんですけど、編集して出来上がるまでのその画は監督の頭の中にしかないので。だからこそ石田監督とはコミュニケーションをとって「こうしてほしい」というのも頂いたので、あとは監督を信じてやるだけでした。

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プロデューサーから言われたこと

――石田監督からはこういうふうにやってほしいという要望はあったんですか。

 (Netflix『今際の国のアリス』の)森井プロデユーサーから「栁君はそのままでいいよ」って。「でも、原作のケンチョと全然違うと思うんですけど」って話したら、「いや、栁君は自分で気付いていないけど、意外とケンチョの部分も持っているよ」って。「普段のオフの栁君を見ると、割とそういうところが見えたから」って言われて。「原作のケンチョはいるんだけど、栁君なりのケンチョを持っているはずだからそれを出してくれればいい」と。だからさっき「原作に寄せすぎず」って言ったのはそういったところもあるんです。せっかくやるなら自分にしか出来ない自分なりのケンチョを出せればなと思って。石田監督と話したこともそれと近いことではありますけど、石田監督もまっすぐな熱い方で「感情を大切にしてほしい」と。「コメディーに見える部分は台本を読んでも感じられたんですけど、笑わせにいこうは考えずに、こういう状況でこういう事を言うからたまたま笑いが起こっている。だけど本人はいたって真剣だからそれを100%感情に従って動いてくれればいいから」って。「三枚目だからとかそんなに気にしないでやっていいよ」って言ってくれました。

――コメディーは、本人は真面目だけど、第三者から見てそれが滑稽に映るからって言いますよね。

 ゾンビがいる中で「会社行かなくてやった!」なんてその状況だからこそ笑えるけど、3、4年前の事を考えてください。「コロナで会社行けなくなってやった!」って言ってる人たくさんいたと思うんです。それと一緒です。アキラはゾンビの中でそれをやっているから不思議で面白い世界に映って笑えますが、みんなそうでしたよって。そこはアキラもケンチョも100%感情に従って動いているだけなんです。

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――今回の作品は固定概念をなくそう、というところも描かれていると思いますが、役者やっていると、そういう経験則からの固定概念が積まれていくような気もいます。この前こうだったからこうやろうとか、それは役者にとってはいい時もあれば悪い時もあって、打破したくなるときもあるじゃないですか。そういう時はどうされているんですか。

 固定概念を作らないように生きているというか、キャパシティを広くしたいんです。なので否定しないことですかね。否定するとある種、固定概念になる。固定概念を持たないためにはキャパシティは広げて許す。

――過去の作品のキャラクターもそういう形で取り組まれていましたね。

 人を殺める役もどこかには優しいところがあると思うんです。なのでそこは少しでも人よりは多くを持っておきたいです。逆に許せない感情を持つことも大事なんですけどね。そのものを最初から否定してしまうとその時点で遮断されてしまう。なのでまずは許す気持ちを一回持ってみる。そこで許せなかったらそれでいいと思うんです。でもそれは難しいことで僕もたぶん全然できていないと思いますし。でもそういうのを持ち続けたいです。

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赤楚衛二とは「ヒル」で共演

――赤楚さんとは「ヒル」で共演されていますね。

 「ヒル」では、赤楚さんが演じた勇気をボコボコにしていました(笑)。こういう関係性はなかったので、やっと仲良いキャラが出来たねって。

――敵対するところから、今回の仲良い関係だと、距離感を縮めるのに大変でしたか。

 逆にもっと話したいのに、キャラクター的にあまり近くならないほうがいいから我慢していたところがあったので、やっと楽しい関係性だねって。

――いろんな方と共演されて、作品も重ねていて、注目されてきているけど、今後の目標とか夢は具体的になってきましたか。

 とりあえず目の前に控えている作品のことしか考えていないです。役者としては『ゾン100』のような素晴らしいクリエイターの方たちと作品を作りたいという思いです。のちのち自分が伝えたい事とかでてきたら行動に移すと思うんですけど、今はいろんな方たちと作品を作りたいですね。

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(おわり)

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